無限団地

dodecagonさんとのブロック作品「megastructure」に、ちょっとしたフレーバーテキストを添えてみます。
ブロックで団地を作ってる方もいるので、これも団地の魔力なのかも。


「あら、こんにちは奥さん」

「まぁ、アイダさん。こんにちは」

 玄関を出たところで、買い物袋を両手に下げたお隣さんと出くわした。今日はそれほど暑くないはずだが、額に汗が浮かんでいる。

「また、エレベーターの故障ですか。困ってしまいますわね」

「そうなのよ、おかげで20分もよけいに歩いちゃったわ」

「最近は『管理室』にも電話がつながらないですし」

「本当に困ったわ。あなたも買いだめしておいた方がいいわよ」

 旧式のセキュリティを解除して、ため息をつきながらアイダさんは部屋に入って行った。これからの暮らしを考えると、不安になるのも仕方がない。管理室に見捨てられたこのエリアは、やがて生活もままならなくなり荒れるだろうと簡単に予想できる。

「そろそろ引越しかな」

 通路の窓の外いっぱいに広がる、天と地も覆い尽くした構造物。まだ生きている団地を探して、わたしは近いうちに移住しようと決意した。

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