2021/8/8埼玉大企画イベント報告

 BONDでは、8/8(日)に、埼玉大学の学生に向けた企画を開催しました。以下、本イベント内容の報告をします。

1,開催目的

 このイベントは、入管収容施設や日本の難民問題について解説するとともに、実際に難民の方のお話を聞くことによって多くの学生に関心を持ってもらい、ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める取り組みを社会問題化することを目的に開催しました。

2,入管収容施設及び難民問題について

 最初に、入管の問題点や問題の背景について解説をしました。
 国際的にみると日本の難民受け入れはかなり遅れています。2019年の難民認定率はたったの0.4%でした。この極めて低い難民認定率により主に2つの問題が引き起こされています。

①入管収容施設内の処遇

生活上の問題 :行動の制限や官給食等。
医療問題 :医療放置や死亡事件等。
職員による差別や暴力:帰国を強要する発言や差別発言、制圧行為等。
長期収容と再収容 :長期化する無期限収容に伴う精神的負担。

②仮放免状態の生活と入管の問題点
 仮放免中は就労が禁止されており生活費を稼げないなど、入管は仮放免中の生活に多くの制約を課しています。こうした構図には、労働行政に従属した入管行政が原因としてあげられます。財界及び入管は外国人を「安価で都合のよい労働力」として利用してきました。ところが日本人でも派遣労働者を大量に確保できるようになって、入管は、在留資格のない外国人の大摘発を始めたのです。
 入管は帰れない当事者と一方的に帰国を迫る入管との矛盾した状況を生み出しました。入管の「送還一本やり方針」により、人権侵害を手段として帰国できない当事者に帰国を迫った結果、生まれた一犠牲者がウィシュマさんです。これまで入管収容施設内で亡くなられた方、そして、この瞬間も、終わりのない収容や非人道的な処遇で以て送還を迫られている被収容者の方が、この問題に苦しんでいます。


3、仮放免者ミアさんへのインタビュー

次に仮放免者ミアさんにお話を伺いました。

Q, なぜ日本に来たのか?
A, バングラデシュの大学に通っていたが、現地で政府に反対する学生運動を起こしたことを理由に命を狙われるようになった。殺されそうになり、銃で撃たれ、鉈で足を切られた。ヨーロッパ諸国に逃げるにはビザが必要だったが、1988年当時日本ではビザが必要なかったため、日本に逃げてきた。警察にも、難民だと知られなければ、真面目に仕事をしていれば大丈夫だと言われた。

Q、収容の経緯、収容生活は?
A、2009年7月、急に会社に30人くらいの人が来て捕まった。命が危ないからどうしても国に帰れないと説明すると、入管施設に連れていかれた。日本では難民の申請ができるということを、この時初めて知った。12月からは牛久の施設に移動した。そこで皆と話をし、電話や面会の時に情報をやり取りして内部で団結し始めた。フリータイムが終わっても部屋に入らず皆で職員に抗議したり、ハンガーストライキをしたりした。しかし、無理やり押さえつけられ、部屋に入れられてしまう。支援者と話し合って外部での活動が始まり、その後仮放免をもらった。

Q, 入管法改正が廃案になったことについてどう思うか。
A, これは学生の運動の効果だ。日本で入管が負けることなどなかったので驚いた。入管が日本の(国際的な)評価を落としている。国を変えるために必要なのは、将来のリーダーである学生の運動だ。

Q, 仮放免の生活
A, 入管から出るときは身体がボロボロだが、健康保険に入れないので医療を受けるのに大変な費用が掛かる。また、仕事ができないので皆から助けてもらいながら生活する。今はコロナの影響で普通の人も大変な状況なのに、助けを求めなければならないのはとてもつらい。普通の人の場合、万引きすると、三か月ほど刑務所に入れられる。仮放免者の場合、仕事をすると、何年も入管施設に入れられる。
今は、奥さんの身体に無理をさせて仕事をさせてしまっている。それを見るのがとても苦しい。奥さんは身体も悪く、コロナで仕事をするのも難しい。入管は私自身の身体だけでなく、愛する人の身体も壊している。

4,感想

 私は今回のイベントを通して、当事者と支援者が団結すること、声をあげ続けることの必要性を改めて感じました。ミアさんが強いられた境遇は、間違いなく人権を無視した入管のご都合主義によるものです。難民の方はもちろん、関わる人たち全員の人生を軽視しているように感じ、憤りを覚えました。私たちは日本社会を形作る一市民として、この問題を改善していく義務があるように感じます。誰も置き去りにしてはなりません。ウィシュマさんの死が、人々の無関心によって水に流されてしまうような社会であってはいけないと思います。
 より強固な団結、そして積極的に行動を起こして問題喚起をする努力に一層力を入れていきたいです。