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(2)人生は牢獄?アヤワスカで感じたこと

今回は番外編で、ポートランドで日々暮らしながら思うことではなく、九月末に二晩連続のアヤワスカセレモニーに参加したときの話を書きたいと思います。アヤワスカとは、かなり強い幻覚作用がある聖なるプラントメディスンの一種です。今回の参加は人生で二回目でした。

わたしの場合、アヤワスカを摂取しているときは、普段とくらべて、感覚も思考もより直観的、抽象的、そして広がりのあるものになります。そのあたりも加味して読んでいただけるとうれしいです。



祈りの場にいつづけることが耐えられなくなった。わたしにはシャーマンたちの祈りが届かないように思えた。もう無駄だよ、って。

そのままセレモニーの場の外に出て、ぼうっと立ちすくんだ。戻りたくなかった。

すると、わたしの立っている地面が、見渡す限り雪の結晶のような、ほの白くかがやく、神聖な幾何学模様におおわれていることに気がついた。アヤワスカの見せる幻覚。わたしは前回のアヤワスカセレモニーではまったく幻覚を見なかったので、これが初めての幻覚体験だ。不思議なことに、大地以外はすべて普通に見えていた。

ネイティブアメリカンのエルダーが、祈りの場から逃げ出して、立ち尽くしているわたしに気がついて、声をかけてくれた。ぼうっと発光している大地の上をエルダーと2人で歩き、祈りのサークルから離れた少し静かな場所へ連れていってもらった。

「なにが苦しいのか、言ってごらん」エルダーはそう言ってわたしの目をまっすぐ見た。「憂うつと絶望を感じていることがつらい。」とわたしは言った。勝手に涙がこぼれた。

「そして、わたしのそのネガティブな感情がわたしからもれだして、周りに伝染するか、周りに避けられるのがこわい。」言葉にしておどろいた。自分がそう思っていることに、わたし自身が気がついていなかったからだ。

「いいか、私の目を見て。まず、あなたの悲しい気持ちはけっして伝染病なんかじゃない。それから、もう知っているとは思うけれど」エルダーはわたしの両肩にその手を置いた。

「喜びと悲しみは、セットなんだよ。
それを受け入れなければ、喜びを感じることはできないんだ。
そして、わたしたちは、自分では抱えきれないほどの悲しみを感じたとき、その悲しみを地球に、大地に還す約束で生まれてきたんだ。
さあ、目をつぶって。
悲しみを大地に還して。
自分の中の喪失感や絶望を、地球に還すことができたなら、
空いたスペースに光が差し込んでくる。」

目をつぶって、エルダーの言葉と、呼吸に集中していた。わたしの中の苦しい気持ちを、呼吸とともにゆっくりと地面におろしていく。すると、真っ暗だった視界に、ダイヤモンドのような美しい光が徐々に徐々にうまれてきた。その光はきらきらと拡大したり、収縮したりを繰り返している。

その光はわたしの中の暗闇をすべて消し去ったりはしない光だ。

「この光は、あなたが喪失、悲しみ、絶望と共存するために必要な光だ。それらの感情はけっして消えたりはしない。でも、あなたの光、強さ、喜びも消えはしないんだ。それを信じることでしか、この夜は終わらないよ。」

「さあ、あなたの光を、今度は眉間からハートに移動させて。その光がハートを満たして、照らしていくよ。」ほんとうに、わたしの中で、まばゆいめくるめく光が頭から胸へと移動していった。

つづく


はじめまして!アメリカに住んで約11年のNanaoです。ポートランドで日々コツコツと楽しみを見つけて生きてるよ。もしよかったら↑のリンクからInstagramも見てみてね。