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金魚すくいの水槽に顔から落ちたことありますか?

 私はあります。

まわりの人も、金魚すくいの水槽に落ちる人間なんて初めて見たと思うので驚いていましたが、自分が1番びっくりしました。一瞬にして、水中へ顔からダイブしていました。

 金魚すくいは夏祭りの出店の中で1番好きと言っても過言ではありません。物心ついた頃からお祭りといえば金魚すくい。夏の楽しみになっていました。

水槽で泳ぐ金魚は、小さくて鱗がキラキラしていて可愛いのです。たまに、誰があんなに大きな金魚をすくえるんだろうというサイズの金魚も交ざっていますが、それはそれでまた面白いのです。

(大人になってから一度、そういう金魚をすくえたことがあります。他のお客さんが「へぇ、あぁいう大きい金魚すくう人ってほんとにいるんだ……。」みたいな目をしていました。ちょっと引かれていたのでしょうか。)

とにかく金魚すくいが好きなのです。

あと、デメキンはすくいやすいけれど、赤い金魚よりも早く弱ってしまう(単に私の飼育の仕方の問題?)なんてことも経験から学びました。

よくテレビなどで金魚すくいのプロの方がものすごい数をすくっている様子を目にすることがありますが、とても羨ましいです。何度コツを学んでも、私は全然上手くすくえません。

でも出店のおじさんはすくえなくても2、3匹必ず袋に入れて持たせてくれます。そこがまた、いいのです。賑やかな音からだんだん遠ざっていく、お祭りの帰り道。金魚の入ったビニール袋をぶら下げながら歩く、その時間も好きです。

 そんな私が、3〜4匹の金魚を自力ですくえたことがありました。あれは確か、小学生の時です。

ある年の夏祭り最終日。その日はかつてないほど調子が良く、金魚を次々にすくうことができました。私はウハウハしながら夢中で金魚を追っていました。

しかし、あまりにも夢中になり過ぎて体勢を崩し、頭から水槽に突っ込んでしまったのです。

金魚たちのいる水の中の世界へ、ジャボンッ。

私はあまりに突然の出来事に、一瞬何が起きたのか分かりませんでした。いきなり視界が水の中ですよ? 水槽に落ちたのだ、と理解するまでに2秒ほどかかったように思います。

浴衣に下駄という大好きなスタイル。それがいけなかったようです。下駄を履いているときに水面に顔を近づけ過ぎるのはバランスを崩しやすく危険、という教訓を得ました。

自分でも、「こんな人いるんだ……。」と恥ずかしくなりました。もちろん、ウハウハしながらすくった金魚は全て逃げてしまいました。

まわりにいた優しいお客さんが、「金魚あげようか?」と自分がすくった金魚を私に分けようとしてくださいました。

でもその時の私はもうすっかり戦意も喪失し、恥ずかしいやら悲しいやら悔しいやら、泣くのをこらえるので精一杯。その方からの善意もお断りし、泣きながら家族と家に帰りました。

それ以来、浴衣を着て金魚すくいをするときには家族に後ろから浴衣の帯を持っていてもらうようにしました。水槽にもう落ちないように。

 ただ、こんな思い出があっても、私は金魚すくいが大好きなのです。

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