ジョゼと虎と魚たちを観ました。

 良かったです。あまりにも良かったので、本当は劇場で叫んで踊りだしたかったのですが、コロナ禍の中においてもそこそこの人がいたので、人の目も気になることだし、せっかくなので今思った感情をまとめる機会を作っておくのもいいなぁ、とキーボードをタイプしています。

 「ジョゼと虎と魚たち」は原作が小説で、十数年前に実写化もされていたそうなのですが、自分の勉強不足で寡聞にして存じ上げておらず、公式サイトも見ずオタクの「良かった。南条が好きなヤツだと思う」という不確かで信頼出来る情報だけを元に劇場に足を運びました。

 公式サイトからあらすじを拝借すると「趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ。
幼いころから車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになった
ところを、大学生の恒夫に助けられる。海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れをいつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。そんな恒夫にジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅは、あるバイトを持ち掛ける。

それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。
しかしひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、
恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。
そんな中で見え隠れするそれぞれの心の内と、縮まっていくふたりの心の距離。
その触れ合いの中で、ジョゼは意を決して夢見ていた外の世界へ恒夫と共に飛び出すことを決めるが……。」とあります。もうこれが全てです。ここから想像できるストーリーが答えです。


(以下、ネタバレがあります)




 初めて二人で外出した日、チヅの「二人きりで外出しない」という約束を破った日、恐らくは独りで外に出た事がないジョゼが、悪戦苦闘しながら、切符を買い、電車を乗り継ぎ、海を見た日。ジョゼが祖母の言いつけを破ってまで海を見たかった理由は「海の味を知るため」でした。幼い頃、今はもういなくなってしまった父に出された「海水の味はどんなでしょう」というクイズ、その答えを聞く前に、彼女の父親は遠い所へ旅立ちました。本で読んだ知識で海水はしょっぱいものだと知ってはいたけれど、それが本当か確かめたかった。砂浜に車いすのタイヤをとられ、這って進みながら、初めて自分の過去と気持ちを恒夫に吐露するジョゼ。グリフィンドールに10点。

 そんなジョゼを担ぎ上げ、「自分で確かめたいんだろ」と波打ち際へ連れて行く恒夫。その肩に担がれたジョゼの顔に、波しぶきが打ち付けます。「本当にしょっぱい」と、初めて味わう海水にはしゃぐジョゼが暴れたせいで肩からずりおちそうになったのを、恒夫が慌てて抱きかかえ、所謂お姫様だっこのような形に。普段なら辛辣な言葉を投げかけるだろうジョゼは初めての体験に夢中でそんな事に気付く様子もありません。夕暮れの日差しに優しく包まれながら波打ち際でまるでダンスでも踊るかのようにくるくると回る二人の影、グリフィンドールに15点。

 その日から二人はチヅの目を盗んで街へ出かけるようになります。買い食いのクレープ、観覧車、水族館、公園、図書館と、そこで出会う新たな友人。その全てがジョゼにとっては初めての経験で、それでいて、それを恒夫に知られたくない彼女はわざと知っているフリをしますが、それすらも恒夫に見破られてしまっています。この頃には二人は冗談を言い合う仲となりますが、恒夫のバイト先に訪れた時にその関係性にヒビが入ることに。自分には恒夫しかいないのに、恒夫には他の友人がいる事に気付いたジョゼは、一方的に不機嫌になっていきます。挙句の果てに「こんな場所、来んかったら良かった」と口にしてしまい、大切なバイト先を「こんな場所」呼ばわりされた事に腹を立てた恒夫と仲違いをし、チヅを通じて「もうバイトに来なくていい」と伝える事に。

