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賢者のセックス

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小説「賢者のセックス 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと」一覧
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2022年1月の記事一覧

賢者のセックス / 終章 小さな光と三百万円 / 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと

第75話 原稿用紙の衝撃  これで僕とソラちゃんのセックスに関する全ての調査が終了ということになった。  もちろん、僕とソラちゃんがセックスをしなくなったというわけではない。あの後も僕たちはセックスをしているし、ソラちゃんは時々オーガズムを経験出来るようになった。そしてソラちゃんと僕は射精が終わった後も繋がったまま、取り留めもない話をする。そんな時間が僕は大好きだ。きっとソラちゃんもそうだろう。  六月に入ってからソラちゃんは毎晩、日付が変わるまでパソコンの前に座ってい

賢者のセックス / 第16章 セックスと魔女 / 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと

第71話 最後のセックス  こうして最後の調査が始まった。  シャワーを浴びた僕たちは、二人で話し合って作った手順書を時折確認しながら、お互いの身体を注意深く愛撫していった。そこに書かれていたのは、僕たちが普段しているセックスの流れをベースに、トッピングをちょっと多めに追加したものだった。普段と違うことをしたら、対照実験として成り立たないのだ。この実験での大きな変更箇所は一つだけ。僕のものとソラちゃんの間にコンドームが存在するか否か。  僕たちはベッドルームで裸になって

賢者のセックス / 第15章 指輪とコンドーム / 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと

第67話 惜別  大磯への一泊旅行から戻ったソラちゃんは、それまでとは打って変わって快調に小説を書き進めているようだった。毎晩メッセージで「今日は三〇〇〇字書いた」「今日は二五〇〇字」「二章まで終わったよ」「もうちょっとで三章終わる」といった具合に、その日の進捗を教えてくれるようにもなった。伝奇ものやセカイ系というアイデアは捨てたらしいけれど、どんなものを書いているのかは「秘密」なのだという。 「どこかで見たようなものを追うのは止めたんだよ。いつ何があるかわからないもんね

賢者のセックス / 第14章 一等星と六等星 / 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと

大磯  四月も四週目に入った平日の午後、僕たちは品川駅の一二番ホームで東海道線の熱海行き各駅停車に乗った。大磯駅まで一時間。僕たちは隣り合って座っていたけれど、会話はほとんどなかった。かといって二人ともスマートフォンを見たりすることもなく、音楽も聞かなかった。ただただ、僕たちは無言で隣り合って座っていた。時折触れるソラちゃんの肩から体温が伝わってくるたびに、僕のみぞおち辺りで何かが蠢いた。  大磯駅で降りてタクシーに乗って一〇分後。僕たちは大磯プリンスホテルのロビーにいた

賢者のセックス / 第13章 精液と神社 / 彼女がセックスについてのファンタジー小説を書いていた六ヶ月の間に僕が体験したこと

憑坐  ソラちゃんは小説の構想を思いつくと、食事の時に僕に説明してくれるのが常だ。僕に説明しながら、頭の中を整理しているようでもあった。例えばこんな風に。 「今悩んでるのはね、君と私、もちろん小説の中では別のキャラになるんだけど、私たちそれぞれの位置づけね。正常位でしてる時に出てくる水天宮の御祭神が天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)だったでしょ。水と子供の守り神の。あれが気になってるんだよ」 「どんな風に気になるの?」 「街は私たちの夢を見ている。その夢の中で私たちは