まなべ農園開園記念 大試食会 報告レポート
【こちらはまなべ農園を運営されている真鍋和孝さんの思いをより多くの方へ届けるために内容を全て公開しております。その思いが少しでも届いたならば、ぜひ下記URLをご覧下さい】
・2018年9月1日(土)開催 「まなべ農園開園記念 大試食会」
このイベントはまなべ農園園主、真鍋和孝さんが育てた野菜を試食しながら農業を志したきっかけや、野菜に込めた思いを伝えていました。まずは農業を志したきっかけをご紹介致します。
【なぜ農業の道へ進もうと思ったのか?】
真鍋さんは以前、バックパッカーで釈迦が悟りを開いたブッダガヤ(インド)を訪れました。その寺院の近隣にある図書館にて日本で出版された一冊の本に出会います。それは青森県でリンゴ農家を営む木村秋則さんについて書かれた「奇跡のリンゴ」という書籍でした。
「奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録」幻冬舎
木村秋則さんという方は、青森県でリンゴ農家を営んでおりますが、妻が農薬にとても弱くそれを使うたび寝込んでしまうほどでした。そのような姿に心を痛めそれならば農薬を使わないリンゴを栽培しようと試みて実際にそれを実現された方です。しかし、リンゴを無農薬で栽培することは、野菜とは全く異なった難しさがあり、それを実現されるのは本当にすごいことです。そしてこの書籍の中で、木村秋則さんがリンゴを栽培するにあたってどうしても避けられない害虫やそれにまつわる病気とどう向き合っているのか述べています。
【木村秋則さん「奇跡のリンゴ」より一部引用】
『そもそも自然界には害虫や益虫などいない。私たちから見て害虫に見えるものでも自然界から見たら何かの役に立っている。それを一方的な目線で判断し、悪者だから殺してしまう。そう捉えるのではなく自然のサイクルから見たら虫というのは何かを食べてくれる存在であり、食べられてしまうものかもしれない。それらを人間が勝手に分けてしまったら、そのような虫が自然界から消えてしまい生態系のバランスが崩れてしまう。それが結果的に病気などの発生源になってしまう』
このような内容が書籍に書かれており、この『害虫も益虫もない』という概念に真鍋さんはとても心を動かされ、その後社会人として働きながらも、自然の景色を見たり、食事をするときなどにふと思い出し、あれはとても素敵な考えだったと感じていました。そのようなことから
自分自身が思う世界観の哲学を自分の畑で表現しよう!
そう考え実際に行動を起こし、現在は農薬や外部からの肥料は使用しない畑で農業と向き合っています。
【実際に畑ではどのような野菜を栽培しているのか】
まなべ農園では季節ごとに様々な野菜を栽培されていますが、今回は数種類の野菜をご紹介していただきました。
【かぼちゃ】
・打木赤皮甘栗南瓜
・ダークホース
・くり将軍
・くり姫南瓜
・プッチィーニ
真鍋さんは大のかぼちゃ好きで、現在この農園では5種類ほど栽培しています。なぜそれほどの魅力をかぼちゃに感じているのかというと、ひとつひとつが全く違う形として存在している芸術作品だからです。スーパーで見かけるものは小さいサイズにカットされていたり、同じ形のものが並ぶことが多いですが、畑にはそれこそイノシシやネズミなどが食料を求めてやってくるため、かぼちゃに噛じりついた跡が残ることがあります。しかし、それは人間の個性のようなもので、噛じられながらも成長し種を残すことで次の世代へ引き継ぐことが出来ます。さらに残飯処理として他の野菜と一緒に畑に捨てても、かぼちゃだけは土の中から芽を出すほど生命力が強く自然の中で生き抜く力がとても強い存在です。そして収穫後、他の夏野菜は冷蔵保存をしていないと傷んでしまいますが、かぼちゃは常温保存が可能な為、食べるまでの間、目で見て楽しむことができます。このようなことからとても愛おしさを感じてしまう野菜です。
【ジャガイモ】
・インカの目覚め
・アンデスレッド
・北あかり
