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質問と答弁の精度~市議の無能か市長の破壊か


はじめに

石丸市長を盲目的に誹謗する勢力による言説に、
「石丸は市議の質問に対し、正面から答弁しないではぐらかすばかり
といったものや、
「石丸は都合が悪くなると、ベテラン議員を叱責し罵声を浴びせる
といったものがあります。

他方で、石丸市長は、市議会の答弁の中で
「質問は具体的に、一問一答でお願いします」
といった趣旨の答弁や、
「質問が抽象的過ぎて答えようがない」
といった趣旨の発言をしています。

そして、「石丸市長が抽象的と捉える質問」と「具体的に質問すべきという忠告」が幾度か繰り返されると、しばしば、市議が感情的になって支離滅裂な発言をし始めたり、場合によっては、市長が市議に対して罵倒するような発言をすることもあります。

確かに、上記の一面を都合良く切り取ると、「市長は答弁をはぐらかした上、気にくわないベテランを罵倒」しており、ひいては議会を破壊した、という評価になるような気にもなりますが、これは、物事の本質を正確に捉えているのでしょうか。

このような問題意識の下、色々考えていきたいと思います。

個人的な見解

まず、長々と説明を行うのに先だって、最初に私なりの結論を簡単に(それでも長いですが)申し上げておきます。

  • 「具体的な一問一答」をすべきであるにも関わらず、一部の議員が「抽象的な質問」に終始しているという市長の指摘は、完全に正しい

  • 実際、「トライアスロン大会参加問題」における山根議員の質問は、本来あるべき「具体的な一問一答」からかけ離れたものであり、市長を追及して牽制を行うという議会の職責を果たせていない。

  • 他方で、清志会の議員を含む他の議員の中には、「具体的な一問一答」を実践している議員もおり、この場合市長を含めた執行部は、丁寧かつ具体的な説明を行っている。結果として、市議会の議事録を読むことで、市が具体的にどのような施策を行い、どのような効果が得られたのかという検証が可能となっている。

  • 以上に鑑みると、失当な質問を繰り返すことで議事のための貴重な時間を空費し、市長を牽制するという職責を果たすことが出来ていないのは、専ら一部の市議(主として山本優、山本数、山根の三議員)の責任であり、「市長が答弁をはぐらかした」という批判は当たらない。

  • なお、罵倒として補足可能な発言がいくつかあったこと自体は否定出来ないが、「バッチを外して出て行け」程度の発言は、罵倒というにはお上品に過ぎる

以下、順番に説明します。

「具体的」な「一問一答」

そもそも、「具体的な一問一答」とは何でしょうか。

これについて、石丸市長は、必ずしも具体的な内容を明らかにはしていませんが、話題となった「トライアスロン大会参加問題」を題材に私が考える「あるべき一問一答」の姿をご説明します。

山根議員の質問の問題点

まず、「トライアスロン大会参加問題」に関して、山根議員が行った質問を見てみましょう。少し長いのですが、山根議員の最初の質問を引用します。

○山根議員
 通告に基づき、大枠1点について質問をいたします。
市長の日々の動向について、中国新聞の市長往来が、「情報提供なし。」となった後、お太助けフォンで、「市長の日々の動向」と題して、 市長の前日の主な活動状況が、翌日に市民に伝えられるようになりました。 また、ホームページには、令和4年6月10日から「これまでの市長の動向」として、各月の市長の動向がまとめて掲載されております。そこに は、執行部の各部局との協議などが細かく載っております。しかし、9 月の大型で動きが遅く、広範囲に強風や記録的な大雨を降らせた台風14 号への市長の動きは、「市長の日々の動向」には見当たりません。
 市長の動きについて、以下2点について伺います。
 まず1点目。この台風14号は、16日には大型で非常に強い勢力となり、 17日には広島地方気象台が「過去に余り例がない勢力」として身の安全を確保する行動を早めに取るように呼びかけていました。市内では、17 日に強風注意報、18日夕刻からは暴風警報、大雨警報が出され、19日には洪水警報が出されました。 この注意報や警報が出された17、18、19日の3日間の「市長の日々の動向」はアップされておりません。市長はこの3日間、どこで、何をし ておられたのかを市長に伺います。

