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霧  【2020.07 過去記事】

5月、6月と、ここ千葉ではたびたび霧が発生し、日中もずっと続く日がありました。
日頃波チェックをしていると、乾燥していて水平線がしっかりと見える日、湿度が高くぼやけている日など、日々景色は変わりますが、霧が出ている日は水平線がどこにあるのかわかりません。


濃霧

先日、波は何とか見える程度の霧の中で海に入っていたところ、友人から「これ何の霧?」と聞かれたりもしたので、今回は霧についてのお話をしたいと思います。
霧というと、朝方に多いというイメージ持っている方も多いのではないかと思います。
その発生要因は色々とあり、発生は朝だけでもありません。

まず、霧とは?
無数のごく小さな水滴(霧粒)(寒冷地では水滴ではなく氷の結晶の場合もある)が、地面に接したところの空気中を漂い、遠くがはっきり見えない現象です。
地表面付近に出来る雲のことで、空気中の水蒸気が多くなりすぎたり、水蒸気を含む空気が冷えることで発生します。
霧はいくつか分類されていて、それぞれ名称もありますが、要因が複合して発生する場合が多いです。
視程(水平方向で見渡せる距離)1km未満を「霧」、1km以上を「もや」と呼びます。

また、濃霧注意報の基準は地方に異なりますが、視程が海上で500m以下、陸上で100m以下に定められています。

では、どんな霧の種類があるのかとういと、①発生する要因、②発生する場所、などによって分類されます。
それぞれを簡単に説明します。

① 発生原因による種類
・移流霧
暖かく湿った空気が冷たい海面上を流れ込んで、海面付近がキーンと冷やされて発生。梅雨~夏に北海道や三陸沖、春先~梅雨に瀬戸内海などで発生する。南寄りの風が吹いていて、濃霧になりやすく、長時間続くことも多い。

・滑昇霧
山の斜面に沿って上昇した空気が冷えて発生。天気が悪い時に山にかかっている雲も、いわゆる山霧です。

・混合霧
暖かく湿った空気と冷たい空気が混合した時に発生。水温が違う川の合流地点などで発生しやすい。

・蒸気霧
冷たい空気が暖かい海や川、湖などに流れ込むと、水面から蒸発した水蒸気が冷やされて発生。湯気と同じ。真冬の日本海や、秋~冬などに川や湖付近で見られる(川霧)。

・前線霧
前線付近で発生。暖かく湿った空気と冷たい空気の混暖や、暖気の中で発生した雨粒が、下の寒気の中に落下していくときにできる。

・放射霧
晴天で風が弱い夜~朝にかけての放射冷却によって、地表付近の空気が冷やされることで発生。前日に雨が降って、暖かい空気が残っているときに、急に晴れると濃霧になりやすい。気温の上昇とともに消滅する。また、盆地は夜間に冷気が溜まりやすいため、発生しやすい(盆地霧)。晴れ霧ともいう。

② 発生地域による種類
・海霧→海上で発生する。移流霧のことが多い。
・川霧→川の上に発生する。蒸気霧
・都市霧→都市や工場付近などで出る排気ガスや煙、粉じん(エアロゾル)が核となり、そこに小さな水滴がついて発生する。
・盆地霧→盆地に発生する。主に放射霧。
・山霧→山に発生する。放射霧、滑昇霧のことが多い。

と、こんな感じで霧には種類があります。


さて、終日沿岸に霧が発生していて、質問されたのが6月27日でした。

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梅雨前線が沿岸にかかっています。
この日の千葉外房付近の状況は、

気温:最高27℃前後 最低21前後
風:東~南風(変則的に、弱め、もしくはやや強い)午後は南寄り
水温:暖かめ

ここから考察すると、

前日の日中には、沖合に一時的に赤潮が発生していたのを肉眼でも確認しており、決して水温は低くはありませんでした。
気温に比べ、水温の方が低いのは間違いありませんが。

海沿いの国道や海の前の駐車場では視界はわりと広かったものの、海に入っていた2時間ほどの間に20メートルほどしか見えなくなったり、一時的に100~200メートルほど見えたりと変化しながらも、海上は真っ白な霧に覆われていました。
海上~海岸付近に発生していたため、発生地域による表現では「海霧」というのは間違いありません。

海に発生し、長時間続く霧というと、

上記の説明から、「移流霧」なのではないかと思いたいところですが、海上では露店温度(空気中の水蒸気が凝結して露となる温度)が海水温より高い状態となれば、すかさず霧は発生します。
「混合霧」や「前線霧」なども複合しての発生しでしょう。

この日はコシ~ハラと小さく、波も何とか見えていたためさほど危険はありませんでしたが、濃霧の場合、波も見えづらく、近くにいる人にも気づかず接触してしまったり、ということも考えられるため、充分ご注意くださいね。


5月に梅雨前線が南の海上に現れて以降、今日までほぼ途切れることなく日本付近に停滞しています。
7月に入り前線の活動が活発化し、今後もまだ続く予想です。
甚大な被害がこれ以上拡大することがないよう祈っております。

また、先日サーファーの落雷事故が発生しました。
雷が鳴りだしたときには、最後の1本を待って上がるのではなく、速やかにパドルで上がり、姿勢を低くして安全な場所へ移動してください。
どうか安全にサーフィンが楽しめますように。

気象予報士
塩田久実