デジタルネイチャーで解釈する平沢進のBEACON③

デジタルネイチャーでBEACONを解釈する動画/
第3回です/
この動画の内容はすべて私が適当に言ってるだけなどで話半分で聞いてください/
というわけで4曲目の転倒する男について解釈していきます/
まず初めに、転倒する男は誰なのかについて/
転倒する男は現実世界で動く、機械のアヴァターなんじゃないかと思います/
ASIMOみたいなやつですね/
アヴァターという概念は前アルバムのホログラムを登る男やWORLDCELL2015でも出てきていました/
また、アヴァターアローンでは転びつ、転倒するという言葉が何回か出てきており、この曲と似た感じのニュアンスがあります/
というわけで転倒する男は誰かのアヴァター、分身であると考えて解釈していきます/
鉄塔からジュラ紀の花降る宵の星/
というフレーズについて考えます/
鉄塔はおそらく電波塔的なもので、転倒する男とデータを送受信するためのものです/
アヴァターアローンでは、サテライトという単語がしきりに出てきていましたが/
サテライトを、遠隔でアヴァターに指示を送る衛星的なものと考えると/
鉄塔もサテライトのような目的のものと解釈できます/
では鉄塔から降るジュラ紀の花とは何なのでしょうか/
ジュラ紀の花は被子植物のことだと思います/
一般に、最初の被子植物はジュラ紀に裸子植物から進化したものと言われています/
裸子植物は水がなくても生殖できる初めての植物で、3億年くらい前の敵のいない地上ですこぶる繁栄していました/
しかし、ジュラ紀では恐竜が巨大化し、広大な裸子植物の森を食い荒らしていきました/
そこで登場したのが被子植物です/
ジュラ紀後期に進化した彼らは、1日500Kg以上植物を食べる恐竜がのさばる環境に適応し、急速に勢力を拡大していきました/
被子植物の最大の特徴はその受粉方法にあります/
植物はおしべから出る花粉をめしべまで運んで受粉して生殖します/
杉やイチョウなどの裸子植物は、大量の花粉を風で運んで受粉させて生殖します/
この方法の最大のメリットは水辺以外で繁殖できることです/
裸子植物以前にいたシダ植物は胞子を水で媒介して生殖していたため、水辺以外では繁殖できませんでしたが/
裸子植物が出現したことにより植物は地表を覆うように広がっていきました/
それによりそれまで直射日光にさらされていた大陸に森ができて、草食動物が誕生したりしました/
一方でこの、風で花粉を飛ばす方法のデメリットは効率が悪いことです/
風を使って狙ったところに花粉を飛ばすことは不可能なので、少しでも受粉の確率を上げるために、裸子植物は大量の花粉を放出します/
毎年春になると花粉症が流行するのも、裸子植物である杉が花粉をばらまいているからですね/
裸子植物の生殖が非効率的なのに対して、被子植物の受粉方法はスマートです/
被子植物は自分の花粉を食べに来た虫の体に花粉を付着させ、その虫がほかの花の花粉を食べに行ったときに乗り換えて受粉します/
つまり、おしべから直接めしべに花粉を届けることができます/
この手法だと、風で花粉を飛ばすよりもはるかに確実に生殖できます/
そして、この手法の大きなメリットはもう一つあります/
この、めしべに直接花粉を届ける方法を使うと、受粉から受精までの時間がかなり短くなります/
裸子植物が受粉から受精まで1年くらいかかるのに対して、被子植物はわずか数時間で終了します/
また被子植物は成長のスピードも速いため、花は松やイチョウと比べて極めて早く世代交代することができます/
世代交代の間隔が短い被子植物は、その優れた遺伝的多様性により素早く環境に適応して繁殖します/
ジュラ紀後期に誕生した被子植物はその後爆発的に増殖し、虫を引き付けるために蜜を出したり、カラフルになったりと多様化していきました/
今現在最も繁栄している植物も被子植物で、だいたい地球上に25万種ほどあります/
裸子植物がおよそ800種くらいなのと比べると、いかにこの生殖方法が優れていたかがわかります/
植物の話はこれくらいにして本題に戻りましょう/
鉄塔からジュラ紀の花降る宵の星/
のジュラ紀の花は生まれたての被子植物のことで/
恐竜が裸子植物を食い荒らして環境破壊していたジュラ紀に対応するために進化したように、/
現在の人間の活動による環境破壊や気候変動に適応するためにAIが試行錯誤する、という感じのニュアンスでしょう/
そのようなAIによる現実世界の最適化の黎明期で、機械製のアヴァターである男は現実世界での実用化に向けて性能テストをしています/
アヴァターが転倒するのはまだ現実世界とAIの内部の世界の同期がうまくいっていないからでしょう/
AIを用いて最適化するには目的を設定する必要があります/
転倒する男は丘まで行くことを目的としてセットされています/
立てGO!/
という指示のもと、機械の内部での世界認識と現実世界を完全にリンクさせ、機械でシミュレーションしたとおりに現実世界を動かせるようにするために/
アヴァターはジュラ紀の花のごとく試行錯誤して学習していきます/
これは現実世界をデジタルネイチャー化させていく試みともいえるでしょう/
ここで、機械の内部の世界と我々の住んでいる物質世界が同期するためにどうすればいいのか少し考えてみましょう/
