全隊に告ぐ。本作戦は失敗。繰り返す、本作戦は失敗。

本日12月10日木曜日は私が1ヶ月近く前より計画していたある作戦が実行されるはずの日であった。いや正確には計画自体は滞りなく遂行された。しかしそれにより得“る”はずであった‘’目的のもの”が私の手中に収まることはなかった。しかし本作戦における目的物は2つも想定されていたのに1つとして得られないとは、これを「二兎を追う者は一兎をも得ず」と称さずして他に何があろう。
このことわざを深い意図なく出して思ったが、今日の私はまさしく兎を追う1人の狩人だった。それも汚れの一点もない無垢な白い毛で全身を包んだ愛らしい2匹の兎、猟銃で頭を撃ち抜こうなどとは毛の先ほども思っていない。ただ、ただその傍に屈んで彼らを眺め、時折輪の中に加えてくれれば充分であった。満足であった。幸せであった。なのにまさかこの日に限って別室での仕事を任されるとは、それも別フロアで、5時間立ちっぱなしの作業を言い渡されるとは、昨日の私でも分からなかったのだ、1ヶ月前の私は思ってもみなかっただろう。

本日のバイトを終え帰宅した私には、5時間の直立姿勢に疲弊しきった2本の足と、姿勢が悪かったのかリュックを背負って一日遠出した後のような痛みを湛える両肩だけが残された。気を紛らわせられるほどの作業がある訳でもなく、ただ問題を解く子どもたちを見守るだけの業務は、自分が高校生だった頃に思っていたほど身体的疲労は少なくはなく、また今日の自分には戒め的な意味すら感じられた。「一兎すら手が届かぬものを。自惚れも大概にしろ」と。
まだ痛みが残る足先に精一杯“伸び”をさせ、ふくらはぎはおよそ両手だけでは力が足りぬと、もう片方の膝の上に乗せぐりぐりと凝りをほぐす。
この痛みが引く頃には今日の失敗もきれいさっぱり忘れているだろうか。
目が合って早口になってしまった自分も
注意していた引き笑いをやってしまった自分も
帰りのエレベーターの中で、あの人に話しかけられなかった今日の自分も。

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