ジャガイモはメークインや男爵イモが一般的ですが、本当はそれだけではなく何百種類という数がありその中でも特に素晴らしいのは、この1個がすでに「種」であるということです。ジャガイモは土に植えるとそこから芽を出し土の中にたくさんのこどもをつけます。そのため食べるときはジャガイモのエネルギーが詰まった種を食べている、ということになります。
【オクラ】
・沖縄島オクラ
オクラは生で食べられる野菜なので茹で過ぎないことが大切です。そして初夏に採れたものと、時期の終わりかけに採れたものでは味わいが変わってくるため、出来始めのほうが皮が柔らかく、それこそ畑でそのまま食べると、とても美味しいそうです。
【ズッキーニ】
・ゼルダ・ネロ
・ゼルダ・ジャッロ
・ステラ
一般的に、ズッキーニは緑色が主流のためこの色のみと思われがちですが、その他にも黄色のズッキーニやきれいな花をつける種類があり、見た目の美しさからその花が料理に活用されることがあります。
【ナス】
・炒めて台湾
・華麗なインド
・揚げてトルコ
ナスの世界も非常に奥が深く、名前からわかるように種業者が各々品種改良を行っています。
【トマト】
・アムールタイガー
トマトは南アメリカのアンデス地方(乾燥地帯)からやってきた野菜であるため日本で栽培を行う場合、冬~春先に収穫するほうが本当は美味しいそうです。そしてトマトの味わいには湿度が影響してくるので、夏場のような高温多湿の気候条件になってしまうと、どうしても割れたトマトが出来てしまいます。
【キュウリ】
・ゴジラキュウリ
スーパーには形が揃っている野菜が主に販売されていますが、このきゅうりはトゲトゲがしっかりついた個性的な存在です。このような野菜がいるからこそ、これらを初めて見た時の驚きにつながり、そこから野菜の世界におもしろさがうまれてきます。
このようにみていくと野菜のネーミングには個性があふれています。しかし、真鍋さんはなぜ市場に出回っている一般的な野菜ではなくこのように個性あふれる野菜を育てているのでしょうか?
【なぜ、個性的な野菜を多く育てているのか?】
農家のような栽培者の観点から見ると、早く成長するものや形が揃う野菜で市場が占領されています。それは多くの消費者が望んでいるのものであり
「高価格で買い取ってもらえる野菜を作れ」
「売れない野菜はやるな」
そのように役所に言われることがあります。しかし、その言葉をそのまま受け入れてしまうと個性ある野菜はどんどん失われ、多様性がない世界になってしまいます。そしてゆくゆくは、本当においしい野菜を作る農家の担い手がいなくなってしまうことにつながります。
どんなにその野菜をおいしいと思ったとしても、購入する方がいなければ農家の収入にはならないため
「もうその野菜は作らないでおこう・・」
そう考え、本当は美味しい野菜のはずなのに市場から消えてしまうという現実が起こり得ます。そうならないために、真鍋さんはまわりからどんなに反対されようとも
自分で蒔きたい種を蒔き
育ちたいように野菜が育ち
買いたいと言う人に野菜を届ける
その流れを今、まさに作っているところです。
そして野菜を使い料理をする、ということは自分で芸術作品を作っているようなものだと仰っていました。さらに野菜は、形や大きさが異なるためそれが個性になりそれぞれがこの世に1つしかない存在となります。
だから、本当はもっと野菜を過剰評価するべきです。
それは何千年も前から野菜を栽培しこれらを選んできた、という人間の存在がすごいから野菜の素晴らしさにただ気付いていない、というだけなのではないでしょうか。
太陽の光をたくさん浴びて光合成を行い
その太陽エネルギーを実に溜め込み
最後は種につないで次の世代へ引き継いでいく。
その過程が本当に素晴らしい。
時々、イノシシやネズミに噛じられながらも生き抜いて
食卓にあがる野菜というのは本当に価値がある。だから役所などに
「そんな野菜は稼げないからやるな!」と言われても
自分の好きな野菜をおいしいと言ってくれる方に届けられたら
本当にそれは嬉しいことです。
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