WORLDCELL2015の成功ルートではアヴァターは、Σ-12の眼球を通して世界を見ることで、地面に横たわっている自分を認識し/
光学現実を消滅させて立ち上がり、WORLDCELLを再稼働させました/
Σ-12の体は機械で出来ているので、アヴァターは機械を通して人間の感覚器官では見えない世界を認識したと言えます/
これはまさしくデジタルネイチャーのような出来事です/
目を覚ませ 見て悟れ/
も、機械の目で世界を再認識せよということでしょう/
3番の歌詞は、WORLDCELL2015で言うところの、光学現実的なものを消滅させることで見える世界のことですね/
風にも根を張る木や水面に咲く宮は、デジタルネイチャーに対応して進化したジュラ紀の花なのかもしれません/
5曲目の燃える花の隊列の花も、そのようなデジタルネイチャー世界で進化した植物のことを歌っています/
デジタルネイチャーの世界観では、私たちの生きる物質世界と、コンピューター上でコードで記述されるヴァーチャルな実質世界との境界があいまいになります/
そのような世界に対応した花は、AI的な特性を身に着けています/
発火する花の発火をニューロンの発火のような処理ととらえると、燃える花の隊列は/
何層にもニューロンの層を重ねて処理する、ディープラーニング的なのに近しいものだと言えます/
2番の/
火を咲いて歌え 隊列の力を着て/
のフレーズについても、/
隊列をGPUのような計算資源と考えると/
ディープラーニング的な技術を利用して火を咲いて歌え、となります/
火を咲いて歌うのは燃える花の隊列ですから/
この、燃える花の隊列は、一種のコンピューターグラフィックスのようなものと考えられます/
落合陽一風に言うとメディア装置ですね/
燃える花の隊列は、人に対してデジタルネイチャー的なビジョンを見せるメディア装置なのかもしれません/
おそらくそのビジョンは映画のような一方的なコンテンツではなく、個人のクオリアに応じて変化するようなものでしょう/
燃える花は、人にデジタルネイチャー的な未来を選択させるようなビジョンを見せるメディア装置として働きます/
サビの/
生存を焚け 解錠する必勝する聡明なる暗号なるキミたる灯を/
のところは、燃える花の隊列が見せるビジョンについてです/
では、そのビジョンとは何なのでしょうか/
デジタルネイチャー的な前提で考えると、豊富な計算資源による瞬間的な自然選択的最適化だと思います/
つまり、植物が何億年もかけて行う最適化が、一瞬で出来るということです/
そしてその過程は魔術化されていて、はたから見ると一瞬にして姿が変わったように見えます/
また/
ウェルカム ウェルカム キミのあるべくあるそれ/
の部分は人間の多様性を受け入れる、という趣旨です/
デジタルネイチャーの世界では人間の多様性をそのまま受け入れることができます/
例えば先天的な腕や足がないといった疾患は、高性能な義手や義足デバイスで補えます/
30年後には健常者が手足を切り落として、義手や義足をつけるなんてことも起こるかもしれません/
あるいは、眼鏡なんかもそのような多様性をそのまま受け入れるためのデバイスと言えます/
そもそも、健常者障碍者という区別は、近代的な工業社会をうまく回すために作られたもので/
社会がデジタルネイチャー化し脱近代化されていくと、自然と多様性を受け入れるようになります/
多様性の話で行くと、被子植物は自然選択的に多様化しています/
被子植物は虫に自身の花粉を運ばせることで生殖しますが/
さらに進化した被子植物は多種多様になっていきます/
自分のところに来た虫が、そのあとに別の花にいってしまったら生殖できないからです/
臭いや色、マークなどで自分を差別化し、虫にそれを記憶してもらうことで、同じ種類の花の蜜を吸いに行くように仕向けます/
あるいは、もっと確実に生殖するために虫と1対1の関係で進化した花もあります/
これを絶対送粉共生と言います、気になる人はggったりduckったりしてみてください/
このように、自然選択的に進化した花は、最適化の過程で多種多様になっていきます/
また、それと共生関係の虫や哺乳類も、同様に多種多様に進化していきました/
人間も被子植物のように、多様な生き方が選択できるようになります/
また、多様化した人に合わせて工業製品なども多様化していくでしょう/
例えば3Dプリンターなんかもそのような未来を支える技術の一つです/
近代社会では工場のラインで大量生産していたものが、多様化した人間に合わせてカスタマイズできるようになっていきます/
三番の歌詞の/
隊列の非凡と化し/
の部分もそのような、多様性を獲得せよという事だと思います/
ちなみに、この曲とは関係ありませんが、最近の研究で面白いものがあります/
これは2022年1月のプレスリリースですが、水溶液の電気化学反応でニューラルネットワーク計算ができたというものです/
実用化されれば、現在主流の半導体をつかったコンピューターよりも安全、安価かつ低消費電力な人工知能デバイスが作れる可能性があるそうです/
もしかしたら燃える花の隊列もこのような原理で動く人工知能デバイスかもしれませんね/
というわけで今回はここまで/

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