オーケストラを観にいこう、について

この文章は感想文では無い。レポートでもない。誰かに読まれるためのものではない。1年半ぶりにnoteにログインした私がやりたいことはただの大きな独り言である。

3月、UNISON SQUARE GARDEN20周年を記念する武道館ライブ詳細が発表された。そこにあった公演名「オーケストラを観にいこう」の文字列を数分間画面のスクロールをせず眺め続けた。私にはこの公演に行く使命がある。そしてオーケストラを観にいこうの生演奏を聴かなければならないと強く思った事だけ覚えている。

当日、前日の結成日のライブの余韻が残る体で会場に入った。ステージの後方、昨日はただベーシストが動き回れるだけの空間だった広いスペースに譜面台と椅子がずらっと並べられていた。

私はこの日(前日もだが)注釈席で斜め後ろからステージを眺める形の席だった。ステージからの距離はかなり近く緊張感がビリビリ伝わってくるようだった。


私はオーケストラを観にいこうが1番好きな訳では無い。そもそも1番好きな曲を1曲に絞れという方が無理な話である。オーケストラを観にいこうが1番好きな日もあるし、そうじゃない日もある。1番好きだと私に言われがちな曲一覧の中には入っているものの、ライブだとあまり演奏されなかったり、オーケストラの同期音源が大きいためにロックバンドらしさが薄かったり、歌詞が自分があまり共感できるタイプのものでは無かったり、などの理由で1番になるタイミングは案外少ない。それでも私がこうしてこの曲と触れるタイミングにこうやって文章にしてしまうくらいには思い入れがある、というか他の曲ではこんな気持ちの悪いことはしないので私の中でかなり特殊な曲であることは確かである。オーケストラを観にいこうとの出会いは一番最初に書いた記事(今になって読み返すとガキが書いた寒くて拙い文章で恥ずかしい、おそらくこの記事も未来の自分にそう思われる)に書いたためここでは記さないが、出会いを今でも鮮明に覚えているという点でもかなり特殊である。ユニゾンの楽曲をすきになる時はかなり時間が経って急に好きになったり(今は流星のスコールに関してこのはまり方をしている)ライブで聴いて好きになったり(ライドオンタイムとDizzy Tricksterはこれ)みたいなことが多いのでかなり貴重である。出会いを覚えている楽曲はあれど、好きになった瞬間を覚えていることはなかなか無い。そしてPatrick Vegeeのツアーで、オーケストラを観にいこうと出会って面倒くさい文章を残してしまうくらいには心を動かされたことによってさらに思い入れが強くなっている。

バイトの休憩時間に身体も心もどうにもしんどくなってしまって休憩室の机に突っ伏しながらずっとループ再生してみたり、何にも聴きたい音楽が思いつかないけど何か聴きたいなと思う時に選んでみたり、そんなことをしているからなのかあまり意識してないのにAppleMusicのリプレイランキングに何故か毎年50位くらいでランクインしていたり、などこの曲を見かける機会は不思議とある。私を呼び寄せる力があるんじゃないかと思う。

