推しカプ香水を作っていただきました
大好きな作品で、推しカプのアンソロジーノベル本を作ることになりました。私はその主催をしており、今回は他にも何か記念に残るものを作りたい……と思い立ち、気づいたのが「推し香水」の存在でした。前回初めてオーダーして、非常に感動して長いレポを書いたことを鮮明に覚えています。
ちなみに今回のレポも長いです。
フレグランスショップ「Dance」様に、私は遠方住まいのため今回もネットオーダーにてオーダーメイド香水の作成をお願いいたしました。
前回は別作品の「推し単体」だったのですが、今回は「推しカプ」の香水という形に。ペアフレグランス（ひとり１本ずつで、重ね付けしあっても良い香り……というもの）ではなく「一本で推しカプを表す香水」。どうできあがるのかは想像もつきませんでした。
こちらはその時に送ったオーダーシートになります。アンソロ参加者様と所々相談しながら一緒に作成しました。
作品名やキャラ名、カプ名は伏せますが、漫画が原作の四コマお役所ラブコメです。結構前の作品ですが私はいまだに好きで、フォロワさんともよく語ったりしています。明らかにされていない質問への回答は、私とアンソロ参加者様の想像になります。
そして、できあがったのがこちら。
フレッシュグリーンフローラルにフルーティーノートをブレンドした、さわやかで清潔感のある香り。
この香りの説明書き、すごくワクワクするんですよね！ 他の方のレポを見てもお一人お一人が違っていて面白い。香りってこんなにたくさん種類があるんだー！ と驚きもします。
普段香水をつけないっぽいことや職種の説明をしたので、万人受けするグリーン系が来るかなと思っていました。半分予想が当たりつつも、フルーティーノートが合わさったことでどう香るのかわくわくしつつ、手首にシュッとひと吹き。
◎トップノート（吹きたての香り）
・カモミール「逆境に耐える」「苦難の中の力」「清楚」「あなたを癒す」
・レモングラス「爽快」「爽やかな性格」「凛々しさ」
・ネロリ「純潔」「愛らしさ」「寛大」「相思相愛」
→すごく清潔な石鹸の香りがしてもうダメ。清々しいほど実直で生真面目なこの雰囲気……彼がいる！ 洗いたてのワイシャツとか、さっと差し出されたハンカチからこの香りがめっちゃしそう。私の中で隙間なく香りの解釈が一致した。トップノートの清潔な香りは、どちらかと言うと彼を思わせる香り。
カモミールなんてかわいい花が使われているなー、と思い花言葉を調べたら「逆境に耐える」とか「苦難の中の力」とか、その愛らしい見た目に反し結構たくましい。いくら踏まれてもへこたれない、踏まれれば踏まれるほど丈夫に育つ野生の力がある。へえ、まるで幼馴染を追いかけ回すことを諦めない彼じゃん……。なお、カモミールは「神」や太陽に捧げるハーブなのだそう。
レモングラスは料理にもよく使われ、カモミールとともにハーブティーに使用されるハーブとしてもお馴染み。彼女とタイ料理屋に行ってトムヤムクンでも食べるのかな？ 流行りのカフェで午後のティータイム？ お食事要素を入れてもらえたようでうれしい。
ネロリの香りは「天然の精神安定剤」と言われ、仕事や人間関係のストレスはもちろん、過去の失敗などを引きずってしまっている時にも役立つと考えられているということで、過去の発言を後悔している彼や大学院を中退したことに未練のある彼女にはうってつけかもしれません。
◎ミドルノート（核となる香り）
・ジャスミン「愛想のよい」「優美」「愛らしさ」
・ハニーサックル「愛の絆」「友愛」「献身的な愛」「誠実」「すぐにはお答えいたしません」「愛のしがらみ」「崇拝」
・スズラン「再び幸せが訪れる」「純粋」「純潔」「謙遜」
フランスの花言葉「ずっとあなたが好きでした」「さりげない身だしなみ」「あなたの美しさ以上にあなたを飾れるものはない」
→清涼な香りの奥にあった円やかな甘さが、次第に強みを帯びてくる。蜜のような甘い香り。これがハニーサックルかな……。彼女にしてはちょっとかわいらしいかも。でもこれは「彼が彼女をかわいいとも思っている」ということを表しているのかもしれない。
知らない香料だったのでおもむろに花言葉を調べ……「崇拝」崇拝！？ しにそう。彼の彼女に対する感情そのもの。ハニーサックル、古代ギリシアでは宗教における崇拝の対象とされていたらしいです。
「すぐにはお答えいたしません」という曖昧な思わせぶり感・断り切れない性格は彼女っぽいし、愛がしがらんでいる（！？）のも二人のもやっとした形容しがたい関係を表しているかのよう。
「愛想の良い」ジャスミンや「純潔」のスズランと一緒に人あたり良さそうな感じできれいに心地よく甘く香るのに、密かにこんなメッセージを隠しているなんて。
