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恋をすると私の中で君は神様になる

大丈夫になれる?って聞かれたとして、もう大丈夫ではあるよって答えられる。

夏というだけでエモくていいのだろうか。ううん。そんなものじゃない。もし君が、例えば君が、泣いた私のことさえ想像出来ないのだとしたら、多分、それは、俗にいう、人でなしとか、そういう類の人間だから、ねえ、早く私に関わらない世界で生きて。直接的にも、間接的にも。私に関わらない世界の方で息をして、君なりに泣いたり、笑ったり、喜んだり、悲しんだりすることは許してあげようかな。そこまでは悪魔じゃない。じゃないから。

ずっと君次第だと思っていた。この恋の結末。恋愛をすると、それはある種の信仰みたいになって、私の中で君は神様になる。ねえ、神様、結末はどうしますか?終わりにしますか?まだ続けますか?今、どういう言葉を言いますか?それでどういう展開を作っていって、いつ終わりにしますか?なるほどなるほど。未来だけ想定させない。なるほどなるほど。シナリオライター。ねえ、大事なのはさ、嘘でもなんでも、ロマンチックを供給し続けることと、非日常ぶちかまして、漫画とかドラマとかにすることだよって、言わないけど、呟く。私、本当は、メンヘラの世界観とか、女の子の持つ毒とか、可愛さへの執着とか、この世の終わりみたいな性格とか、でも憎めないみたいな、そういうのが好きなんだよね。だから、君のこともギリ許せる。私にこういう文章を書かせてしまうくらいの恋愛。馬鹿みたいって笑われる。笑われてる。君の作り出すシナリオ。

あー、でももううんざり。

君が神様だと思っていたから泣いた。終わりだと思った。明日なんて来なくていいって馬鹿みたいだけど本気で思ったし、帰りの飛行機が到着しなくて、私は死ぬ予定だった。そのくらいメンタルにきた。きたんだよ。知らねーだろうな。どうでもいいんだろうな。馬鹿らし。あー、馬鹿らし。ゴミ屑だらけの部屋で、布団の上しか居場所がなくなって、永遠に充電されるスマホだけが光っていて、だから部屋に電気なんていらなくて、私は永遠に充電される四角い箱をずっと握りしめていて、表面を撫でて、指先で支配する。友だちに電話する。心を救う。日記を書く。言葉にする。面白い動画を見る。気を紛らわす。音楽を聴く。気持ちに浸る。君の家で流れていた動画。もはやそれは雑音。君に電話する。終わりにする。

終わりにする。

結局君は神様じゃなかった。確かめなきゃって動き出したのは私だ。私なんだ。傷つくこともわかっていて、でもそうしないと終われないことも分かっていて、それでも私はゆるゆる続く大きな絶望と小さな希望を許せなくなっていて、それで動いたのは私。シナリオを作っているのは私。君は神様なんかじゃない。君に関わっている間、わたしは全然救われなかったし、全然幸せになれなかった。君は神様なんかじゃない。君みたいにだらだらゆるゆる続く、ぬるま湯みたいな幸せが好きで、それを終わらせるときに起こる寂しさや絶望や喪失感を想像できないような人間は、神様になんてなれない。私は、ゆるい幸せはさよならなんだということをちゃんと分かっていて、だから私が終わらせた。私は神様になれる。なれる。

バイトみたいな仕事とか、誰かからの適当な愛とか、責任のない関係とか、そういうのはめんどくさくなくていい。みんな出来ればそのくらいの感じで生きていたいんだと思う。深入りせずに、楽しいとこだけ味って、適当に愛して、愛されて、幸せだって思うけど、終わりが怖いから、深入りはしない。これは適当で責任のない愛だって、そういうことにする。そういうのが一番幸せなんだと思う。ねえ、それで生きていけると思ってたでしょ。でもそういうのは無理なんだよ。ゆるい幸せはさよならなんだ。ぬるま湯。温室デイズ。ゆるい幸せ。もうそういうのだけでは生きていけない。絶対に生きていけない。

エアコンが動いてる時の音。開けないカーテン。お酒の入っていた空き缶。知らない土地のゴミ袋。君の町のゴミの捨て方。駅からの道。コンビニの場所。スーパーの場所。消さないテレビ。家具の配置。適当な洗濯の仕方。乾かし方。してない掃除。もう全部知っちゃってるけど、まだ何にも知らなくてよかった。よかった。何にも知られてなくてよかった。

ばいばい。もう会うことはないけど。またね。

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