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あまりにも素敵な夜だから

[Alexandros]のあまりにも素敵な夜だからをよく車の中で聴いていた。

その時の環境から逃げ出したいと思いながらも必死に足掻いて傷だらけになっていた。そんな仕事終わりにこの曲を聴くことがルーティーンになっていた時があった。正直、仕事場でそんなに傷だらけになるはずがないと思っていた。
でも、この曲を聴きながら運転して帰る時に見上げた夜がとても眩しかったのを覚えている。

仕事から逃げ出したくて、車の鍵を握りしめて走り出した。
ただの逃避だった。今までで1番周りに迷惑をかけた我儘だった。彼や周りを守る云々ではなく、ただ私は自分が傷つくのが怖かっただけだった。なんだったら、私が全部背負ってもいいんだよな等と暢気に鼻歌を歌っていた数多くの曲の中で、一際心の中ですとんと不意に落ちた曲だった。

今まで彼と離れたことが辛くて自分の記憶を封印していたことをその時の私は、自分自身や周りにハッタリをかけまくって何が真実か分からなくて迷惑をかけまくっていた。悪戯に闇雲に踊っていた訳ではないつもりだった。

ただ、もう帰ろうと思ったのは、不動産の人と話をした時だった。呆れに心配を若干滲ませて「もう帰った方がいい」と端的に伝えられた。誰から見てもそうだろうなと思いつつも意固地になっていた。たぶん、彼はずっと困っているだろうと分かっていた。足掻いた末に帰ろうかなと思ったのは、車の窓から見上げた夜空があまりにも素敵だと思えたからだった。

家に帰ってから大変だったのは、両親と兄と周りで必死に支えようとしてくれていた人達だったのだと気付かされた。
自分のやらかしたことで、両親や兄夫婦にどんな迷惑をかけたのか知りたいと思った。兄夫婦のやりとりは穏やかで可愛くて羨ましいし、兄夫婦の厳しさのある優しさに触れて、2人で責任をとる大切さを教えてもらった。


ぬるま湯と称される優しさに少しの厳しさを交えると、相手のためになる優しさへと変えていける。
自分にハッタリをかけまくって怯えて踊っていた自分をどこにでもあるコンビニの駐車場に置いてきた。
私が置いてきたはずの自分も含めて月は見ていた。

#ノンホールピアスと記憶探し

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