さらに、スズランは聖母マリアの象徴。そしてその可憐な見た目とは裏腹に、花と根には強力な毒を持つ植物。彼女の毒舌要素がここにあった。「再び幸せが訪れる」という花言葉は、この作品の四月未来ネタを知るファンなら思わずにやけてしまうだろうなと思いました。実際私はにやけた。
ありとあらゆる猛者たちを虜にしてきたプロ調香師さんに、再度ひれ伏した瞬間でした。おそらく作品を知らないはずなのに、この解釈。凄まじい。
このミドルノートは彼女そのもの、清楚でいながらも愛らしい匂いがする手首をずっとかいでいました。こんな素敵な香りがふわっと漂うマフラーを彼はあの時に巻かれたんだな。あと、調べているうちに知ったんですが、私の好きな香水「プチサンボン」とミドルノートが一緒でした。絶対好きになってしまう香りだった……。
◎ラストノート（余韻の香り）
・ベチバー（花言葉なし）
・ムスク（語源「ムスカリ」から）「失望」「失意」「夢にかける思い」「明るい未来」
・シダーウッド（杉）「雄大」「あなたのために生きる」
→ラストはムスクや、サンダルウッドのようなウッディ系でまとめられていることは予想していたけれど、ベチバー！ 好き嫌いが分かれる、とネットで書かれていたその香りに一瞬たじろぐ私。香りを共有したいアンソロ参加者さんは重ために主張するウッディ系が苦手らしく、これはどうかしら……とちょっと不安だったけれど、まったくの杞憂であり、それどころかこのベチバーが香りも解釈もめちゃくちゃ良い仕事をしてくれている気がします。
どっしりした燻ゆるような重さや強いスパイシーさは感じません。トップ～ミドルを引き継ぎながら、ゆったりとした甘さが穏やかに香ります。
ベチバーは単体では主張が強く、お香の香りで有名なあのサンダルウッドよりも好みが分かれるという一方で「慣れるとクセになる香り」とも言われているようです。おお……彼じゃん（２回目）いや、これは彼でもあり彼女でもあるのかも。お互いに一筋縄ではいかない癖の強めな性格を、ベチバーが上手に表現している気がしました。これはすごい。
なお、ベチバーの香りが苦手な場合は時間を置くと香りも熟成されていい感じになるそうです。ブレンドに利用すると印象が変わる存在でもあり、シャネルの「No.5」など有名香水のベースノートにも使われているとのこと。
ムスクやシダーウッドの深み・甘みと相まって、何だか落ち着いた気持ちになります。お互いの性格を理解してまた一歩関係が近づいた彼ら、という感じ。ムスクの語源であるムスカリの花言葉「失望」からの「明るい未来」は、「あなたのために生きる」（シダー、杉の花言葉）と彼が彼女へ向けて決意したからなんですかね……尊いですね……あれ錯乱した上のプロポーズだったけどね……。
今回は香りの変化がよりはっきりと分かる仕上がりのように思いました。前回の推し香水はトップからミドルにかけて、満開の花のブーケみたいな甘い華やかさがいっぱいに広がる贅沢な香りでしたが、今回は清潔感あふれるきりりとした香りから始まり、次第に清楚で甘い花の香りがふわっと咲き、そして穏やかな余韻を残す――という、系統のまったく違う作品。トップとミドルの合間に葡萄っぽいようなフルーティー感もあったような気がします、とは言え私は香水にあまり詳しくないので気がするだけかもしれませんが。
とにかく嫌味やクセ、強さはなく、普段香水をつけない人にもこれなら受けそうな、とても優しい香り。
ちなみに前回作ってもらった推し香水で提出したカウンセリングフォームよりも、めちゃくちゃびっしり＆しっかりめに書きました。アンソロ参加者さんと香りを共有したかったので、解釈のズレをなるべくなくしたかったのもありまして。注文する際、フォームは自分の解釈も含めてなるべく丁寧に書き込むことをお勧めします。
結果はご覧の通り、個人的には解釈ドンピシャ◎です。気に入りすぎて＆アンソロ参加者さんとぜひトップノートから香りを共有したくて、すぐにリピート注文をかけました。
ひと瓶の香水の中に、二人の物語を詰めてもらったようでした。語るように香る香水です。通販の際、ショップカード等に馴染ませるというアイディアがあるのですが、これはできればトップノートから香ってほしい……。
ちなみにこちらのタイプは送料込みで3,670円ほど。ジュエルなしのシンプルな10mlアドマイザーです。小さめで、早めに使い切りたい人向け。注文が混み合っているために注文からお届けまでには現在３か月以上かかるかもしれませんが、推し（カプ）香水のオーダー、おすすめです。
また、ジュエルありでさらに自分なりの解釈をプラスしたりするのも良いと思います。
カウンセリングシートを埋めながら推しのことについて思いを馳せる時間は、とても楽しく幸せな気持ちになれました。
Dance様、この度も素敵な香りを届けてくださり本当にありがとうございました！
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