ガチ泣き可能音楽を紹介!

こんにちは!

ふと自分の人生を振り返ると、本とか映画、漫画は余程見たいものじゃない限り見ない自分にとって、今まで触れてきた芸術作品と言えばやはり音楽がかなり大部分を占めていて、その中で特に「音楽に泣かされた」経験がかなり記憶に残っています。
今回は主に僕がインターネット上で見つけ、聞いてきた音楽のうち、超泣けた楽曲を紹介していきます。
アーティスト名は敬称略とさせていただきます。
※可能であれば、文字を読む前にまず一度聴いていただくことを推奨します。



1.nina - The Little Mermaid

見つけたのは2022年の10月頃だったと思います。
このころ「ボカピク」という、再生回数の少ないボカロ曲を紹介するニコニコのアカウントがありまして、それを見ていた際にnina氏の「眠れる森の美女」という曲を見つけました。これが非常に良い曲で、同氏の曲を聴いていたときに見つけました。これが馴れ初めです。

nina氏は、youtube・ニコニコには少ししか曲を上げていませんが、2005年あたりから作曲活動を行っていたそうで、たまに同人CDに曲を提供していたアーティストですが、2019年に「Tweedledum and Tweedledee」でVOCAROIDを使用した曲を初製作、それに次いで、3年の間を空けて公開されたVOCAROID2作目がこの「The Little Mermaid」です。

冒頭から民族的な音色のクラリネットとゴージャスなストリングスが鳴って、世界観に引き込まれます。その後巡音ルカによる歌唱が入り、物語が始まっていきます。原作はHans Christian AndersenのThe Little Mermaidそのものであり、歌詞は英語で語られます。

まず巡音ルカの声があまりにもバックのオーケストラ&ピアノと調和しすぎていて、そこに驚きます。合成音声に合うのは電子系のきっちりした音だという先入観を見事に破壊してくれます。しかし、多少リバーブによってマイルドにされてはいるものの、その中でしっかりと巡音ルカの声色を感じ取ることが出来るのも素晴らしい。
歌詞についても、原作と比べて何倍も文字数は省略されているはずなのに、内容をほぼ原作通りに伝えてくれます。ボカロ曲でこういった童話をモチーフにした曲は決して珍しくありませんが、ここまで原作に忠実なリリックはあまり類を見ないものだと思います。

「VOCAROIDによる歌唱」と「原作に忠実な歌詞」―――この二つの要素によって、ボーカルを完全に「語り」に昇華させており、それは幼い頃の、親から子へ伝えられる「読み聞かせ」に近いものを感じることが出来ます。
ふと気になって調べてみると、日本の読み聞かせは、親から子へ、一方的に淡々としたリズムで行われるのに対し、外国の読み聞かせは、「親が子に考えさせる」という面が強く、親は子どもを積極的に参加させる読み方をする傾向があるそうです。この曲の作曲者であるnina氏は恐らく日本人であることから、淡々としたイメージのVOCAROIDが視聴者に向けて歌うことが「読み聞かせ」と重なり、そこにノスタルジーや安らぎを感じるという感性が共通しているのではないかと考えます。(nina氏が読み聞かせを意識して本作を作ったかどうかは分からないので、あくまで僕の推測です。)
そういったことからも僕はこの曲に親しみを覚えているのかもしれません。

さて、ここまで歌唱・歌詞の魅力について触れてきましたが、オーケストラの方も魅力がたくさん詰まってるので紹介していきます。

まずピアノの音色が常にとても柔らかくて、明らかに温度を感じます。そこに入ってくる伸びやかなストリングスがどんどん先へと期待を高めてくれている感じです。ストリングスは、前半はずっと鳴っているというよりかはピアノと掛け合いになって少し現れては消える、を繰り返し、まさに波が動いているかのようです。

1:31で一度目のサビになる訳ですが、ここで金管がかなり派手に鳴り、また木管隊も高いところでキラキラと鳴り、重厚感を感じることが出来ます。またここでピアノがかなり低音寄りになってベースラインの役割を果たすのもおもしろいです。全体的に高音に寄っていて、打楽器もタンバリンが主として目立っている中のトロンボーン・ティンパニ・ピアノのベースラインがとても美しいですね。

