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悪徳商法にまんまと引っかかった経緯


2016年頃の年初だっただろうか。仕事場と家の往復だけの平坦な毎日を送っていて、何か新しいことでも始めたいなと思っていた頃、毎日届く迷惑メールの中から何気なく、とあるメールを開いた。
いわゆる情報商材というやつだ。でも、その頃は新しい情報が気になり出していたので、胡散臭さを感じず、数万円程度払えば成功者の秘訣を教えるとか何とかの内容になぜか反応してしまった。
それに、まだ今ほどネット詐欺が蔓延していなかった頃だった。

私は何も躊躇せず、その情報商材屋にお金を払うと、外には出ていない情報とやらがメールで続々と送られてきた。今にしてみれば、私は自ら金を払い、詐欺のカモリストに登録したということになる。何て愚かなことをしたんだろうか。
私ほど人を信じず、美味しい話には手を出さない人間はいない、とさえ思っていたのに…

そしてある日、こんなすごい人のセミナーが開催されますから、聞きにきませんか?本来なら5万円のセミナーですがタダでご招待します、といった内容のメールが届いた。そんな謳い文句にまんまと出向かう自分も自分だが、とにかく退屈していたし家からも近い場所だし、たまには人の話でも聞いてみるか、と何の気なしに出かけた。
新宿のセミナー会場には、たくさんの人が集まっていた。
20代から60代まで、年齢層も幅広く、殆どの人がきちんとした基盤がある社会人に見えた。
その中で女は私1人だった。

待合室で、年配の男性に声をかけられる。「仮想通貨やビットコインはやってますか?」
情報に疎い私は「何もやってません。」と答えると、自分はこういうことをやって小遣い稼ぎをしてますよ、と説明してくれた。へえ、そんなものがあるのか、世の中私の知らないことが多いな、と感心した。

そして会場に入り、先生とやらが登場。
高そうなスーツに、きちんとした言葉遣い、落ち着いた口調、どこから見ても詐欺師には見えない。(逆に詐欺師に見えたら詐欺師という職業は成り立たないのだよね。あの頃の自分、気がついてくれ!)
第一に、私は詐欺師の話を聞きに来たという意識すらなかった。周りの皆さんもそうだ。講師の話に真剣に耳を傾けていた。

自己紹介、世間話から本題に入る。「皆さん、何か自己投資していますか?」端から1人ずつ答えていく。やはり、ここに来ている皆さんは意識高い系の人たちばかりだ。私の番になり、何もない、どうしよう。「ええっと。競馬⁉︎」笑笑
と言うと、講師は真面目な顔で「競馬も立派な投資活動ですよ。100円で買ったものが時として200円になりますよね?」と真剣に話す。さらに「皆さん、海外旅行に行かれる際、外貨両替をしますよね?あれも投資なんです。為替の変動で得していることもあるんですよ。」と続ける。

そして、話は自分の商材に移る。要は、FXの自動売買だった。私はその道のプロなので、あなた方は何もしなくても1年後には10万が2000万になります、私に任せて下さいという話だ。この話を延々と2時間聞かされた。講師の話が終わると全員からの大拍手が湧き上がる。
最後に、申込書が配られた。
「皆さん、別にここで帰っても構わないんですよ。ただ、ありきたりな今までと同じ毎日が続くだけです。どうぞどうぞ月から金まで働いて、土日で寝るを繰り返してください。」うまいこと言うよなあ。
誰も帰らず、全員がその場で商材に申し込みをした。

これこそが洗脳商法というやつだ。しかし、誰1人としてそれに気づかない。自分が金持ちになれると確信して騙されているとは思わない。
私も同じだった。申し込みには2種類の25万円のスタンダードコースと80万円のゴールドコースがあり、私は80万円のコースに申し込んだ。
こういう時は、その場では買わず、1日考えた方がいいとわかっているのに、その場の雰囲気に飲まれてしまう。洗脳された頭は既に正常に機能しなくなっている。

申し込み手続きが終わり、帰り際にタバコ部屋で何人かと楽しく「来てよかったですね。」「楽しみですね。」などと話し、皆が笑顔になり盛り上がった。お互いの LINE交換もして、情報共有していきましょうね、と言って意気揚々と帰った。
あんないい人たちを騙すなんて、あの詐欺師にはマジでバチが当たってほしい。

結局は、振り込みばかり催促され、振り込みが終わると、連絡が取れなくなるという、よくあるパターンだった。
あの長話は、何もかも自分より弱い立場の人間を洗脳するためだけの作り話だった。
私は、資金として20万を証券口座に入れていたので、実質100万円をやられた。
 LINEで連絡を取り合っていた面々とも、連絡を取らなくなっていった。彼らは立派な社会人の男性。詐欺師に騙されてお金を取られたなんてプライドが許さないのだろう。

しかし私は違う。怒り狂っていた。
弁護士事務所に片っ端から電話をし、経緯を説明し、弁護士さんに、詐欺師から何としてでも金を返金させたいと訴え続けた。事務所の人は「同じような被害に遭われた方から複数の依頼がきています。」と言っていた。何ヶ月も経ってから、結局ダメでした、と連絡があり万事休す。私も、もうこの件はなかったことにしよう、と腹を括った。
弁護士は、販売元を訴える仕事だ。その販売元が住所を変え行方を眩ませていたら手も足も出ないらしい。
そのことも詐欺師には想定内だったのだろう。何もかもがウソでクソ。

詐欺師の生活というものを考えてみる。人のお金でよくも食べたり寝たりできるものだ。でも詐欺師は一度やったら一生詐欺師。お金がなくなると、また違う形で詐欺を働くのだろう。
そういえば、その詐欺師は、私が会った時とは風貌を変え、また偽名を使い別のセミナーをしている姿をTwitterで見た。
そっちこそ、虚しい人生をどうぞどうぞ毎日お続け下さい。まあ、そちらは逮捕の恐怖から一生逃れられはしないでしょうから。

普段から、親には、変な電話があったらすぐ切ってね、お金を払わないでよ、と釘をさしていた私ですら詐欺師に負けてしまった。
今でも、ありとあらゆるネット詐欺が蔓延している。皆さんは大丈夫だと思いますが、人をむやみに信じないようにしてもらいたいものです。
まあ騙される私が一番バカなのですが。




#詐欺師   #悪徳商法   #洗脳

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