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いかがでしょう。山根議員の質問の趣旨、理解できたでしょうか。

この質問、シンプルにこの一行で良かったのではないでしょうか。

○山根議員
 令和4年9月17、18、19日の3日間、市長はどこで何をしてましたか。

NaPO

山根議員は、結局のところ、大型台風が到来しているのに、休日とは言え千葉に遊びに行くのはけしからんということを追及したかったようです。

ところが、これは、山根議員による後続の質問を見ると初めて理解できることで、当初の質問の時点では、何を問い質したいのか見当がつきません。「けしからん」ということを追及するのであれば、まずは、前提となる事実関係を確認し、ある意味では地雷をばらまく(後に矛盾する発言があれば追及できるようにする)ため、たった一言、この質問をすれば済む話であり、むしろ、開口一番最も重要なことをシンプルに問うべきでしょう。

ちなみに、石丸市長は、冒頭の山根議員の質問に対して、以下のように答弁しています。

○石丸市長
 ちょっと不思議な質問なので、まず前段だけお答えをします。17、18、 19日というのは、土日、祝日の3連休だったんですね。その上でお話をしますと、まず、市長の動向には公務が記載されます。そして公務がない場合、ここはプライベートの時間になりますが、そのプライベートの時間については、何も記載がされません。
 また、掲載される公務に関しても、会議、行事への出席や来客等の面談としています。
 その意味で、台風14号に関しては、9月16日、金曜日、15時15分の臨時幹部会議のみがその関連に当たるので、それだけが市長の動向として掲載をされています。それについては御確認をされてるんじゃないかと思うんですが、そのとおりです。

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どうでしょう。石丸市長は、はぐらかした答弁をしていますか?

もし、質問の内容が、先ほど例示したように

令和4年9月17、18、19日の3日間、市長は何をしてましたか。

NaPO

というシンプルな内容であったとして、石丸市長が

ちょっと不思議な質問なので、まず前段だけお答えをします。17、18、 19日というのは、土日、祝日の3連休だったんですね。その上でお話をしますと、まず、市長の動向には公務が記載されます。そして公務がない場合、ここはプライベートの時間になりますが、そのプライベートの時間については、何も記載がされません。 また、掲載される公務に関しても、会議、行事への出席や来客等の面談としています。 その意味で、台風14号に関しては、9月16日、金曜日、15時15分の臨時幹部会議のみがその関連に当たるので、それだけが市長の動向として掲載をされています。それについては御確認をされてるんじゃないかと思うんですが、そのとおりです。

75頁 https://www.akitakata.jp/akitakata-media/filer_public/22/f5/22f539f4-cf0b-4d9a-bad1-3eaa0d32962e/rei-wa-4nen-dai-4kai-teireikai-_r041212.pdf

と答弁していたとしたら、この答弁は、はぐらかしているどころか、支離滅裂で意味不明なものということになります。

しかしながら、山根議員の質問には以下のような問題があります。

  • 中国新聞の市長往来・お助けフォン・市長の動向への言及:「9月17-19日に何をしていたのか」という質問内容との関連性がよく分からない。市長の立場に立つと、市長往来やお助けフォンにおいて、市長の動向が取り扱われなくなった批判のようにも捉えられるため、そうでないことをどうしても説明したくなる。また、この前置きに対して、答弁が必要なのか、必要だとして何を聞きたいのかがよく分からない。

  • 台風14号・各種注意報や警報への言及:これに言及をしたことにより、質問の趣旨は、「市長が千葉までトライアスロンに出かけた」ということを聞き出したいとも理解出来るし「そもそも市の災害対策として何をしたのか」、市としてすべきことを何もしていなかったのではないか、ということを問い質したいとも理解出来る。つまり、質問の趣旨がいかようにも捉えられる。

  • 最後に9月17-19日どこで何をしていたのかという質問:以上のように、一義的に理解できない前置きが長々となされてしまっているため、この質問が、「休日だけれども執行部としてどのような災害対策を行っていたか」を問い質すものなのか、単に「休日における市長の動向」を問い質すものなのか、趣旨が分からない。

