なし

冷蔵庫の中に、しそジュースの原液がある。
何年か前に出雲で買ったやつ。
まだ飲めるのかわからないけど、炭酸水で割って飲んだ。
懐かしい味がした。
高3の時に死んでしまったばあちゃんが、よくペットボトルいっぱいにつくって飲ませてくれてた。
ふと、6月末はばあちゃんの命日だったことを思い出した。
ばあちゃんが、自分のことを思い出してって、冷蔵庫の奥にあるしそジュースに気づかせてくれたんだと思った。
家族にきいたら、ばあちゃんの命日はあさってだった。
今日は、生まれてくるはずだった5番目のきょうだいの命日だ、そうだ。
日にちを、知らなかった。
ごめん。
存在を、忘れてしまっていた。
ほんとうにごめん。
こんな風に思い出してごめん。
大きくなっていたらたぶん小学校高学年くらい。
会ってみたかった。
妹なのか弟なのかもわからないまま。
始まる前におわってしまった命。
今年の梅雨。
泣きたいのに涙がでてこない。
涙を流すことは最高のストレス発散らしい。
このきもちを発散させるなということかもしれない。
わすれてはいけない私の歴史。
会ってみたかったいのち。
行き場のない思い。
しそジュースを、もう一杯飲もうと思う。
ばあちゃんを思い出した1杯目と、
会いたかったその子への1杯。
会ってみたかった。
せめて涙が溢れてくれればいいのに。
心に刻みたいのに、洗濯機は止まる。
私は洗濯物を干さないといけない。
いまに必死でわすれていく
いまを生きる私はいまを何より大切にしたい
それでも忘れてはいけないことがあったのに
わすれてしまっててごめん

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