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連載企画①難民とは誰か

まずは、難民・外国人を取り巻く諸問題について包括的にまとめた記事の連載を行います。

この問題が起きている背景を含めて知っていただければ、なぜ日本人が難民・外国人労働者に対する様々な差別・人権侵害を自分事としてとらえる必要があるのか、腹落ちしていただけると思います。

難民・外国人を取り巻く諸問題に係る連載記事一覧は以下のとおりです。

1)難民とは誰か
2)日本の難民受け入れ状況とその問題点
3)日本の外国人労働者受け入れ状況とその問題点
4-1)在留資格を持たない人々を取り巻く状況 - 退去強制・収容
4-2)在留資格を持たない人々を取り巻く状況 - 仮放免
5)差し迫った危機:収容送還専門部会の提言とそれに対するBONDの立場

それでは、はじめましょう。

難民とは誰か

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難民とは誰のことであるか、日本も加入している難民条約(詳細は後述)では、以下のとおり定義されています。(難民条約第1条A(2))

人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
国籍国の外にいる者であること
その国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者であること

上記の定義のポイントは、迫害を受ける十分な恐怖を有していれば難民とみなされること、一方で、経済的な理由により祖国を離れた人々及び国内で別の地域に避難している人々(国内避難民)は難民とはみなされていないことです。この定義で十分なのかどうかについては、依然様々な議論があります。

難民条約とは

これは難民の保護を保証し難民問題を解決することを目的として採択された以下2つの条約を含む言葉として使用されています。

1951年:「難民の地位に関する条約」
1967年:「難民の地位に関する議定書」

難民条約では、特に難民に保障されるべきこととして以下2点を挙げています。

「出身国または常居所がある国へ戻ると迫害を受ける可能性が高いと認められる場合は、受入国は難民を帰国させることはできない」(ノン・ルフールマンの原則)
「庇護申請国へ不法入国しまた不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない」

上記のポイントは、難民条約に加入している国々が母国に帰れば迫害を受ける可能性のある人を無理やり帰国させたり、罰したりすることは禁止されていることです。(日本が難民条約に加入しているにも関わらず、上記の記載を守らないことをしようとしている点については、「5)差し迫った危機:収容送還専門部会の提言とそれに対するBONDの立場」で詳しく説明します。)

日本が難民条約に加入した理由

なぜ日本は難民条約に加入したのか、その理由は1900年代後半に遡ります。1975年以降、ベトナム、ラオス、カンボジアでは、社会主義政権の崩壊によって社会が大きく混乱しました。その結果、この混乱から脱するため、いつ壊れてもおかしくないようなボートに乗って過酷な漂流の果てに日本に流れつく人々(いわゆる「ボート・ピープル」)が現れました。

(参考)インドシナ難民とは
 1975年のベトナム戦争終結に相前後し,インドシナ3国(ベトナム・ラオス・カンボジア)では新しい政治体制が発足し,そうした体制になじめない多くの人々が,その後数年に亘り,国外へ脱出しました。これらベトナム難民,ラオス難民,カンボジア難民を総称して,「インドシナ難民」と呼んでいます。
(外務省HP:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/nanmin/main3.html)

日本はこれを受けて1981年に難民条約に加入し、 1982年1月1日より難民受け入れの義務がある国となりました。
難民条約に加入したことにより、日本の国内法も難民受け入れのため整備する必要があったため、1982年に「出入国管理令」を「出入国管理及び難民認定法」(以下、「入管法」という。)に改定しました。この法律の下、法務省管轄の出入国在留管理庁が難民認定の手続き(外国人が難民の地位に該当するかどうかを審査し、決定する手続き)を管轄しています。

次回の更新もお楽しみに!