すなわち、石丸市長が冒頭に「ちょっと不思議な質問なので」と発言しているのは、極めて自然な感想であり、石丸市長でなくても(私であったら)、この山根議員の質問に対しては、反問権を少なくとも3回(つまり、上記各点それぞれについて1回)は行使したくなります。

少し長くなりますが、もう少し続けます。

この一つ目の質問の後、山根議員は、次のように質問を続けます。

○山根議員
 市長おっしゃるとおり、16日、15時15分臨時幹部会議はされております。しかしその後、17、18,19、市長は3連休で公務はなかったように言われますけれども、本当に17日、気象台は強風注意報を発表し、18日には、18時31分、気象台が暴風警報発表しております。このとき、暴風警報発令と同時に災害対策本部が設置されております。
 それについて、これは公務、特に災害に対する本部が設置されたことには、その本部長は市長であるはずです。それであるのに、市長がこのときにアップされない、かつ、公務として活動されてないことが、私としてはとても不思議で、何をされてたのかなと、お尋ねしてるわけです。 お答えください。

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この質問も、何を聞きたいのかが非常に曖昧なのですが、

  • 前段において、3連休であったが、強風注意報・暴風警報が発令されていることが言及されており、(トライアスロン云々以前の問題として)そもそも市として行うべき災害対策をしていないことを問題視しているようにも理解できる。

  • 後段において、「公務として活動されていないことが、私としてはとても不思議」なので「何をされていたのかを尋ねている」むね説明しています。ますます、市として、市長として、行うべき対策は何だったのか、それは実際に行われたのか、ということに焦点を当てているように理解出来ます。

というわけで、この山根議員の続けざまの質問も趣旨がよく分からない物になっています。実際、石丸市長は次のように答えています。

○石丸市長
 18日、金曜日の臨時幹部会議において、その3連休台風の対策については、対応方針を定めました。それにのっとって機械的にそれらは実行されてます。
 お太助けフォンの市長メッセージの流れだと思うんですが、あれは金曜日の時点でも収録して、セットしたものです。なので、私がやるべき対応というのは金曜日の時点で完了してます。

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いかがでしょうか。

石丸市長は、はぐらかした答弁をしているでしょうか。

私にはそう思えません。

むしろ、山根議員が、追及したいことの核心とは無関係な前置きを盛り込んでしまったことで、質問の趣旨がいかようにも解釈できる(=曖昧・不明確)ようになってしまい、追及すべきことが追及できていないようにしかみえません。

肝心の「石丸市長が具体的にどこで何をしていたのか。どのような事実関係に基づき、どのような判断を行い、どのような理由で災害対策上支障は生じないと結論を出したのか、そのような事実関係の把握、判断が妥当であったのか」ということが追及されないまま、放置されてしまっています。

では、どういった質問をすべきだったのでしょうか。

「具体的」な「一問一答」

十分な事実関係が議事録や公表資料などからは明らかではない(何度も言いますが、これは失当な質問を繰り返す山根議員の責任)ので、以下は、あくまで「架空」の答弁ですが、以下のようなやりとりがなされていたらどうだったでしょうか。