3:33のところでピアノが執行に8分を刻み始め、これまでの雰囲気と異なる展開が現れます。またその後グロッケン的な音が16分を鳴らし、高揚感を感じられます。「魔女から人間の足を手に入れられる薬を貰った」ところなので、人魚姫の「足」に対する期待と不安が渦巻いている様子を表現しているのかな?
その後、人魚姫は足を手に入れるわけですが、そこでキックとカバサ、フォークギターが登場。これはどう考えても陸上で歩いている人魚姫を演出しており、舞台が海から陸に移ったことを如実に表現しています。刻みの「歩いてる感」が素晴らしいです。

5:01から、陸上でのサビが始まります。ストリングス・フルートの中でやはりギターが目立ちます。ヴァイオリン→フルートと繋がるところの旋律が素晴らしすぎて鳥肌です。

7:09からは金管・木管が低音から高音まですべて占めるようになり、7:33で迎える最後のサビは、陸上の刻みはそのままに、ストリングス・金管が畳みかけるように重厚感を増し、フルートもキラキラと高音を奏でます。ピアノも低いところから柔らかく聞こえてきて、これまであまり登場しなかったシンバル系の煽りにより更に重厚感を増しています。またボーカルも1・2サビの短3度上になっており、僕は何度聞いてもここで泣きそうになってしまいます(初めて聞いたときは泣きました)
ここが終わったあと、サスペンデッドシンバルとフルートの余韻とともにピアノだけが和音を奏でる2小節が本当に美しいです。

9:23、締めくくりとしてピアノとボーカルだけでサビの旋律をもう一度登場させ、その後全楽器でイントロの旋律を奏でて終わります。

この曲が好きすぎるので、サビに関連するあたりに絞って書いてみましたが、もう2000文字も書いてしまったようです。
おそらく大部分が打ち込みでありながらも一つ一つのハーモニーに生命の息吹を感じることができ、人魚姫の多彩な感情に触れることが出来ます。まさに”音楽映画”です。
この曲がYoutubeとニコニコ動画合わせて再生回数1500くらいなの、本当に納得がいかない・・・。
皆さんも是非一度聞いてみてください。


2.西島尊大 - 86,399

またしても長いボカロ曲になってしまいました。
この曲はとあるイベントで知ったものなので自分で見つけたものではないです。しかし初聴時の衝撃がとても強かったことを覚えています。

前半は、7/8拍子という変な拍子、カッチリした音色のビート、16分で永遠に刻むピアノ、音程変化があまりない淡々とした初音ミクの歌唱、と、緊張感を漂わせる要素がたくさんあります。また諸所にダブステップ的な唸るベースが使用されていて、ストリングスなどが鳴りつつもこういった音を取り入れるという姿勢から、まさにジャンルの垣根を越えた緊張を表現出来ていて凄いです。

しかしこの曲の凄いところは何と言っても5:30あたりからの後半部です。前半部でもあったピアノの16分の旋律はありながらも、その上に希望に満ち溢れた別の16分がキラキラと光ります。それに乗ってストリングスが奏でる和音も明るく華やかなものへと変わる。このストリングスの音圧がすごくて、飲み込まれそうになります。やはり前半部の緊張があってこそこういった「解放」のパートが映えると思います。

6:56でついに低めの弦楽器とギターによって4/4拍子へと解放されます。この拍子が変わる瞬間に打楽器を止めることによって違和感なく繋げることができていて素晴らしいです。

その後のビルドアップでは4つ打ちが登場し、ここで聴いている方はものすごく安心します。その状態でビルドアップ、そしてサビに突入。この最後のサビでやっとボーカルがとても旋律的になり、主題である16分のピアノは鳴りながらもストリングスやピアノによって伸びやかな音楽を築き上げます。ラスサビは僅か8小節ですが、この8小節にこれまでの全ての緊張が解放され、「救済」されるという仕組みになっています。まるで大きな扉が開いて外から風が吹き込んできたようです。(泣きポイントです)

この曲の凄いところは「緊張からの解放」が拍子や和音によって意図的に仕組まれているところにあると思います。西島尊大氏の楽曲はどれも素晴らしいものが多いですが特にこれが好きです。


