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おやすみ泣き声、さよなら歌姫

クリープハイプのおやすみ泣き声さよなら歌姫のMVも曲も好きで、その世界に定期的に触れたくなる。

「君はいつも勝手だ」という歌詞が2番で出てくる。ギターで君への想いを数年もの間引き摺る“彼”にとって、君が走り去る瞬間を目の当たりにしたからこそ。
結局、“彼”と君の関係はアイドルと一般人でしかなかったし、それを超えることはない。だからこそ、君は“彼”にはずっとステージで歌っていて欲しい、そんな割り切れない受けとめきれない想いをベースで弾けさせる。

でも、君は歳を重ねるに連れて徐々に自分の身体が思うように動かない事に気付いて、それを自分の限界だと捉えていた。
曲名にある「おやすみ泣き声」の苦しそうになっていく歌は、正に「歌声」から「泣き声」に変わっていく君の限界を表していて、日常を当然のように過ごしていく君の「泣き声」でしかなかった。それを彼は当時気付いてもどうすることもできなかった。
そんな君自身の変化もドラムと共にあった。
君は“彼”の存在に気づく。それは、“彼”が自分の知っている服を着ていたから。
だからこそ、君はそれが自分だったとは勘付かれたくなかった。当時よりも痩せっぽちな体型になって服も着こなせていない情けない格好だった。服の裾を雑に引っ張った指先が震える。声をかけたのも偶然のような必然だったし、目が合った瞬間に頭の中で「これ以上立ち入るな」という泣き声が上がった。

「君はいつも勝手だ」と口にする彼は正にその通りで。“君”は、彼の気持ち等お構いなしに進む。でも、「彼はいつも勝手だ」というのは君が口にしても的を得てる。ひょっとしたら、何方の境遇を考えても好きになってくれたかと思えば、勝手に飽きられたり勝手に失望されたり勝手にストーカーされたりと、お互いに割と勝手な人間と関わってきたことが多いのかもしれない。
「勝手なのはお互い様」と笑い飛ばして、彼の勝手も愛せるような君でありたい。様々なことが許せる度合かにもよるけど、そんなの些末なことであって全てを引っ括めて愛されるアイドルでもあって欲しいと想う。そう願うのは「私の勝手」でいい。

「歌姫」なんて、本人が名乗るわけでもなく勝手にレッテル貼りされるもの。それに擽ったくも振り回されている数多くの「歌姫」と呼ばれる人達がいる中で、“君”は薔薇の花束を手にした彼がいる同じ空間で感情を共有した。

そんな君に渡しきれなかった彼の用意した薔薇の花束は花びらとなって、漸く昇華した。
必死に逃げ回っていた君も薔薇の花びらが降り注ぐ光景を目の当たりにして、漸く足を止めた。
音楽が好きでステージや音楽に目を輝かせていた君は気づく。足元の薔薇は既に風に煽られてなくなっていた。そこには、最初から緑の「✗✗✗」の暗号と共に、彼に繋がるように出来ていた。

#ノンホールピアスと記憶探し

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