 短い間ではあったが、着実に絆を育んでいたはずのジョゼからの怒りと「来なくていい」に困惑する恒夫は、以前の生活に戻りますが、ジョゼの事がずっと心の片隅で気になってしまいます。そこで、バイト先の店長の作品から感銘を受け、自ら作成した魚のガラス細工を使った照明器具を持って、再びジョゼの家に訪れます。驚きながらも、恒夫の作品に関心を持ったジョゼ。二人はジョゼのベッドの上で並んで座りながら、灯りを見つめます。作品のモチーフの魚を問われた恒夫は、自身の家庭環境、魚との出会い、将来の夢をジョゼに聞かせました。その時、不意に灯りが消えてしまいます。故障かと焦る二人ですが、不具合だったようで直ぐに灯りが戻りました。ふと気付けば目と鼻の先にあるお互いの顔、恒夫はジュゼの唇に目を奪われ、目を離せなくなってしまいます。しばし熱に浮かされたように顔を見合わせる二人ですが、我に返ったジョゼの頭突きによりなんとなく気まずいながらも空気は弛緩しました。しかし、背を向けたジョゼの顔は真っ赤に染まっていました。素晴らしい、グリフィンドールに30点。

 なし崩し的に再開した二人の外出。出会った頃から時は移ろいすっかり秋めいた日に、ジョゼの希望で二人は動物園に行きます。悠々と歩く虎を見て「夢に出そうなくらい怖い」というジョゼに「じゃあなんで来たんだ」と呆れる恒夫。それに対しジョゼは「縋れるやろ」と返します。ジョゼは震えながら、横の恒夫の腕に自分の腕を絡めながら、それでもしっかりと虎を見据えていました。虎を通して劇中でチヅが何度も言う「外には獣ばっかり」の獣を見ていたジョゼは、ここで外の世界から逃げない事を決意します。素直に恒夫に弱音を吐きながらも、きちんと世界と立ち向かおうとするジョゼ、ダンブルドアも言ってましたね「立ち向かう勇気を讃えてグリフィンドールに5点。

 その帰り(別日か?)に川沿いの並木道を歩きながら、ジョゼが「ここは春になったら桜のトンネルみたいになる」と言います。「それは見てみたいな」とかなんとか返す恒夫に「来年の春になったら見せたる」と笑顔で言うジョゼを見ながら、自分は来年の3月にメキシコに留学に行くのだと伝えられない恒夫は曖昧な返事を返します。そういうの絶対後で燃えるからやめた方がいいよ、グリフィンドールから15点減点。


 急転直下、ジョゼの祖母チヅが死にます。どうやら、前々から心臓が悪かったようでした。唐突だと思った?映画でも唐突なんだよ!

 諸々の後片づけが終わり、チヅの遺影の前で途方に暮れるジョゼに対し、恒夫は「俺に手伝える事があったら何でも言ってくれ」と伝えます。しかし、ジョゼは「おばあちゃんが少しお金を遺してくれてたの。でも、もう貴方に払えるお金はないから、これで終わり」と、呟くように告げます。それを聞いてジョゼの助けになりたいという気持ちと、自分には差し出がましいのではないかという葛藤が、襖の敷居のあっちとこっちにいるジョゼと恒夫、それを乗り越えようと一度は動くものの、元に戻る足に表されています。男気がないですね、グリフィンドールから10点減点。

 再びジョゼから距離を置かされた恒夫ですが、その様子は明らかに気もそぞろで、バイト先の仲間たちから見ても不自然なものでした。その原因がジョゼにある事を知った同僚(女、恒夫が好き、青森出身、負けヒロイン)はジョゼの元を訪れ「恒夫さんを解放してあげてください」と告げます。突然の言葉に

 困惑するジョゼでしたが、恒夫の様子が最近おかしいこと、3月には恒夫は自身の夢の為にメキシコの大学に留学することが決まっていること、そのために彼が多大な努力をしてきたことを聞かされ、自身が彼を縛っていることに気付きます。

 心配になりジョゼの家を訪れた恒夫は、大切にしていた画材やインテリアが無くなった室内を見て驚きます。一体どうしたのか、と問い詰める恒夫に、ジョゼはただ、もう一度海に行こうと誘います(この辺曖昧)

