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六車奈々、会心の一撃!

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タレント・女優の六車奈々によるエッセイ集。子育てをしながら働く、ハプニングと全力投球な日常をエッセイでお伝えします。
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2020年2月の記事一覧

働くお母さん

「お待たせ致しました」 真っ先に注文したスパークリングが運ばれてきた。『こぼれスパークリング』と書かれていたそれは、日本酒でいう『もっきり』さながら、升の中にシャンパングラスが立っている。 今日は、一人きりの外食だ。 娘が生まれてからの4年間、思い返しても一人でゆっくり夕食を満喫した記憶など一度もない。 私は思わず笑みが溢れた。 「それでは失礼します」 店員さんが、グラスにスパークリングを注ぎはじめる。 「ゆっくりね、ゆっくりね!」 スパークリングが泡立ち過ぎないよう心の

武士の心得

今、戦うべきか、否か。 実は、この選択。 自分が思っている以上に、重要である。 世の中には、理不尽が多い。 どの仕事をしていても同じだと思うが、あまりの理不尽に刀を抜きたくなる瞬間もあるだろう。 しかしだ。 世の中は、自分中心に周っているわけではない。自分が怒れる度に正義の刀を振りかざしていては、側からみると安売りになってしまう。つまり周りの評価は、『いつも怒っている人』ということなってしまうのだ。 感情に任せて刀を抜くと、目の前の『怒り』という感情はスッキリするかも

鬼退治

まもなく15時40分だ。 私は心が落ち着かず、息が苦しくなった。 今日は、節分。 あと数分で、鬼たちが保育園を強襲する。 娘は大泣きするだろう。 怖い思いをするだろう。 そう思うと、胸が苦しくなった。 節分の数週間前から、保育園では準備が始まった。 『節分の日、もしかしたら保育園に本物の鬼が来るかもしれない』 そんな噂を聞いた3歳児クラスの子供たちは、怖くてドキドキした。 森へ柊を探しに行き、鰯と一緒に窓や玄関に飾る。もちろん皆で、豆も買いに行った。 「豆をぶつけて

表裏一体

「うちの奥さんは、本当に大雑把で困る。」 私の友人男性、仮に名前をリョウにしよう、はいつものように愚痴をこぼした。 「部屋は汚いし、洗面台はいつも毛詰まり。仏壇のお供えにはカビが生えているし、冷蔵庫の中はタッパーにいつのかわからないおかずが入ってる。これで専業主婦だよ。どう思う?」 うん。話を聞くと、確かに大雑把な奥さんである。 私も掃除好きではないが、汚い方がもっとイヤだ。だから部屋はいつも片付いている状態にしたいし、綺麗にしたい。 しかしリョウの奥さんは、逆なのだ