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『時記』 2019年5月23日16時

2019年5月23日(木)16時

5月23日15時59分59秒以前に何やかんやありまして、16時00分00秒、僕は原宿のとある喫茶店の入り口にいました。
僕は喫煙者です。
禁煙の店が多い中喫煙可と書いてる事に目を奪われ、メニューの看板にコーヒーの値段が書いてなかった事を問題視せず、
「まぁコーヒーなんて高くて500円くらいだろ」という甘い考えで、自動ドアを潜ってしまいました。

ドアを潜ると赤絨毯にシャンデリアの店内の奥からタキシードで蝶ネクタイの清潔感に溢れた短髪黒髪の店員達の品のある声で約90度に傾けられた体勢からの『いらっしゃいませ』が聞こえた。

あれ?…入る店間違えたか?

多分流石に口には出てないと自分を信じてるが、心の声ではっきりと『マ、マズい!』言い、反射的に踵を返しかけたのも束の間、
ホスピタリティを訓練されたであろう店員が、お客様を一秒でもお待たせさせまいとのホスピタリティで、僕の目の前に俊敏にかつ音もなく駆け寄り『喫煙ですか?』と聞いてきたので、『喫煙です。』と言わざる終えず、即座に二名席に案内された。

後で思ったのですが、何名様ですか?と聞かなかったのも見るからに一人で来てる僕に『一人です。』とわざわざ恥ずかしい事を言わせまいとするホスピタリティだと推測してます。(ずっと知ったかでホスピタリティって言ってます。使い方間違ってたらすいません)

席に着くとすぐさま別の店員さんが、シャンパンに使ったって文句ない薄くて細長い美しいグラスに注がれたお冷とこんなお店に住んでたら絶対に顔なんて拭かれた事なんてないだろう真っ白なおしぼりを渡され、
開けるのが大学受験の結果が書かれた封筒より怖いメニュー(言い過ぎてます、そこまで怖くはない)が目の前に置かれ。

店員さんが一ページ目を開き『本日のオススメは○○産の○○豆です。』(聞き覚えなさすぎてどこの何豆かは覚えてませんが、値段ははっきり覚えてます、1400円です。)

『これは今の季節でしか〜〜〜〜』とそのコーヒー説明を丁寧にしてくれてる間、精一杯、『ふんふん、それも悪くないね』と聴いてる顔を維持しながら、頭をフル回転させてこの店から出て行く言い訳を考えてました。
空のスマホを手に取り『もしもし社長?すぐ行きます。』みたいな小芝居のセリフを練りこんでたタイミングで、店員さんの『というこちらのオススメはいかがでしょう?』が聞こえた。

『ん〜、見て決めますね』と反射的に言うと『かしこまりました。』と言って店員さんは僕の席から離れた。
とりあえず1400円のオススメは回避出来たが水まで出されて帰るわけにもいかない、もう腹はくくった。
まあ、言っても普通のアイスコーヒーなら680円とかだろ。

自分的にあるあるなのが、こういう高めの喫茶店行った時、例えばコーヒーに680円も払うのもなと思って、780円のコーヒーフロートを頼んだりする。
コーヒーだけじゃなく、デザートの役割も兼ねてるしなという無理やりのお得感を得ようとアイスとかモカ的なやつを頼んだりする。

まあ、じゃあ予算800円いや場合によっては900円くらいまではOKとして贅沢にデザートドリンクを楽しもう!と切り替えた。

とりあえずアイスコーヒーはどんなんかな?と見てみると。
【水出しアイスコーヒー1100円】

???

【コーラ1100円】

????

【ジンジャエール1100円】

?????

【アイスココア1250円】

??????

どこもかしこも四桁の数字。

(マジか。。
じゃあ、デザートっぽい、アイス乗ったやつがいいかなぁ。。)

【コーラフロート1400円】

???????

【ジンジャーフロート1400円】

????????

『アイス三百円じゃん!』とこれは小声ではっきり言ってました。
『後、ジンジャーフロートって何?』とこれは心で軽く思いました。

ホスピタリティの高い店員さんは呼びベルのないこの店ですぐ呼ばれても気づくようにこちらをチラチラ気にしている。

必死に『今日はどの豆がいいかな?水出しにしようかな?それともサイフォン抽出かな?』と悩んでるふりの顔で悩んだ。

冷や汗を抑えながら、必死で全てのメニューに目を通す(実際見てたのは数字のところだけ)

すると

【プレミアムアイスコーヒー 800円】

!!!!800円 の文字を発見!!!!

(一番安いのがプレミアムかい!とも思いながら) 助かったと思い、プレミアムアイスコーヒーを注文。

さんざ悩んだ上の最安値は心境がバレバレかと恥ずかしさを覚えながらも、ちょうど一万円札しかないし、それで払えばお金持ち感あるか!と会計の時に見栄を張れる事で心を落ち着かす。

サービースの小生意気な小皿に乗ったビスケットと共にアイスコーヒーが来る。
せっかく800円もするんだし、何か今の感情を残したい、そう思って写メを撮ろうとするも、周りを見渡すと店内は『パフェならまだしも、アイスコーヒーで写メなんか撮る?みっともない。』との心の声が聞こえてきそうな、気品を感じる人間しかいない。

何も悪い事してないけど、何となく誰の視線もないタイミングでこっそり素早く撮影。

やはり気持ち的に800円は引きづってしまい、自分の顔面なので見てないがおそらくハゲブルドッグのようなしかめっ面でプレミアムアイスコーヒーをすする。
周りを見渡すとみんな涼しげな顔でプレミアムアイスコーヒー以上のコーヒーを飲んでる。
涼しい顔をしたふりして本当はみんな気持ちは俺と一緒じゃないの?と思ってかなり見渡したが全員本当の涼しい顔をしていた。

せめてこの800円に意味を、と思い写真付きでTwitterに呟く。
文章を店員さんに見られないよう隠しながら。

このお金を無駄にしないように、こういう店で長居は出来ないから少しの時間だがネタの案など出来るだけ有意義なもの一つは産むように考える。
元を取りたい、全然集中出来なかったけど。

高級なのに広い店内が満席、周りに見られるくらい周りを見てしまったが、僕と同じ最安値のプレミアムアイスコーヒーのグラスを使ってる人は一人もいなかった、悔しい。

途中トイレに席を立ち、一人の店員さんに『お手洗いどちらですか?』と聞くと『あちらを真っ直ぐで右手です』と教えて頂いた。
『ありがとうございます。』と言ったものの私が少しだけわかってないのを表情に出すと
手の空いてる店員さんを手招きし、
『○○くん、ご案内差し上げて。』とドラマ「HOTEL」の高嶋政伸さんからしか聞いたことないような耳打ちが聞こえた。

そしてその後輩店員さんがお手洗い直前までエスコートしてくれた。
トイレドアの前に小さなドアがありその前で止まり。
『段差があるのでお気をつけて』と。
とんでもないホスピタリティ。

個室の扉には「男・女」でもなく「men's・women's」でもなく「gentle・ladies」の表記。
一瞬では読めなすぎてついladiesのドアに手をかけた始末。
誰も居なかったから良かったものの。

席に戻ると、隣の人達が入れ替わってた。
カップルのようだった。
そのカップルはちょうど案内の店員さんのオススメのコーヒーの説明後のようだった。
すると二人がメニューを見ながら何か小声で言ってるようだ。

まさか僕と同じ境遇か?との期待を込め聞き耳を立てた辺りで17時00分00秒になりました。

いい一時間でした。

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