3.Chouchou - Lost Utopia

この曲は良い点を言語化するのがとても難しくて、記事に取り上げるか迷いましたが、2年前くらいからずっと聴き続けている本当に好きな曲なので紹介することにしました。

最初の子供の声と車の音から入るピアノがもうまさに「Lost Utopia」であり、退廃的な雰囲気を醸し出します。
イントロからアウトロまで一定のピアノの8小節のフレーズの繰り返しの上に構成されています。そもそもこのフレーズがシンプルでありながらも本当にエモくて、これをずっと聞いているだけで泣きそうになります。
そこにありえないほど綺麗なボーカルが登場し、とんでもない浮遊感を感じることができます。
途中で登場するpadやピアノの短いフレーズがまたしてもその浮遊感を演出し、完全に曲の世界観に引き込まれてしまいます。

4:19のあたりで柔らかくてアナログなシンセが後ろで鳴り始めるのですが、これがとても美しく鳴っていて素晴らしいです。とにかく「美しい」と言う言葉でしか形容できません・・・。

言葉を捻り出して書いてみましたがこれが限界でした。
僕は死ぬときは絶対にこの曲を聴きながら死にたいと思っています。


4.耳中華 - 損

ピッチだけいじってあとはほぼそのままの質感のゆっくりボイスをボーカルに起用し、インストはMIDIで打ち込んだものをそのまま使うという、特殊な製作をしている耳中華の2nd Album「笑う光」の10曲目です。

この曲は、ゆっくりボイスをボーカルとし、楽器はベタ打ちでチープなギター、トランペット?、フルート、ピアノ、しか使われておらず、しかもギター以外は全て合いの手で出てくる程度ですが、楽器に対してかなりボーカルが多く、空白を埋め合わせている感じです。

しかし、やはりこういった曲の方が、ゆっくりボイスの特徴、ゆっくりボイスに内包された感情(というより、自分がゆっくりボイスに抱く感情が反射している)がよく見えて、懐かしくて泣きそうになります。耳中華氏のインタビューを拝読すると、ゆっくりボイスの使用理由として「暖かくて一番落ち着くから」「青春」という理由を挙げており、おこがましいのですがなんとなく思っていることが一緒だなーと思いました。

この曲はゆっくりボイスをほぼ生のまま使用しているので、ところどころに機械音声特有のノイズも入っているのですが、もはやそのノイズさえも愛おしく、昔のガビガビのゆっくり実況を思い出してしまいます。私自身も小さい頃からゆっくり実況などに触れてきて、聞き慣れている声ではあるので、その声が歌っているということに感動しているのかもしれません。

またこの曲は、アルバムのLIVE映像を見るとわかるのですが、「また」をエンドロールと考えると、アルバムのうち最後の曲となっており、アルバム名にもある「光」が後半の歌詞で多用されているのにも合点がいきます。アルバムを通しで聴いた中でも、全ての楽器が無くなったところでゆっくりボイスだけが「歌う」ところはこの展開と5曲目の「ボンベ」だけであり、「ボンベ」ではゆっくりボイスのピッチがめちゃくちゃ下げられているので、「損」で初めて、ゆっくりボイスがとんでもなく伸びやかに歌っていたことに気付きます。

正直、「光」というワードは使われていますが意味はよく分からないものは多いです。ですがゆっくりボイスが何か未来に対する大きな希望を歌っているように聞こえて、チープなギターの音色も相まって凄く懐かしくて明るい感情になり、自然に泣けてきます。

最後の「ジュース飲む光!」の伸ばしの後、高音のゆっくりボイスだけが残り、伸ばし終わりに「あああ」とちょっと下がって声が切れるんですが、ここは非常に人の感情を感じます。耳中華氏が「ゆっくりボイス」に込めた「光」のイメージが最も如実に現れる部分だと思います。

なお、同アルバムの5曲目「ボンベ」→6曲目「進化」の繋ぎが本当に神過ぎる上に、「進化」が神曲すぎるので、是非アルバム通して聴いてみてほしいです。


5.kurayamisaka - farewell

kurayamisakaというバンドを偶然知って聴いた「kimi wo omotte iru」というアルバムの5曲目です。まずこのアルバムは「進学を機に離れ離れになる女の子2人」というコンセプトがあるらしく、この曲はそのコンセプトの起源となった曲だそうです。

全体として歪んだギターの熱がすごくて、音を正面から浴びている感覚を体験できます。まずイントロのシンプルなリフから心をぐっと掴まれます。もう本当に切なくてどうしようもない感情が最初から伝わってくる。だいぶギター隊が低音の方に寄っていて、更に途切れることがないので、質量を持った音像を感じられます。