○山根議員
 7番、清志会、山根温子でございます。
 2024年9月17日から19日までの市による災害対策と、市長が参加された千葉県九十九里のトライアスロン大会についてお伺いします。
 令和4年9月17、18、19日の3日間、市長は何をしてましたか。
○石丸市長
 ご質問の令和4年9月17、18、19日の3日間は、土日祝日の3連休だったんですね。プライベートの時間であり、お答えするつもりはありません。
○山根議員
 では、石丸市長、令和4年9月16日(金)は何をされていましたか。
○石丸市長
 (反問権)何をというのは具体的にどのようなことを聞いてらっしゃいますでしょうか。
○山根議員
 16日(金)の時点では、週末から週明けにかけて安芸高田市を含む広島県全域に影響がある台風の到来が予想されていましたね。
 これを受けて、市として16日(金)にどのような対策をとられたか、具体的に伺います。
○石丸市長
 16日(金)の臨時幹部会議において、その3連休台風の対策につい ては、対応方針を定めました。それにのっとって機械的にそれらは実行されてます。
○山根議員
 16日(金)の臨時幹部会議では、具体的にどのような対策方針を定めたのですか?
 3連休であり、職員にとっては休日ですが、どのような体制のもと、具体的にどの職員がどのような対応を行うことが定められたのでしょうか。また、市長は、その対応方針において、具体的にどのような役割・責任あるいは行動を行うことが決定されたのでしょうか?
○石丸市長
 18日(日)において災害対策本部を設置し、あらゆる事態を想定しています。状況に応じて、関係幹部や関係職員がその役割分担をしながら、登庁して災害対応をすることを決定しています。
 また、何度も申し上げますが、17日-19日はプライベートの時間ですので、お答えするつもりはありません。
○山根議員
 私が少し調べましたところ、九十九里トライアスロン99Tというウェブサイトにある、Resultのページにおける2022年、オリンピックディスタンス、男子総合、という欄を見ますと、77位のところに、石丸伸二40歳という選手の記録が掲載されています。
 これは市長ではないのですか?
○石丸市長
 はい、それは私です。
○山根議員
 これも私が調べましたところ、この九十九里トライアスロン99Tのオリンピックディスタンスは、スタート時間が9時ちょうどになっていますね。そうすると、市長は少なくとも、18日(日)の9:00の時点で千葉の九十九里にいた。そして、その約2時間50分後である11時50分の時点でも千葉の九十九里にいたことになりますね。お答えください。
○石丸市長
 はい。
○山根議員
 では、市長が千葉県九十九里に向かうため安芸高田市を出発したのはいつですか?
○石丸市長
 何度も言わせないでください。休日のプライベートの時間のことについて具体的にお答えするつもりはありません。
○山根議員
 3連休ではありますが、臨時で職員が役割分担して登庁しているわけですよね。強い台風14号の接近が予想される中で、市及び市長の災害対応の当否を検証するため、大変重要な事実関係だと考えて下ります。もう一度窺います。市長が千葉県九十九里に向かうため安芸高田市を出発したのは何日の何時頃ですか?
○石丸市長
 9月17日(土)の正午前後だったと思います。
○山根議員
 では、千葉九十九里に到着されたのは何日の何時頃ですか?
○石丸市長
 プライベートの時間のことはお答えするつもりはないと申し上げたはずですが。
○山根議員
 何度でも申し上げますが、市及び市長の災害対応の当否の検証のため、この3連休、具体的に市長がどこで何をされていたのか、どのような判断をしてそのような行動にでたのか、極めて重要なことですのでお答えください。
何度でも伺います。
○石丸市長
 九十九里に到着したのは9月17日(土)の22時半頃だったと思います。
○山根議員
 ではどのような交通手段で向かったのですか。
○石丸市長
 安芸高田から広島まで車で向かいました。広島から東京まで新幹線を利用し、そこからは電車を乗り継いで九十九里まで向かいました。
○山根議員
 では、18日(日)についてお伺いします。大会終了後、安芸高田に帰るために千葉九十九里を出発したのは何時頃でしょうか。
○石丸市長
 13時00頃には帰路についていたかと思います。
○山根議員
 では、安芸高田市に到着したのは何時頃ですか?
○石丸市長
 細かくは記憶していませんが、終電には間に合って帰宅しております。
○山根議員
 そして19日(月)は祝日ながら、朝7時に登庁し、22時に帰宅されたということですね。
○石丸市長
 ご理解の通りです。
○山根議員
 それでは、石丸市長がなぜ九十九里に向かったのか伺います。
○石丸市長
 先ほど、ご説明しましたが、16日の時点で臨時幹部会議を開き、そこで全ての事態を想定して、対応方針を決めております。私は、携帯電話で連絡が取れることを前提に、相応の事態があった場合には、携帯電話で指示を出すことになっておりました。
○山根議員
 出発されたのは、9月17日(土)の正午でしたね。出発されるとき、気象予報は確認されましたか。
○石丸市長
 はい。
○山根議員
 それでもなお九十九里に向かっても問題ないと考えたのはなぜですか?
○石丸市長
 当日の気象予報によれば、雨が降り始めるのが18日(日)の21:00過ぎで、19日(月)から本格的に暴風雨になるとの予報でしたので、18日中に戻ってくれば万一の場合にも対応できると考えていました。
○山根議員
 台風の進路、暴風雨の強さ等が予報とは異なる可能性については考えませんでしたか?
○石丸市長
 最近の天気予報というものは、それは大変精度が高いですから。出発当日の気象予報を見て、問題ないと判断しました。
○山根議員
 市長、それは勝手な思い込みではありませんか?具体的に、気象予報の内容と、実際の台風の経路や暴風雨の状況がどの程度齟齬があるのか調査されたことはあるのですか?
○石丸市長
 具体的にはありませんが、私の経験上、予報が大幅にずれた記憶はありませんので・・・・(以下略)

