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「GOTIT&呼煙魔/SAIKAI 再開/再会」感想

GOTITと呼煙魔は同じく茨城出身で、UMB2023ではGOTITのセコンドとして呼煙魔が来ていたのが記憶に新しい。この二人のタッグによって、過去にも多くの曲が生み出されている。

今回「SAIKAI」を選んだ理由について、先日開催された【WHO's REAL vol.10】にて「SOUL CUT'S」を購入した。その後調べたところ、「AUTMATIC」を入れてGOTIT&呼煙魔の三部作となっていることを知った。

それならばと思い、三部作の一つ目である「SAIKAI」から、作られた順番で丁寧に聴いてみようと思った次第だ。そうした流れであったため、可能であれば「AUTMATIC」と「SOUL CUT'S」の感想も書くつもりだ。

以上の経緯から、今回は「SAIKAI」の感想を書くことにした。2023年4月19日に発売され、全8曲で総時間22分となっている。それでは、以下から感想となる。

Saikai

優雅なメロディーの中に遊び心があり、天使の悪戯のような音が奏でられている。幻想的な雰囲気が、この一曲だけで存分に感じられる。ただ気になる点が一つ、この曲名の『Saikai』とは再開か再会なのか、それともどちらの意味も含んだタイトルなのだろうか。

Brush Up

天使との戯れから一変、軽快で爽快な音が響き渡る。そしてループに入ると、ビートルズの『Come Together - Remastered 2009』が頭をよぎった。テンポもリフも大きく異なるが、微かに60~70年代ロックの雰囲気が醸し出されるビートのように感じた。

「カツカツな今 着々とただ 無茶苦茶な世の中だからこそ歌う」では、アクセントで踏まれているのが面白い。さらに、無茶苦茶の"無"と"苦"が置いてある場所が素晴らしく、"カツカツ"と"着々"のアクセント部分を表拍にした場合、"無茶苦茶"のアクセント部分が裏拍近くに位置していることで、この一瞬で抜きが生まれたように思う。

Oh My Mind

同じく解放感はあるが、より規律無く自由なビートという印象を受けた。しかし、自由も行き過ぎると不安な気持ちに陥ることもある。そんな自由さと不安定さが混在したビートに聴こえた。

この曲全体を俯瞰で見ると、初めはラップすることへの"気持ち"と"葛藤"を吐露し、途中からラップすることへの"気持ちの変化"と"決意"を宣言している、前半と後半で構成されていると考えた。

この構成だと考えるならば、"前向き"と"後ろ向き"の両極端な気持ちが一曲の中に凝縮されていることになる。このビートについて、不安定さと自由のどちらにも捉えられると前述した。そのため、このビートには何ら違和感は覚えないどころか、ぴったり合っているとさえ思えた。

率直に、両極端な心情に対応したビートを作った呼煙魔も、一曲に気持ちの移り変わりを凝縮して作品へと昇華させたGOTITも、表現力が非常に豊かだと実感させられる。

No Reason

静かで地に足の着いたような、リアリティのあるビートという印象を受けた。人数が増えたことから、人の声を目立たせる意図があるのかもしれない。

「LOVEとかLIKEの類じゃなく アップダウンを共にするこの音楽」の"アップダウン"は、生活の波を表現しているのか。『Bursh Up』でも「カツカツな今」と取り上げたように、そういった経験をしていることを表している。

だが、単に気持ちを吐き出すだけでなく、「やんなくていいのにやってる意味」「理由なんか無い でも書いてるリリック」と、その気持ちを自己分析している。"音楽"は、どんな時でも、自分さえ離さなければ寄り添ってくれる。そういった想いがこのバースに込められていると解釈した。

Interlude

これまた静か目ではあるが、先程のビートとは違い、地をゆらゆらと這っている。掴みどころが無く、正体不明といった雰囲気を感じる。正体は分からないくせに恐怖は感じさせず、自然と安心させるような不思議な曲だ。

