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なみある?塩田気象予報士の波や天気のお話。【前線】

気づけば師走。朝の寒さや水の冷たさが身に染み、日中の陽だまりがことのほかありがたく感じられるようになりました。
大雪(タイセツ12/7)も過ぎ、いよいよ冬将軍到来の季節。来週前半の予想天気図には縦じまの線が並び、今シーズン一番の寒気が流れ込んできます。
ドルフィンが堪える日々がやってきました。

さて、2020年は地球全体で大きな変化がありましたが、変わらずに波はあり続けます。

今回は「前線」のお話をしようと思います。
天気予報や波情報の予想文などで、「前線」という言葉を耳にしたり目にすることも多いと思います。
前線も波への影響があります。
以前【天気図】のお話で少し触れていますが、ここでもう少し詳細にお話ししたいと思います。

まず、日本付近の大気の状態は、周辺の海洋や大陸で発達するいくつか「気団」によって変化しています。
気団とは、1000km以上の広い範囲にわたって、気温や水蒸気量が、水平方向にほぼ一様になっている空気の塊をいいます。

日本付近に影響する主な気団は以下の5つ。
・シベリア気団→寒冷乾燥。冬のシベリア高気圧に伴う。
・小笠原気団→高温湿潤。夏の北太平洋高気圧に伴う。
・オホーツク海気団→冷涼湿潤。梅雨、秋雨期にオホーツク海高気圧に伴う。
・揚子江気団→温暖乾燥。春秋のころに現れる。
・赤道気団→非常に高温多湿。台風に伴ってやってくる。

日本周辺の気団

これらの気団が季節によって勢力を強めたり弱めたりしながら日本周辺を覆うことで、気象現象が起こるのです。

では、「前線」とは?
シンプルにいうと、異なる性質の空気の、ある高さ(地上など)での境界のこと。
それぞれの気団は性質が違うため、水と油のように混ざりづらく、そこには「前線面」ができます。
暖かい空気は軽く、冷たい空気は重いので下図のようになり、前線面が地上に接するところが地上天気図で前線として表されています。

前線 図解

暖気と寒気の勢力の違いによって、前線は4パターンになっています。
① 温暖前線
② 寒冷前線
③ 閉塞前線
④ 停滞前線

天気図(広域)(前線全部)2

天気図の記号

青や赤で描かれている線が前線です。
では、順にお話ししていきます。

① 温暖前線
暖気側から寒気側の方向へ移動する。暖気団が優勢で、寒気団の上をはい上がるように上昇する。
前線面の傾斜は、寒冷前線のそれよりかなり緩い。
寒冷前線に比べ、気温、湿度、風向などの変化が不明瞭なことが多い。
通過後は気温が上昇する。

② 寒冷前線
寒気側から暖気側の方向へ進む。寒気団が優勢で、暖気団の下に潜り込むようにして暖気を押し上げる。
前線面の傾斜は、温暖前線のそれより急である(1/50 ~1/100).
冷たい空気が勢いよく潜り込むため、前線通過の際には、風向は急変し、短時間に強い雨や雷雨、突風などを伴う。
通過後には気温は急降下し、気圧は急上昇する。

③ 閉塞前線
温帯低気圧が発達する過程で、寒冷前線の移動速度の方が相対的に速いため、温暖前線に追いつきに、寒暖2つの前線が重なり合う。そして、暖気団が上空に押し上げられてできる。
温暖前線の北側にある寒気団と、寒冷前線の北側にある寒気団の間に気温差により、寒冷型、中立型、温暖型に分けられる。

④ 停滞前線
暖気団と寒気団との勢力が五分五分の状態のときにできる。
東西にのび、ほとんど同じ位置に留まることが多いものの、寒気と暖気の差によっては南北に移動することもある。
真夏の前と秋に日本に長雨をもたらす梅雨前線、秋雨前線が代表的。
立体構造は温暖前線に似ている。


それぞれの前線の特徴はこんな感じです。

日本列島は、先に述べた気団がぶつかりやすい場所であり、前線ができやすい位置にあるのです。

では「前線」が波とどのように関係があるのでしょう。

波が生まれる主な素は「風」です。
海上で吹く風が強く、吹き続く距離が長ければ、ウネリが力を持って岸にたどり着きます。

「風」とは空気の塊が移動すること。空気の流れです。

停滞前線の北側では東寄りの風が、南側では西寄りの風が吹いていますが、何らかのきっかけによって低圧部ができると、前線面のバランスが崩れて低気圧が発生します。

低気圧は渦巻きを作るように発達していきます。
南側の暖気と北側の寒気がぶつかり合い、つまり、前線に向かって風が吹き込み、温暖前線と寒冷前線を作ります。
温暖前線と寒冷前線に挟まれた部分は「暖域」といい、南~南西風が吹いています。
また、温暖前線の北側では東~南東風、寒冷前線の北側では北寄りの風が吹いています。

日本には四季があり、季節ごとの気圧配置のパターンや波の傾向がありますが、低気圧の多くは日本付近を通過する際に発達していきます。
発達するということは吹き込む風が強まるとういうことですから、海上で風が強まれば、波も強まるということにつながっていきます。


さて、今回は前線とはいかなるものなのか、種類と特徴についてのお話をしました。
長くなりましたので、前線と波との関係のお話は次回に続きます。

気象予報士
塩田久実