NaPO

少し長くなりました。

いかがでしたでしょうか。あくまで架空のストーリーですが、仮に山根議員が、このように「具体的」に「一問一答」を行えば、市長は普通に答えたのではないでしょうか。

あるいは、「プライベートであるから答えない」という反論に対しても、「災害対策という市の公務の当否について重要な点である」という再反論をきちんと用意しておけば、仮に、石丸市長が頑なに答弁を拒んだとしても、その異常性を浮き彫りにすることができるのではないでしょうか。この方法は、関口議員が除斥された件の都議会において、関口議員が用いた基本的な手法です。

また、石丸市長の認識や判断に誤りがあること議場において示したいのであれば、市議が、それについて調査を行った上で、議場において一定の見解を示し、石丸市長がなぜそれとは異なる行動をとったのか、一問一答の形で問い質すべきだったと思います。

石丸市長が、実際に、トライアスロンの競技中、携帯電話を携帯していたのかについても、追及が曖昧になってしまっています。スイム中は難しいことは明らかですが、ラン・バイクの間に、携帯電話を携帯していたのかについては、結局検証がなされていません。

以上は架空の質疑ですが、質問と答弁をきちんと追っていくことで、石丸市長の事実認識や判断に問題があったことが少し浮き彫りになったのではないでしょうか。

そして、このようなことを浮き彫りにするには、周到な準備が必要です。

例えば、石丸市長が天気予報を信頼し、九十九里に行っても問題ないと判断したという答弁を予想するのであれば、以下のような過去の事例や専門的知見に関する調査を含む準備をした上で、石丸市長の判断の誤りを問い質すことが考えられます。

  • 気象予報と実際の台風の進路がずれたことにより、想定外の被害が発生した過去の事例(安芸高田市に限る必要はない)

  • 安芸高田市には土砂崩れが発生しやすい場所や浸水しやすい場所があり、台風の進路が少しでもずれた場合には、甚大な想定外の被害が発生するのであれば、それを示すような資料(防災マップや、それに関連する防災関連情報、過去の災害情報などを調べることが考えられる)

  • トライアスロンの大会中、実際に市長が連絡する手段を携帯していたのかについて更に質問をする(実際の市議会ではこの点がうやむやになってしまっていた)。例えば、どのようなウェットスーツを着用し、どのような自転車を使用していたのか。スイム中は携帯電話に出られないことは市長も認めているが、バイクの最中は実際どうだったか(そもそも気付かないという可能性も高い)。ランの最中はどうだったか(かなりタイトなトライアスロンウェアを着用しており、電話を携帯していたか疑義が残る)。

  • 場合によっては、防災専門家の知見を得ておく(議会には調査権限がある)。

そして、このように追及型の質問をするためには、実際に山根議員が行ったように延々と自己の主張を繰り返すのではなく、以下の(再度)架空の具体例のように、事実を淡々と確認した上で、なぜ市長がそのような行動をとったのかを淡々と問い質すべきです。例えば、以下のような質問案を準備しておくことが考えられます。

【質問】
○○年○○月に○○市を襲った台風○○号では、事前の予報と実際の台風の進路が大幅に異なったことにより、市の対策が後手後手になり、結果的に想定外の大惨事となったことが知られています。市長はこの事例をご存じでしたか?
【「はい」の場合】
では、なぜ、そのような事例を認識しながら、気象予報を信じて良いと考えたのですか?
【「いいえ」の場合】
・少し調べれば出てくるような事例すら認識していなかったにも関わらず、気象予報を信じて問題ないと考えたのはなぜですか?