300年後

唯一の日本語タイトルの曲で、そのタイトルを見た時に何故200でも400でも無く”300"という数字にしたのか。それは、この曲の中で明らかになっているのか、はたまたその意味を見つけられるか。聴くのが楽しみな曲だった。

再生してゆったりとしたビートが流れ始めると、宇宙や夜中といったワードが頭の中に浮かんだ。言わば、真っ暗な暗闇の中に光り輝く星がある情景。最初の「見上げた夜空」という言葉に引っ張られたのかもしれない。けれども、寒さや冷たさは無く、何故だか暖かさを感じる音である。

聴いてみると"300年後"の理由は、皆既日食の周期のことだと直ぐに分かった。同時に「あなたが生を授かって6年」「おもちゃを並べて お菓子を食べて」から、自身の子どもについて語っていると受け取った。暖かさを感じたのは、等身大の気持ちで子どもへのメッセージを綴っているからか。

この曲を聴いて、"300年"なんて短いと思うか、長いと思うか。これまで頭に無かったことを考えさせられた。ある一人に贈られた曲だとしても、個人的に魅力的で面白い曲だと感じた。

All Good Day

三部作の三つ目である「SOUL CUT'S」に『All Good Day(REMIX)』という曲があり、この曲とビートが同じだった。REMIX版とはどのような変化があるのか楽しみだが、今回はこの曲だけの感想を書く。

真っ先にビートから楽し気な印象を受けた。全体的に滑らかな音ではあるのだが、一音一音から跳ねたような明るさも感じる。現実的な音と感じるのだが、暗さはなく明るい現実。その現実を受け入れた上で楽しんでいる、といった"成長"を想像させられた。

「心の隙間 ならば愛情で埋まった」「ごめんよりもありがとうの数が上回った」、それに続く「悪くねぇ人生 今に繋がった」まで、全て生きる延長線上での出来事である。過去を噛み締め、想いを馳せることで生じた"現在との比較"こそが、いま人生を深くまで考えるキッカケになっていると思えた。

"愛情"と"感謝"を受け取る側か贈る側か、どちらを想定して書いた詩か分からないが、どちらだとしてもその二つでいっぱいの人生というのは、どれ程幸せなことなのだろうか。

特にhookの「それぞれに与えられたMY LIFE」「それぞれが作り上げるMY LIFE」が強く心に残った。二つの"MY LIFE"について、一つ目は"全員等しいモノ"、二つ目は"完全にオリジナルなモノ"という意味で受け取った。正反対の意味なのに、同じ言葉で違いを表現しているところが良いなと思った。

Next Time Preview

最後は、美しい音だけを集めたような旋律の中で、ハイハットとスネアの力強さが目立つ曲。落ち着くメロディーではあるが、その力強さから"まだ終わっていない"と勇躍するかのような如くのメッセージを受け取った。

最後に

全体的に幻想的なビートが多いように思えたが、適所に現実味溢れるビートがあり、緊張と弛緩がはっきりしていた。その点から、"伝えたい内容"がストレートに表現された時、その曲の立ち位置が理解でき、丁寧に本質を受け取れるビートとして呼煙魔が完成させている。

GOTITの声を言葉で表すとすれば、声が高く目立つが"派手"と言うほどビビット色では無いし、安定しているが"悠揚"と言うほど動きがない訳でも無い。一番合っていると思った言葉は"燦然"。多少アンダーグラウンドな環境で光るような、自然に唯一無二な輝きを持つ声であると感じた。

そのような、言葉の本質を受け取れるビートの上で、自然で唯一無二な輝きを持つ声が光っていた。また、表現が非常にストレートで、どんな状況でも等身大で、多くの人に届く内容に仕上がっていると思えた。

https://ultravybe.lnk.to/SAIKAI

https://www.youtube.com/watch?v=eLAqfPL64-U

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