そんなオーケストラを観にいこうの曲名が公演名にもなっている公演に私が行かない訳にはいかないのだ。

チケットが取れてからはずっと浮き足立った気分で、でも何があってもその日までは生きてやろうと固く決意したことを鮮明に思い出せる。


レポートでもないしライブ直後の自分の感想は自分で見返せる環境に残しておいているのであまり詳しくは書かないつもりだが、公演中のことを残してみる。

前日は普通の服を着ていたスタッフさんが昨日と同じ会社なのに皆さんスーツを着られていたり(暑そうだった)、開演前の曲がクラシックだったり、開演前にブザーがなったり、前後半の間に休憩があったりなどといつもとは違う雰囲気での進行はこの場が特別なものであることを裏付けるようだった。演者の雰囲気もいつもとは違っていて、全員がジャケットを着ているのもそうだしらお祝い色がかなり強い空気感だったのが1ファンとしてとても嬉しいものだった。シークレットゲストの登場にも驚きが大きく、この空間がこの世界で1番幸せなんだろうなとライブ中に確信してしまったくらいだった。(桜のあとのゲストの登場の時に自分でも今まで発したことないタイプのえぇ!??が出てしまった、嬉しいねえ)もちろんオーケストラアレンジされた曲は全部全部素晴らしくて、是非円盤化される際はライブ音源CDも一緒につけて頂きたいと心から思っている。2曲目がやばいみたいなことをFCコンテンツのラジオで言っていたので覚悟はしていたのだがフルカラープログラムオーケストラアレンジの破壊力が凄すぎてイントロの最初の3秒間くらいの記憶しかない。カオスが極まるが演奏されるとわかった時の自分含めた観客の反応はなかなか見られるものでは無かったし、ラスボス感が強くてかなり刺激的だった。前半終了後の休憩時間はずっとカオスが極まるのことを考えていましたね。アレンジで特に驚愕したのはこのふたつだったのでここに述べておく。しかし本当に全部良かった。早くDVD発売して欲しい、マジで。

ここでもう一つ挙げたいのはフライデイノベルスである。Patrick Vegeeツアーでフライデイノベルスを流れた瞬間に「あとはオーケストラを観にいこうが見れたら今世に悔いないなあ」みたいなことを思った記憶があるのだが、その時と同じようにオーケストラを観にいこうが聴ける前にフライデイノベルスが流れてきたことに個人的にかなり感動してしまった。自分の人生をなぞられているようでぐっときてつい涙を流してしまいそうになった。フライデイノベルスのアレンジも良かったことは覚えているが残念ながら記憶力がゴミカスすぎてほとんど覚えていない。早くDVDを発売してください。発売されたら発売日の前日は絶対に予定を入れずフラゲしてこの世でいちばん早く見てやるくらいの覚悟で視聴するという気持ちがあります、マジで。

この日はオーケストラ編成だし、グッズにタオルやラババンがなかったためあんまり暴れたり踊ったりしないセットリストなのだろうと思っていた。髪を結ってバンドTシャツ着替えて動きやすいボトムスにした前日の格好とは打って変わって、髪は下ろしてオーケストラコンサートを見に行ってもおかしくないようなブラウスとロングスカートで合わせた格好で行った。それなのに最後のゲストである東京スカパラダイスオーケストラが徹頭徹尾夜な夜なドライブを演奏し終えて退場する頃には前髪も湿気でなくなり、触覚も邪魔なので耳にかけ、髪も全部後ろにどけて汗だく、というなんとも見苦しい姿になってしまっていた。映像にはっきりと残されていないことを願うばかりである。盛り上がる曲ばかりで普段のライブと何も変わらない温度感で楽しんでしまった。全く幸福なことである。

オーケストラの音もバンドサウンドもキーボードも歌声も全部聴きたくて何度も髪を耳にかけ直した覚えがある。別に耳に少し髪がかかっているくらいで聴こえ方は変わらないだろうに少しでも聴き逃したくなくて見た目とかどうでもよくなっていた。ちなみに2曲目の時点でこの精神状態になっていたような気がする。怖い。

ストリングスの方々が戻ってきてオーケストラの全員が揃った状態で2曲演奏された後、次が最後の曲だというアナウンスがされた。さっきまで"楽しい"と"幸せ"のふたつの感情で暴れていた自分に、様々な感情が緊張を纏って戻ってきた。この曲に出会った時のこと、ライブで聴いた日のこと、この公演が行われることを知った時のこと、走馬灯のように色んな思い出と感情が頭に浮かんできた。