 冬の暗く重い雲の下、海を眺めながら、ジョゼは事務の仕事を始めること、絵を描くことはもう止めたので、画材道具は全て処分した事を恒夫に伝えます。ジョゼが絵で仕事をしたいと思っていた事を知っている恒夫は、どうしてと食い下がりますが、ジョゼは「手を伸ばして、それでダメだったらどうするの」と拒絶、「健常者にはわからん」と言い残し、独り立ち去ります。呆然と立ち尽くす恒夫を、突然の大雨が濡らしていきます。

 暫し立ち尽くし、それでもジョゼを追いかけた恒夫の目に車いすが段差にひっかかり動けなくなっているジョゼが飛び込んできました。急いで駆け寄ろうとする恒夫の前を1台のバイクが高速で駆け抜けます。煽られ思わずふらついた恒夫をめがけ、今度はジョゼを避けようとしてスリップした乗用車が追突、恒夫は空を舞いアスファルトに叩きつけられるとそのまま動かなくなってしまいました。

 そんな姿を見て、思わず駆け寄ろうとし、顔から地面に転げながらもジョゼは恒夫の名を呼び続けます。それは、今まで呼んでいた「管理人」という呼び名ではなく「恒夫」と初めてジョゼが呼んだ瞬間でした。

 今までの呼び方から本心が吐露した時、何物も纏わない本名呼びになる展開、王道のもの。グリフィンドールに50点。


 通りがかりの通行人の通報で緊急搬送された恒夫はなんとか一命を取り留めたものの、恒夫は左手、右足に大怪我を負い、今後元のようには歩いたり出来ないかもしれない事を医師から伝えられます。また、メキシコの留学予定先からもそんな状態では、留学の話も一度白紙にしたいと告げられてしまい、恒夫の心はひどく荒んでしまいます。

 お見舞いに来た同僚♀はそんな恒夫を見て、「気分転換しませんか?」と言い、恒夫を連れ出すと病院の中庭で告白し、恒夫の心が自分にない事を知っているので「返事はいいです」といい、「そろそろ戻りましょうか」と還っていきます。え?何しに来たん?

 

 ジョゼは恒夫の事故を引きずり、自室に引きこもった生活をしていました。そこに、お見舞いから帰った同僚♀が訪れます。「私の方が先輩の良い所いっぱい知ってる。100個でも200個でも言える」という彼女に対し、ジョゼは「それでも、気持ちの大きさは私が一番だ」と叫び返します。初めてジョゼが明確な恋心を他人に口に出した瞬間です。

 女の子が恋心を叫ぶ展開は大好物なので、グリフィンドールに100点あげちゃいます。


「だったらあんたが先輩をなんとかしてみなさいよ」と炊きつけられたジョゼは恒夫を救う為に奔走します。彼女は、友人にストーリーを相談し、日夜紙と向き合い、全てを手作りした一冊の絵本を生み出しました。

 ある日、同僚に半ば無理やり病院から連れ出された恒夫が連れていかれたは、いつかジョゼと訪れた図書館でした。中に入ると、読み聞かせを待つ子供たちの輪の中心に、ジョゼがいました。ジョゼは恒夫の姿を認めると、緊張でたどたどしくなりながらも、絵本の朗読を始めました。


 その内容を聞いた恒夫は感動し、自身の夢ややる気といったものを取り戻します(言葉にするとメチャクチャ薄いんですけど、いい話です)

