特に高みは目指さないけど読みは覚えたいと思っているあなたへ③読む時の立ち振る舞い

前回は「読みのテンポの取り方」について説明しました。今回は「読手から見る1試合の流れや立ち振る舞い」についてお話していきたいと思います。

時々、読手をやることに躊躇してる方から聞かれるのが「試合の場に立った時に何をどうしていいのか分からない」という言葉です。何をどうするとは「読み方が分からない」という意味もあるのでしょうが、中には「立ち振る舞いが分からない」という方もいらっしゃるようです。
何をやっているのか分からないから自分がやるのが怖い、というのは確かにあるでしょうね。分からない自分がやっていいの!?と思いながらみんなの前に立つのはとても勇気が要る事でしょう。

さて、読手は選手たちが札を並べ、暗記をしている間に何をしているのでしょうか。まずザックリと書いていきます。

①用意された読み札が100枚あるか数える
②数えた読み札を、良く切ってから読唱箱に入れる
③暗記時間終了の5分前くらいまでには読唱席に戻ってくる
④試合開始のコールがあり、選手たちが読手に礼をしたら、読手も会場全体に向けて一礼する
⑤1首目を読唱箱から出して伏せておきつつ、序歌の上の句~下の句を読み上げる
⑥一呼吸置いて、もう一度序歌の下の句を読み、1秒の間の後に1首の上の句を読み、一度読みを止める
⑦今読んだ札を別の箱に置いておく
⑧手を挙げている人がいる間は読まずに待つ。その間に2首目を伏せて準備しておく
⑨場が落ち着いたら、別の箱に置いた先ほどの歌(ここでは1首目)の下の句を読み、1秒の間を置いて2首目の上の句を読み(以下、くり返す)
⑩上の句を読み終えた後、すべての組の試合に決着がついたら、選手たちが試合終了しているのを確認してから下の句を読み上げ、会場全体に一礼する
⑪読唱を終えたら、読み札が100枚あるかよく数えて、箱に戻す

大まかに言うとこんな感じです。
一見複雑そうに見えますが、ものすごくザックリ言えば「枚数合ってるか数えて、読んで、終わったら枚数もう一回確認する」という事です。

読手は、基本的に立ちます。
姿勢よく、足は肩幅程度に開いて立ち、読んでいる間は真っすぐ前を向き、札を正面に出して読みます。試合が終わるまで読手の立ち位置は変えず1試合の間、ずっと同じ場所に立ち続けていなければなりません。読手とは結構立ち仕事なのです(苦笑)

試合の流れは何となく分かるだろうとは思いますが、恐らく一番不安に思うのは立ち振る舞いの方であろうと思います。
初めて試合で読む方が、ある意味一番不安そうにしているのは「前の読み札と次の読み札を交換するタイミングが分からない」という部分。間違うと前の読み札をもう一回読んでしまう事件なんかを起こしがちなので、この辺をどうするかが悩むところですよね。

読みをする時には、出来れば台などが欲しいです。椅子とかでも構いません。読唱台代わりになりそうなものを前に置いておきたいです。
こうしなさいという明確な決まりが示されてるわけじゃないので皆さん色々なやり方をしてらっしゃることと思うのですが、あくまで私流なやり方としては、

これから読む札は左側
読み終わった札は右側

に置くようにしています。
これは、名人・クイーン戦での読唱箱が正面に置いてあって、上の句を読み終えたら読み札を読手の右手側の透明なケースに入れているから。専任読手の右手側(観客から見たら向かって左側)には立会人がいるので、そうしているようです。
なので、何となくそれに倣って「読み終わった札は自分の右手側」に置いてます。置く位置を決めていれば、どっちが先に読んだかを確認しやすいですよね。

左側に置いて(積んで)いる読み札は、当然ですが伏せて置いておきます。
見えるように置いておくと、選手に見られてしまう可能性があるので必ず伏せます。
読唱箱がある場合は、次の読み札は選手が並べたり何かしてる間に引き、読唱箱の上に伏せて置いています。今の出札の読み札は上の句が終わったら右側に表を向けて置いて(積んで)おくので、下の句をよく確認しておくと良いでしょう。

