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「脳が壊れた」はいい本ですよ!

増刷が決まったんですって!

この本の何が素敵かって「続きがある」こと、だと思う。

脳が壊れても「それでも、人生は続いていく」のだよなぁって思ってさ。そして続いていった人生を、どうにかこうにか、夫婦で生き抜こう、可能な限りはお互いに楽しくが増える方向でさ!ってのがあって、大好きだなぁって思う。

昔、息子の支援級の担任があんまりにもワカランチンなので、どうなったら想像してもらえるんだろう?って考えたことがある。それはとても「復讐するなら、何が的確か?」に近づいていったものだ。

聴覚過敏にも、相貌認知の問題も、感覚過敏にも、言語理解の偏りも、全部全部「甘えでしょ、社会に出たらそれではやっていけません」で切って捨ててたあの担任。感覚的な、知覚的な、「苦痛」があるだけでも辛いだろうに、それを「緩和しようとした行動を咎められ」「甘えだと叱責される」なら、そりゃもうあなた、絶望した!人類に絶望した!自分が人間であることに絶望した!って、なって当然じゃない?って私は思ってたよ。

人間、生きてる限り、苦痛はあるし、痛みってのは「やばいよセンサー」だから、それがないのも困るわけ。息子の場合は、知覚過敏と鈍麻のミックスもあったから、流血してても「気がつかない」とかもあったりして、過敏と鈍麻はどっちも「やばい」んだけどさ。自分の痛みは自分にしか感じられないものでもあって、生まれた時からそうなら「これが、フツー」って思っちゃうものでもあってね。知覚的な苦痛って、共有するのはとても難しいことでもあるのよね。私も気が付いてなくて、虐待に近い苦痛を息子に味あわせてた!ってのがあって、それは今でも胸にトゲになってる。反省して改善したところはあったとしても、息子が味わった苦痛は消えないよなって思う。

それでも、人生は続いていく。

私はあの先生が「社会に出てから〜将来のために〜」言うたんびに「あんたは、その時の責任、取れないじゃん?」って思ってた。人類への絶望をたっぷり抱えた「社会人」になれたとして、それってかな〜り苦しくて辛い人生だと思うんだよねぇ、でもあんた、その時も言うでしょ馬鹿の一つ覚えみたいに「親や上司に迷惑になってる、甘えてないで、頑張りなさい」って。具体的な方法はゼロの、なんか良いこと言った感の言葉は、お墓に唱える念仏と同じぐらい、慰まるのはお前だけ、って思うよ。

自分自身がどんな風になったら「脳の都合で、いろんなことが起こるんだよ?」が想像可能になるんだろう?「わかってるんだけど、体がそう動かない時に叱責されると、どれくらい絶望的な気持ちになって辛い」のか、どうやったら思い知ってくれるだろう?ってずっと考えてたよ、あの頃。

あの映画のあの登場人物みたいに、脳は明晰なまま指一本動かせないようになるとかどうかなぁとか、あれは首のとこで神経折れてたんだっけ、そんな風に怪我させるのって可能かしら?ってアブナイ空想しまくってたよ。毎日毎日、息子は「学校でちゃんとする!」を頑張って、家では自傷行為も相当あったからねぇ。私は「こんなに他人の言うことを却下しまくるのって、どっちが障害者なんだろう?息子の方がまだ先生の言うことを聞き入れようとして苦しんでるのに?」思ってたよねぇ。

「脳が壊れた」を読んだ時に、もしも、あの担任が高次脳機能障害を得ても、かつての自分が子供に行った「指導」が、全く役に立たないどころか虐待に近い行いだったって思い知る日はないなって確信を持てたね。あの担任になかったのは「繋げてみる」ってことだったから。今の自分の苦痛と、あの時のあの人の苦痛を「繋げてみる」が出来ないんなら、無理だわって思った。

自分の痛いはわかるけど、他人の痛みはわからないのは「当たり前」のことでさ。わからないからこそ「繋げてみて、考えてみる」になると思うのだけどさ。アレとコレは別のことで「繋げてみる」をしなければ、いつまでたっても別のこと、だよなぁって。

「脳が壊れた」の中で、本人的な理屈を自分の言葉で表現しようとしてるところは、ちょうど「繋げて、考えてみる」と「他者との共有に耐えられるよう言語化する」の苦闘だ。「自分にはこう感じられる」と、「自分以外の人からはこう見える」の間には、深くて昏い河があって、時々その河は対岸が見えないくらい川幅が広いんだよなぁって思う。

それでも、人生は続いていく。

そこんとこを踏まえてから、その先の人生どっち方向で行くかなぁ?ってなった方が、人類への絶望を抱えてるだけよりかは、手札が増えてちょっとマシなんじゃないかなぁと私は思ってる。

私はあの頃も今も、嘘つきな希望が好きで、そんな風に生きている。

息子は息子で「俺は、サプライズが嫌いだから、希望を持って裏切られる方が嫌。絶望を見て、絶望から後ずさりする。外から見たら、前向きな行動ってなるでしょ!」との生き方を選んでる。

鈴木大介さんが綴っていく、あの生き方は、きっと、多くの人の参考になると思うので、オススメです!

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