 リハビリに励む恒夫、それを見守るジョゼ達。辛く長い日々が続きましたが、恒夫はついにリハビリを完遂し、退院の日がやってきました。

 恒夫は退院の日、ジョゼに迎えに来て欲しいと照れながら伝えますが、ジョゼはそれに対し「ありがとう」とだけ返します。


 退院当日、病院のロビーでジョゼを待つ恒夫ですが、待てど暮らせどジョゼはやってきません。電話をかけてみても繋がらず、仕方なく恒夫は松葉杖を突きながらジョゼの家へ向かいました。そこで恒夫が見たものは綺麗に片付けられた部屋と、荷造りされた荷物でした。不安を感じ、あちこちを探し回る恒夫でしたが、一向にジョゼは見つかりません。

 駅員の証言から、ジョゼが動物園に向かった事を知った恒夫は急いで虎の檻の前へ向かいます。しかし、そこにはジョゼの姿はなく、途方に暮れてしまいます。すると、よく見れば朝から降り出した雪に、車いすの轍が残っていました。恒夫はそれを追い、動物園から街中へと松葉杖で進んでいきます。しかし、「この先でジョゼに会える」という恒夫の期待は、人込みですっかり溶けてしまった雪によって、脆くも潰える事となりました。

 正直ここまでドストレートだったので、ここで会えないとは思ってなかった。意外性〇。グリフィンドールに10点。


 一人で家に帰るジョゼ、坂道を下っていると、犬を追いかけた男性にぶつかられてしまいます。暴走する車いす、勢いを増す速度、下り道の先のT字路には車が過ぎ去っていきます。もうだめだ、と目を瞑ったジョゼの耳に、恒夫が自分を呼ぶ声が聞こえました。

 そこには、二人が出会った日のように、投げ出されたジョゼをしっかりと抱き留め、勢いが殺せずそのまま転んでしまう恒夫の姿がありました。ジョゼは少し信じられないような顔をして、直ぐに恒夫の怪我を気遣います。そんなジョゼに恒夫はずっと探してたこと、探してる間に気付いたら走り出してたことを伝えます。ジョゼは自分は事務の仕事をしながら絵本作家を目指そうと思った事、その為に独り立ちするつもりであることを伝えます。引き留めようとする恒夫はジュゼの為じゃなく、自分がジュゼと居たいのだと、夢を叶えにメキシコに行く事は諦めていないが、それでもジュゼと居たいのだ。好きだから、と伝えます。突然の告白を受けながらも、自身の気持ちに気付いていたジョゼはそれを伝え、二人は幸せなキスをして終了。グリフィンドールに1000000000000000点!!!!!!これにはダンブルドアもにっこり。



というのがざっくりしたあらすじです。あらすじというか、時系列の羅列というか。

 個人的な好き好きポイントなんですけど、都合3回二人は電車に乗るシーンがあるんですが、そのそれぞれで二人の関係性と、ジョゼの視線が違うのが印象的でした。

 1回目、初めて二人で海に行った日は、初めて見る光景ばかりでジョゼは目まぐるしく視線を変え、窓の外の景色や飛行機に目を奪われていました。

 2回目は二人で外出を重ねる際、ジョゼの視線は横に立つ恒夫に向いており、やや自分の好意に気付き始めている印象でした。

 3回目に乗った時、二人で冬の海に向かう時は、ジョゼはしっかりと窓の外を見据え、視線を動かさず、彼女の決意を伺わせるものでした。


 他には、恒夫が自分を迎えに来る際、それまでとは異なり化粧台の前に座り髪を梳かし、綺麗に結んで準備をするジョゼの姿も激萌えでしたし、やっぱり何といっても二人で海で踊るように戯れる姿がとても印象的でした。

 最後のキスシーンも、最初に恒夫からするときは目を見開いていたジョゼが、次に自分からするときはしっかり腕を背中に回してたり、ジョゼが意外と年上だったりで色々と”萌え”ポイントがあります。





まぁ、結局なんだかんだ言ったところで癖っ毛で目つき悪くて口も悪い、実年齢と体験が釣り合ってない筋肉を使わないせいで貧弱な体の小柄美少女が好きなだけって言われたらそうなんですけど……これジョゼが花沢さんなら危なかったですね。

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