問題は、次の読み札に切り替えるタイミングです。
場が収まり、今の出札の下の句を読んでいくわけですが、この時点で次の読み札を手に持ちます。しかし最初から前に出していると、うっかり次の出札の下の句から読む事件を起こしかねないので、下の句を読んでいる途中で静かに目の前に出していくことをおススメします。
慣れてない方で、よく下の句が終わって1秒の間の時にバッと次の読み札を出しちゃう方がいるのですが、「余韻~間」の時間帯は、読手も静止した状態で読まなければなりません。動いていると、選手の集中の妨げになるからです。なので、下の句の途中でスッ・・・と前に出して読むと良いでしょう。札を出していくタイミングをあえて文字で表記してみると

(例)
わが‐ころもではー(スッ・・・と次の札を出し始める)
つゆにぬれー(この辺までの間に出して静止してるようにする)
つつ―――――――――――

みたいな感じでしょうか。( )内は読みをしながら行う動作なので、ここで読みを止めたりしないでくださいね!
この辺のタイミングで出していく理由としては「この辺りまで読んだら残りの部分はそんな間違わないだろ」くらいのものなのですが、たまに「あれ?この歌の最後、『けり』だっけ?『ける』だっけ?」などと不安に駆られる時があるので、そういう場合は目線だけ右側に積んだ読み札を確認しましょう。一番上に表を向けて置いてあるのが、今、口に出して読んでいる下の句です。適当に読むと余韻で失敗しかねないので、不安な時は素直に確認です。

試合の前と後には、必ず読み札の枚数を確認してください。選手が取り札を確認するのと同じです。読手は別に払い飛ばしたりしてるわけではありませんが、気付かずに落としたりしてる可能性もあるかもしれません。また、主催する側が用意した札が何らかの事情で足りないなんて事もあるかもしれません。試合開始前は必要なだけの枚数があるかどうか、試合が終わった後は紛失がないか、念のため確認しましょう。

最後に、試合開始前に100枚数えた時に「良く切って読唱箱に入れる」とはどうやってやるのか!?という大変素朴な疑問について。多分、これも謎に思ってる人は多いと思います。
トランプのようにシャッシャとシャッフル出来たらかっこいいのですけど、何しろ札が厚いのであんな風にキレイにシャッフルできる感じではありません。また、大会なんかでは特に、そういう派手な動作は選手の暗記の妨げになってしまいますので、出来れば静かに混ぜたい所です。はたして読手さんたちはどうやっているのでしょう。
これは別に誰かに教わったとかではなく、他の読手さんがやっているのを見て真似ているだけなのであくまでも我流なやり方なのですが、先述のように必要な枚数がきちんと用意されているあるかを数える時に、4つくらいの山を作って数えるようにしています。具体的には・・・
山1  山2  山3  山4
1  2  3  4
5  6  7  8
9  10  11  12
13  14  15  16
17  18  19  20

・・・
という感じで重ねて行くわけです。こうすると1枚1枚がくっついたままという事はなくなりますので、結果としてシャッフルすることができますし、同時に枚数の確認もできます。
100枚を確認しながら山を4つ作っていけば、自動的に25枚ずつの束になります。あとはこれを、その日の気分でランダムに重ねる(山4→山1→山3→山2とか)と、少なくとも前に読まれた順番と重なることはなくなります。
他にもやり方があるかもしれませんが、私のやり方はこういう形です。とりあえずやってみたい方は、真似してみてください。

最後に、やり慣れてない方がよく迷う「礼のタイミング」
試合開始時は、選手の皆さんがこちらに向かって礼をしてくれるのに合わせて、こちらも一礼します。
どうすればいいか分からないであろう思われるのは試合中。選手たちは試合が終われば選手同士・審判・読手にそれぞれ礼をします。ここで読手はどうしたらいいの?と迷う方がいらっしゃるかと思いますが、結論から言うと読手は1組1組に対しては礼を返しません(ごめんね)
というか、これ全国大会とか、100組200組の選手たちに全部頭下げていると頭がフラフラになっちゃいますので(苦笑)ここは、全ての読唱を終えてから会場全体に対して一礼をすることになっています。1組1組に返してあげられなくて申し訳ないのですが、その代わりに最後の一礼は心を込めて礼をします!しましょう!

ここまでの作法を覚えてやれれば、読手としての仕事は普通にこなせます。読みを任された時に慌てることが無いよう、全て出なくても良いので頭の片隅に入れておいてくださると良いかなと思います。

さて、次回は「よくある読み間違い」について書いていきたいと思います。
ご覧頂き、ありがとうございます。

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