NaOP

『つぶやき市長と議会のオキテ』の映画のワンシーンで、田邊議員が、真剣な顔でノートパソコンとにらめっこして、一般質問の質問案を起案しているシーンがあります。

そこで、田邊議員は、「相手がどのように答えるか分からないから、回答のパターンに応じて、次の質問を考えています。市長が事前通告の仕組みをなくしたことで、準備は大変になりましたが、議員の質問のレベルは上がったと思いますね。」とインタビューに答えていました。

実際、市議会における質問の方法が変わっていくのを感じて、傍聴していた市民からも「出来レースというか茶番ではなく、議論のレベルが上がっている」というコメントがあったのが印象的でした。

どうでしょう。山根議員や山本優議員は、このようなレベルアップのための努力をされているでしょうか。

質問によって相手を言い負かすことは簡単ではなく、まして、公衆に公開されている議会の場において、相手を謝罪させるところまで追い込むというとは、ほとんど不可能です。実際に、山根議員・山本議員の質問を見てみてください。石丸市長に間違っていたことを無理矢理自白させようと必死になるあまり、質問の趣旨が不明確になり、最終的には性懲りもなく感情的になって自滅しているパターンが非常に多いです。

議場において行うべきは、相手に溜飲を下げさせることではなく、むしろ、徹頭徹尾、①客観的な事実関係、②主観的な事実認識、③当該事実関係・事実認識に基づいて行った判断の理由を聞き出すことです。

つまり、質問は、①5W1Hにより客観的な事実の存否を尋ねる、②相手がどのような事実を認識していたか尋ねる(客観的事実関係と主観的事実認識とは必ずしも一致しない)、③一定の判断について「理由」を尋ねる、のいずれかになります。

このように具体的な一問一答にすることで、回答が得られなければ、回答拒否をすることの当否が問われることになりますし、回答が得られれば、その内容の当否が浮き彫りになります。

また、徹底的に「なぜ?」を繰り返すことで、一定の判断を行うに当たり、事実認識が十分ではなかったことが明らかになったり、判断過程が不合理であったことが浮き彫りになります(試しに、周りに言い訳をする人がいたら、「なぜ?」「それはなぜ?」「それはなぜ?」と3回たたみかけてみてください。嘘をついていると必ずボロがでます。これは、検察官が尋問で使う、極めて初歩的なテクニックですが、非常に強力です。友情を壊すきっかけにもなるので、取り扱いは慎重に。)。

翻って考えると、そもそも、このように質問を具体的にしないと、相手方は「答えようがない」わけです。

改めて冒頭の山根議員の問題の質問を見てみましょう。

○山根議員
 通告に基づき、大枠1点について質問をいたします。
市長の日々の動向について、中国新聞の市長往来が、「情報提供なし。」となった後、お太助けフォンで、「市長の日々の動向」と題して、 市長の前日の主な活動状況が、翌日に市民に伝えられるようになりました。 また、ホームページには、令和4年6月10日から「これまでの市長の動向」として、各月の市長の動向がまとめて掲載されております。そこに は、執行部の各部局との協議などが細かく載っております。しかし、9 月の大型で動きが遅く、広範囲に強風や記録的な大雨を降らせた台風14 号への市長の動きは、「市長の日々の動向」には見当たりません。
 市長の動きについて、以下2点について伺います。
 まず1点目。この台風14号は、16日には大型で非常に強い勢力となり、 17日には広島地方気象台が「過去に余り例がない勢力」として身の安全を確保する行動を早めに取るように呼びかけていました。市内では、17 日に強風注意報、18日夕刻からは暴風警報、大雨警報が出され、19日には洪水警報が出されました。 この注意報や警報が出された17、18、19日の3日間の「市長の日々の動向」はアップされておりません。市長はこの3日間、どこで、何をし ておられたのかを市長に伺います。

