文月の畔
楓:不問
仁:男性
2:0 or 1:1
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楓「ようこそ」
仁「こ、こんにちは」
楓「ここは君の来る所では無いよ」
仁「...ようこそって言ったのに?」
楓「そういう決まり、だからね」
仁「はぁ...」
楓「さ、日が暮れないうちにお帰り」
仁「...」
楓「?帰り方は簡単だよ、回れ右して、来た道を戻ればいい」
仁「そんなことは分かってるんです」
楓「ふむ...そういうことか。なら、歓迎しよう。ようこそ。」
仁「あ、はい、こんにちは...」
楓「立ち話もなんだろうから、ちょいとそこの椅子にでも掛けなさいな」
仁「あ...あの、俺、行きたいんですけど」
楓「そう急くんじゃない、時間はまだまだあるんだから」
仁「いや、でも」
楓「少し、私の話を聞いていってはくれないだろうか?1人だと、退屈してしまっていてね」
仁「...まあ、少しだけなら」
楓「君は、優しい子だね。」
仁「...本当に、そう思ってます?」
楓「ああそうとも。私には分かる。」
仁「...そうですか」
楓「ところで、こんな話は聞いた事がおありかい?」
仁「どんな話、ですか」
楓「そう、若者がきになる話だ」
仁「気に...?恋愛とか、そういうのですか?」
楓「まあ、それもあるのかもしれないが、最近の若者は、何故こうも内に秘めて溜めておく者が多いのか」
仁「よく分かりませんが、シャイって事で良いんですかね」
楓「無限に抱えていられる程の心なぞないのに、困ったものだ。」
仁「...あ、いや、そうですよね。言わなきゃ、ダメ、ですよね」
楓「いや、言わねばならぬ訳では無いがな」
仁「...えっえぇ...?」
楓「うちに秘める事は誰にだってありうる事である。溜めるな、という話だ。」
仁「じゃあ、どうやったら発散できるんですかね」
楓「そりゃあもちろん、直接言うのが手っ取り早いだろう。」
仁「じゃあ、結局俺には出来ないってことじゃないですか、ハハ」
楓「そうだな、だが私の記憶では、凛はここにいるはずであろうよ」
仁「!?...え、なんで名前、知って」
楓「だから言ったろう?なんでもわかる、と」
仁「でも、凛はもう、行ったんじゃ」
楓「いいや、私は覚えている。凛の話、そして仁、君の事もな」
仁「っ俺の、名前まで」
楓「だが、凛は、君を待っていた様で、待っていないと見えた」
仁「...どういう事、だよ」
楓「仁、ここは君の来るところでは無いのだよ」
仁「...嫌です」
楓「凛も、ほら言ってやれ」
仁「...凛がいるんですか」
楓「そうとも、私のすぐ隣にいるさ」
仁「...ハハ、見えないな」
楓「君も、普通なのだな」
仁「そうですよ、俺は普通の、寂しがり屋」
楓「相当のな。ほら、あれだ、私のお上が来る前に、帰った帰った...おっと」
仁「...?どうしたんですか」
楓「ありがとう、生きて」
仁「!」
楓「っと、強引だねえ、本当に、似たもの同士で面白いものだ」
仁「...俺、戻ります」
楓「おや、もう帰るのかい?長居してくれても、構わないのに」
仁「あなたのお上とやらに捕まりたくないですからね」
楓「フフ、そうか、なら仕方が無いね。」
仁「あ、最後に、名前聞いてもいいですか」
楓「私は、ーーー、私たちは、君のすぐ側にある」
仁「...ん」
仁「ここは...」
仁「結局、戻ってきちゃったな」
仁「風が涼しい...少し窓閉めるか」
仁「、、、あれは」
仁「竜胆が咲いてる、隣に、楓の、木...」
仁「!!!」
仁「凛、と、楓さん、だ」
仁「...っごめん、ごめん、ありがとう、見てて凛、俺、生きるから、凛の分まで、楓さんの分まで...!」
楓「ご覧。凛、君はとても愛されているね」
楓「ほう、知っていると?...フフ、そうか。でも君は、木に成ってしまうんだ。悲しいよ。」
楓「全くどうして君は他人を優先したがるんだろう。まったくもって、理解ができぬ」
楓「次は、どの花が良いんだい?君を木にするのは、もう少し後でも構わないだろう」
楓「若いうちに、楽しまなくちゃ、まだまだ生は続いていくのだからね」
楓「ここで、私と、人の足止めをしようじゃないか。面白そうだろう?」
楓「私は、もう木に成ってしまったからね、退屈なんだ。付き合ってくれないかい。」
仁「凛、ありがとう」
楓「君たちは、優しい子だね。」
Fin
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