記憶が曖昧ではあるのだが、覚えているところだけでも残しておこうと思う。

ライブバージョンと同じアレンジのオーケストラが演奏されはじめる。生の楽器の振動で震える空気と、今演奏されているのだという緊張感で既に胸がいっぱいになった。バンドサウンドが重なって会場がオレンジに染まる。30度を超えた日曜、浮かび始めた汗はそのままにして走る。この歌詞で30度をゆうに超えて暑かった今日の開演前までの道がうっすらと思い浮かばされる。記憶に残さなくちゃと焦ってオーケストラを見たりバンドを見たりときょろきょろして泣きそうになりながら聴いている私はさながら不審者のようだったかもしれない。サビに入ってオーケストラとバンドサウンドが混ざりあって綺麗に歌い上げられるこの曲で私は何度も救われてしまったなと気づく。歌詞に救われたわけではない。何故なのかを考えてしまうのも野暮なような気がする、そんな言語化できないししたくもないような理由で私はこの曲に救われていたんだと思う。音楽に救われるなんて柄じゃないなんて思っていたけれど、結成日のライブでも思ったように私はこのバンドに人生を作られていて、あまりにも私にとっての光なのだ。そんな光の中でも特殊で、でも愛してしまうように私を惹き付ける光を放っているこの曲に、出会ってからずっと助けられていたのかもしれない。聴きながらずっと震える手を握って、終わって欲しくないとばかり考えてしまってあまりちゃんと向き合えなかったような気がする。気付いた時にはあっという間に2番は終わり、間奏に入っていた。前回見たときは落ちサビでドラマーが指揮棒を振っていたことがとても記憶に残っているのだが、その日は本物の指揮者がいたために指揮棒を振る真似はしていなく、楽しそうに優しく笑った横顔だけが私の記憶に残った。ラスサビに入ると会場が明るくなり紙吹雪が舞った。私はきっとあの景色を生涯忘れることは無い。この世でいちばん綺麗な景色だった。間違いない、断言出来る。あの瞬間がこの世でいちばん綺麗だった。注釈席だからこそステージと客席を眺めながらまう紙吹雪を見れたことをとても幸福な事だと思う。この曲の記憶は最初のワンフレーズ以降ほとんど無くなってしまったけど、あの景色だけははっきりと記憶した。多分、絶対走馬灯に出てくる。

今までは最後の音同時に暗くなった会場が今回は明るいまま終わった。正直、暗くなる演出が好きだったしその影響でこの曲に思い入れがあるということもあるので暗くなる会場も見たかった。でも、ここからは勝手な考察なのだが、今まではロックバンドのライブの途中でオーケストラを観にいったその区切りとして照明が暗くなっていたのだとしたら、オーケストラを観にいこうという楽曲は言ってしまえばライブの中の演出のひとつでありメインコンテンツではなかったかもしれない。今回明るいまま終わったのはもちろん最後の曲だからというのもあると思うが、この公演の主役が間違いなくオーケストラを観にいこうだったからなのではないかと思う。何を言いたいのか自分でもわからなくなってきたが、とにかくあの公演はオーケストラの公演であり、オーケストラを観にいこうは主役だったのだと感じていいと思う。勝手に誇らしい気持ちである。

前日のライブも終わったあとは呆然としてしまったのだが、それとは似たようで違った感情で支配されてしばらく動けなかった。不思議と終わってしまった絶望は薄く、幸福値がカンストして脳がショートしちゃったみたいだった。武道館近くの段差に座ってぼーっとしてみたり思い出したようにスマートフォンに感想を残したりした。

7月24日はもちろん特別なライブであって比べるものでは無かった。私の中で24日のライブは確実に伝説になった。今後20周年の結成日のライブを他のライブと比べることは無いと思う。

ただ25日は今までのライブで得た感情の最大値が引き出されたライブだったような気がした。編成で言ってしまえば24日25日の感情が逆であってもいいと思うのだが、感情って不思議なものである。

オーケストラを観にいこうが、UNISON SQUARE GARDENが、私にとって今までもこれからも特別であり続けることに気が付けた公演でした。楽曲への特別な思い入れ抜きにしてもまた何年後でも気が向いたらオーケストラ編成もやって欲しいと強く思うほど、音楽的に素晴らしいライブだった。

もちろんいつものスリーピースありきの物なのでどちらがいいとかでは無い、と言うよりスリーピース編成の方が良いと言ってもいいのだが。

またライブで聴けたら感想をここに書くかもしれないしもう二度と書かないかもしれないです。
オーケストラを観にいこう、大好きだよ。

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