またボーカルの方の歌い方が本当に上手です。Aメロでは寂しそうな感じで、Bメロではかなり感情を出してしっかりした声で歌い、サビでは力強さと切なさが混ざった何とも言えない良さがあります。特に2番Aメロの「長い髪が揺れて」が本当に寂しそうに表現されていて素晴らしい。

それでBメロについてなんですが、ボーカルに付随するようにギターの方も音数を増して、熱量を増して切なく訴えかけられる感じがあります。初聴時はここがサビかと思いました。
しかしこの後に来るサビがエモすぎるんですよね。Bメロで熱を持って感情を爆発させた後、サビで少し落ち着いて語る感じが美しすぎる。Bメロでは女の子と別れてしまったことを嘆くんですが、サビに入ると区切りをつけて前向きに歩き出そうという決意が見えるというか・・・。言語化が難しいですが、切ないながらもダウナーではなくなり、前を向いていくという表現が音楽によって成されていると思います。

(Bメロ)
命を燃やして 君は旅立った
同じだけ燃やして ただ無事を祈った

(サビ)
巡る季節の合間を縫って
離れ離れに慣れてしまって
僕のことも忘れてしまった
君を見たら笑ってしまうかな

この曲を語る上で歌詞は絶対に語るべきであり、その中で最後のBメロとサビをピックアップしました。この歌詞からも分かる通り、Bメロはかなり直接的な別れへの思いが綴られていますが、サビに入ると少し時間を経て「離れ離れに慣れてしま」い、気持ちに区切りがついたように見えますが、やはりまだ忘れられていない・・・という、歌詞表現からもこのアルバムのコンセプトを明瞭に感じることができます。

このアルバムのコンセプト自体が、誰しも経験のあるような典型的な「別れ」であり、そこに共感を見出すことができます。
同アルバムの「seasons」も非常にお勧めです。とりあえず、Spotifyでアルバム通して聴いてみて下さい。


6.内田真礼 - aventure bleu

この曲は「たくのみ!」というアニメのOPだそうです。(僕は曲の方を先に知って、アニメは知りませんでした)

アニソンらしいノリとアニソンらしいメロディをもつ、キャッチーで可愛らしい曲ではあるのですが、その中で特に好きなのはストリングスが本当に綺麗に鳴っていることです。ビートはずっとドラムンベースの感じで行っているのですが、その中でバイオリンが理想に近い形で調和してきます。ピアノ、バイオリン、アコギ、シンセサイザーで構成されていますが、ボーカル周りという大事なところにバイオリンが華やかに響いてきて泣いちゃいそうになります。
特にサビの解放感は、目の前の大海に向かっていく感じがあって、まさに冒険に出ていくようです。

またメロディが本当にキャッチーで、すぐに口ずさみたくなるような旋律を声優である内田真礼氏の安定感ある歌声が歌ってくれて、安心感があります。
コードを鳴らしているアコギもちょっとだけエスニックな風味を足してくれていて、良いスパイスになっていると思います。ギターソロは普通にエレキギターがやるのですが、後ろで鳴っているアコギとのコントラストも目立ち、両者を引き立たせていてとてもエモいです。

この曲はサビ前で打楽器が無くなって、ベースとバイオリンで高揚感を演出しているところも特徴になるのかなと思います。ここでもボーカルが伸ばしているところでバイオリンがいい感じに繋いでくれています。
全体的にボーカルの対旋律として常にバイオリンがいてくれていて、更にラスサビでボーカルとストリングスがどちらも目立つようになって、凄く高揚感を得られます。こういう点から、ビートは変わらないですが全く飽きないんですよね。

この曲、すごくアニソンらしいメロディで、日本人の方の作曲かなと思いきや、なんとRasmus Faberというスウェーデン出身のミュージシャンが作曲したらしく、驚きました。幼少の頃からアニメ音楽に影響を受けていたそうです。


おわりに

個人的にいい曲から6曲を抜粋して記事に取り上げて紹介させて頂きました。
他にも聴いてほしい泣ける曲があるので、それらを本記事で紹介した5曲を含めてSpotifyプレイリストにまとめておきました。
(nina - The Little Mermaidはサブスク配信されておらず、youtubeとニコニコ動画からしか聴くことが出来ません)
曲順は、通しで聴いたらいい感じになるかな?ということで僕が勝手に並べ替えた順番になっております。

曲への愛がデカすぎて7000文字以上になってしまいました。(1/4くらいはnina - The Little Mermaidに使っている)
ここまで読んでいただいた皆さん、ありがとうございました。

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