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うみのかけらに旅の記憶を浮かべる

旅は嗅覚だと思っている。色や光はその次。
香りで色が見える、かたちが線がうまれる。
そんな体験を旅先でたくさんしてきたからこそ、
布作家さとうゆきさんから
今回のお話をいただいたときには興奮したのでした。

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わたしにとってのその原点は、やはり沖縄だった。
はじめて遠出をしたひとり旅。久しぶりに当時のスケッチブックを開くと
学生時代のわたしがそこにいた。
バックパックに少しの着替えと画材を詰め込んで、離島を巡っていた20代の頃、
島のどこに行っても出してくれるさんぴん茶の香りが記憶とセットになっていて。
ジャスミンティー、という洒落た響きとは違う、琉球王朝時代から島の人々が飲んできたお茶。(実際ジャスミンティーとは茶葉の発酵具合が違うのだそう)
民宿から歩いてもしくは自転車を借りて、絵を描きに行くときにも必ずさんぴん茶を持っていたし、食事中もおやつのときも眠る前にも飲んでいた。

久しぶりにあの、ピンクの紙筒状のさんぴん茶を取り寄せた。
その香りからあのときの温度、湿度、色、光、いろんなものが呼び覚まされる。
島へ渡る解放感、ここには船がないと来れないのだという特別感、民宿のお迎えの人が小さな港で待ってくれているあの感じ、船の燃料の匂いと音。
ああ、この風景も時間もすべて描けたらいいのにな、と思っているわたしが港へ降りようとしている。

一気に記憶の中に押し戻され、あまりのリアルさに泣きたくなってくる。

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20代の自分が描いたスケッチに感動するなんて驚きだったけれど、うみの向こうのあの風景を今回のプロジェクトがまた繋いでくれました。
結果、“旅の記憶にうみのかけらを浮かべて”しまったようですが
自分の原点を思い出し、あらためて自分の制作について見直す時間をいただけたこと有り難く思います。

うみの向こうを想像しながら
また実際に出かけられるまで、心のなかを旅します。

#うみのかけらに旅の記憶を浮かべる
https://instagram.com/uminokakera


2022.2の記録

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