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はやみねかおるの色

 どうも、おはこんばんにちは。甘味処の佐伯といいます。
 さて、はじめに断っておきます。ここから書くことはすべて私の妄想であり、根拠希薄な一種の仮説であります。うーん、仮説というよりやっぱり妄想です。ですので、生ぬるい目で見てやってください。

 それでは、れっつらごー。

 ああ、そういえばタイトルコールを忘れてました。
はやみねかおるの色」はじまります。


色眼鏡で「はやみねかおる」を見る

 ひとつめの主題として、はやみねかおる(敬称略)を総括的に理解したいという欲求がありました。はやみねかおるという作家と、その作品群の総合的な理解です。そのための明確かつ簡潔な要素として、私は「色」を選びました。「黒はやみね」、「赤い夢」等々、掘り下げていったら面白いに違いない!


勇嶺薫という存在

 はやみねかおるのまたの名、むしろ本来の姿ではないかという作家の名が「勇嶺薫」(読みは同じ、敬称略)です。ご本人曰く「黒はやみね」ですね。ご存知の方も多いと思いますが、そもそもはやみねかおるというペンネームの由来は「ゆうれいがおる (幽霊がいる)」の漢字変換である「勇嶺薫」とのことです。
 ご本人は絆創膏を左頬に貼っているかどうかで、作家はやみねかおるとそうでない普段の自分とを区別しているそうです。その区別は明快です。一方で、白はやみねと黒はやみねの区別は、名前以外はあまり明確でない気がします。


「虹北」という街

 ご存知、虹北商店街や虹北堂、虹北学園のある街の名です。これは非常にわかりやすく、虹というからにはさまざまな色が含まれることを意味します。ある種のごった煮です。重要な点は虹の色に「赤」が含まれることと、「黒」は含まれていないことです。
 第一に虹とはいわゆるスペクトルですから、シンプルにいえば「分解された可視光」です。つまり虹は光のことであり、目に見えるもののことです。分光しない段階で我々の目には白色に見えますので、虹=白=目に見えるもの、と考えられます。
 全体の世界観を白はやみねと黒はやみねの混同と定義するならば、虹とは光、白はやみねの世界観を指すといってよいでしょう。つまり「虹北」は白はやみねの世界を表していたわけです。
 ……と、そこまで考えたときに、なんだか嫌な予感がしました。それは、あの街はそれほど単純な世界構造なのかという疑問です。いわゆる安全安心の白はやみね世界で帰結するのかといえば、そんな気がしなかったのです。
ぜったいに考えすぎですが、考えすぎることが妄想の本質ですので、まぁ気長におつき合いください。そう、虹北という名前を考えるときに、虹の方だけ理解して満足できるはずがないのです。


「北」とは何か

 結論からいいますと北=黒でした。いわゆる四象に基づいた結論で、北方玄武を象徴する色が黒というわけです。五行思想も同様です。すなわち「虹北」とは「白黒」と解釈することができました。陰と陽、すなわち全です。
 ちょっと脱線しますが、このことに気がついたとき、さらに嫌な予感がしました。「北」にまつわるフレーズをどっかで見た気がしたのです。すぐに思い出しましたとも。R・RPGを創らんとする、あの中学生コンビですね。「南北」……無視できない要素ですので、解説します。


惡紫之奪朱也

 前項の「北=黒」理論をそのまま応用して「南=朱 (赤)」とします。竜王創也=赤です。これを念頭に置いてください。
「虹北という街」にて虹を総体で白と定義しましたが、やはりスペクトルで見れば各々の色が存在しています。ただその解説も正確ではなく、非常に滑らかなグラデーションで色と色がつながっており、かつ不可視光線とも明確な境界なく一体になっています。ここで問題なのは、可視光=白はやみね世界と、不可視光線=黒はやみね世界の境界がどうなっているかです。明確な境界はないといいましたが、その周辺を探ることはできます。
 スペクトルを見れば一目瞭然ですが、黒に近づけば近づくほど「紫」もしくは「赤」になります。逆説的に、我々の見ている世界の中で紫と赤は、見えない世界との境界ということができそうです。夜と日中の境である朝や夕日は赤いですし、そういえば赤い鳥居をよく見かけます。紫は高貴な色、つまり人間社会での関係を明確にする色です。通俗的な社会におけるある種の境界とも捉えられますね。もっともらしく「紫の現」とでも呼んでおきます。あとで「人形は笑わない」を読み返したいですね(ほとんど覚えてないので)。
 ここでようやく論語の「子曰、惡紫之奪朱也」の意味がわかります。「間色である紫が正色である朱 (赤)の地位を奪っているのが憎い」といった意味ですが、はやみねかおるの思想そのものといって差し支えないでしょう。紫が現の象徴であるなら赤は夢の象徴で、その先には黒の世界が待ち構えているというわけです。