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そろそろ、山根議員の質問のしかたが、どれだけポンコツか、そして、なぜ私が、この質問から山根議員を無能と評価するか、ご理解いただけたでしょうか。

まとめ

以上のように、「具体的」に「一問一答」を行うことには、本質的に色々な理由があります。

  • そもそも一問一答でないと答えようがない。

  • 一問一答でないと、どの点について事実確認ができていないのか後で検証できない。

  • 逆に、一問一答であれば、答弁内容の当否や合理性について事後的に検証できる。

  • 質問の場は、演説の場ではない。情報発信を行いたいのであれば、自らのHP(安芸高田市議会のファンは「エイチピー」と読め!笑)などで発信すれば良い。

  • 相手を言い負かそうとするあまり、それができないと感情的になりがち。

そして、質問は、「事実」を確認する質問と、「理由」を問い質す質問を明確に切り分けることによって、相手の行動や判断の問題性を浮き彫りにすることができます。

宿題

さて、ここまで読んでくださった方は、すっかり一問一答の必要性・合理性をご理解いただけたと思います。

その上で、「バッチを外して出て行け。」で話題になったこちらの議事録を読んでみてください。

令和5年第1回安芸高田市議会3月定例会第9日目議事録

https://www.akitakata.jp/akitakata-media/filer_public/95/3c/953cad1d-afe7-47cf-9ddd-e2d608cf1ea3/aki-takadashi-rei-wa-5nen-daiikkai-teireikai-kaigiroku-r050307.pdf

あるいは、市議会の映像でも結構です。

ところで、答弁をはぐらかすと専らの評判の石丸市長ですが、芦田議員の質問には、よどみなく答えています。

芦田議員の質問をよく読みますと(あるいは聴きますと)、具体的に一問一答になっていて、質疑がかみ合い、質問内容も網羅的です。結果的に、議事録を読むと、市が取り組んできたことの成果が浮き彫りになるようになっています。

私はこの芦田議員による質疑は、市長を礼賛する目的をもって、よく練られた質問だなと思っております(真意は不明ですが笑)。

そして、この芦田議員による質疑の内容が、石丸市長のいう「住みたいと思える街」を実現するための具体的な取り組みを説明するものとなっています。石丸市長の認識としては、おそらく、この芦田議員の一連の網羅的な質問に答えることで、「住みたいと思える街」の具体的な施策を、それこそ具体的に、既に答えたと認識していたのではないでしょうか。

その上で、芦田議員の後に登場するのが山根議員です。ここで改めて取り上げることはしませんが、ここまで理解された皆さんなら、この質問内容についてどのように感じられますでしょうか。

さらに、山根議員の後、熊高議員に続き登場するのが山本優議員です。

山本優議員は、最初の質問で、このように質問します。

○山本議員
まず、第1点、市長の政策について伺います。 市長は、就任以来2年半が経過しましたが、そういう中で、過去、同僚議員が、市長の公約について多く質問されております。しかし、4年 の任期の中で、残りあと1年半となりましたが、今回の当初予算を見て、 市長が言う、世界で一番住みたいと思えるまちにするための政策が私の 心に伝わってきません。 そこで市長に伺います。 1点目、残り1年半で、市長は、この世界で一番住みたいと思えるまち にするためにどのような政策を計画しておられるのか伺います。

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私が石丸市長なら、「あんた午前中の議論さっぱり聞いてなかったの?」と言いたくなります笑 もうがっかりですよね。

それでも山本議員はしつこく抽象的な質問を繰り返したため、

バッジを外し て出ていってください。

石丸市長

と言われてしまったわけですね。

私は、山本優議員に対する評価として、この台詞は極めて妥当であると考えています。

いかがでしょうか。質問というのは、基本的に技術であって、準備と訓練をすることによって上手にできるようになるものです。それを怠り、延々と抽象的な質問(というか演説)を繰り返し、市長に返り討ちにされると、「あいつはすぐに人をバカにして罵倒するひどい人間だ。けしからん。」と文句をたれるわけです。

ここまで読んでくださった皆様であれば、どちらに非があるのか、それこそ日を見るよりも明らかなのではないでしょうか。

長くなりましたが、このあたりで終わりにします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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