赤い夢とは

 非常にめんどくさいのが「赤」の理解です。はやみねかおるを色で紐解こうとするなら無視できない、あのワードです。みなさんお待ちかねの「赤い夢」ですね。
 みなさんは「赤い夢」をどのようなものと理解しているでしょうか。はやみねかおる作品そのもの、はやみねかおるが見ているもの、私たちはやみねかおるを通して見ている世界……などなど。あるいは謎のこととか、ワクワクするものとか。一種のバズワードとして、雰囲気だけでなんとなく捉えている人が多いのかもしれません。
 前項にて「赤」は夢の象徴であり、何らかの境界を表すといいました。つまり佐伯の定義する「赤い夢」とはいくつかの状態のことであり、実のところ私たちはこれらを混同しているのではないか……というのが、この仮説におけるふたつめの主題です。はー長かった。


①赤い夢の第一段階──白の発見

 いつも心に好奇心(ミステリー)! というタイトルがあって、まさにそのとおりです。好奇心は謎や不思議を発見するために必要で、逆にいえば好奇心さえあれば謎を発見できるのです。これが赤い夢の第一段階で、これを読者に置き換えるなら「本を手に取ったとき」かもしれません。もしくは本の面白さに気がついた瞬間。それは光を見たときであり、さまざまな色を見つけたときでもあります。


②赤い夢の第二段階──謎解きは赤

 発見した謎や不思議といった事件が、論理的に理解もしくは感情的に納得できる形で解決される段階です。推理小説の「謎解き」にあたります。謎解きというのは筋道立てて整理することを指し、ものごとの関係性=境界を明確にすることが謎解きの本質です。


③赤い夢の第三段階──黒のまどろみ

 第二段階で示された「謎解き」が上位概念の登場によって覆される、いわゆる「どんでん返し」です。ミステリ上のどんでん返しというよりは、ミステリの謎解きに不可欠な合理性が失われるという意味です。つまり、いちどは謎解きが行われる必要があります。

 この③の段階は不合理な状態であり、言葉では説明できず目にも見えないという、とても精神的に不安定な状態となります。めまいとかまどろみの状態と言い換えることができ、これはもはや「ホラー」の領域です。
 スペクトルの解説で話したとおり黒と赤の境界は曖昧ですから、どこからがホラーでどこまでがミステリかという議論にあまり意味はありません。あえていうなら、はやみねかおるがどちらを比率の高い主題として選択しているかです。


作家性

 白はやみねの最大の謎解きといえば、世界の終わりについてです。正確には、各作品の世界観とプロットにおける関係性の構造を明確に説明するのかという点ですね。もうひとつの謎は、どの色で終わりを迎えるのかという点につきます。つまり黒はやみねが出てくるのかどうか。そこがはやみねかおるの作家性の謎であり、興味深いところです。
 ここまで書いて、なんか忘れてるなーと思ったんですが、思い出しました。「北」の説明のときに黒=内藤内人とわかったわけですが、てえことは内人って創也の上位概念? だとか、はやみねかおる=内藤内人? という派生説が囁かれそうです。私はそうだと思ってます。(はやみねかおるの内にいる存在=内人=黒、勝手に現れた名探偵も黒ですから)
「都会のトム&ソーヤ」は、要素と要素が対比として明確になり(謎解き)、それらの関係性をひとつの要素として新たな要素と対比する(まどろみの後再び謎解き)……という、それ自体がフラクタルの構造になっています。このネスティング(入れ子)のような状態は、はやみねかおるの世界観そのものと合致します。実際はさらに複雑な関係性を持っているでしょうが、「トムソ」を何らかの指標として世界観を想像すると、新たな発見があるかもしれません。実際、物語内での対比構造が「現実と非現実」にまで及んでいるわけですから、世界の終わりというやつはその構造の限界点のこと……と考えるのが自然です。


おまけ 色を持たぬ怪盗

 固有色を持たない存在として、銀髪の怪盗クイーンという特殊な登場人物がいます。正直深く考えてないですが、全てを兼ね備えた人智を超えた存在は、鏡のように変装し人間・社会を映し出す……その髪は紫がかっている、という察しで合ってる気がします。その怪盗は漆黒の飛行船に住み続け、月=死を背負ってます。


おわりに

 そうとう包括的かつ乱暴にまとめてしまったので、粗しかないです。仮に「はやみねかおるの色」説が正しかったとしても例外があると言われてしまえばそれまでなので、あまり考えないことにします。
 繰り返しますが、これは私の妄想ですので、悪しからず。

 それでは。ノシ

2021/08/27 追記

 ここまでの妄想はトムソ15巻以降未読、レムスリ未読、ケニア未読でお送りしています。なので、今読むと情報がアップデートされていたりして、「ん?」となることもありますね。まあいいや。

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