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(今さらだけど)チケット不正転売規制法

学びの記録

読んだ本

法律の目的と意義

<目的>
・興行主等から入場を拒まれることのない、有効な興行入場券が流通すること
・”有効な興行入場券が適正な価格で流通する”という意味での適正な流通の確保

<意義>
・興行主等の利益を保護する
・特定興行入場券の不正転売等の罪は社会的法益に対する罪である

主な内容

1. 特定興行入場券の不正転売等の禁止措置
2. 興行入場券の適正な流通の確保に関する措置

チケットとその他の物・サービスとの違い

チケット=その場にいる権利ゆえ、物品よりも非代替性・希少性が高い

既存法律との関係

<古物営業法>
・興行主等から購入されたチケットを転売者が買い取った時点で古物営業法上の古物になる
・転売者が古物営業許可を取得することも可能だから、古物営業法だけを根拠に取り締まるのは不十分
・古物営業法は盗品の売買防止や速やかな発見を目的とした別物なので、古物営業法の許可があってもチケット不正転売禁止法の適用はありうる。

<刑法(詐欺罪)>
・転売=詐欺と捉えるパターンは2つ
 1. 転売目的を伏せてチケットを交付させる、興行主やプレイガイドに対する詐欺
 2. 本人でないと入場できないことを伏せて転売する、購入者に対する詐欺
・特に2の場合、入場できないリスクを承知した上で買ってしまえば詐欺罪は成立しない

<物価統制令>
・”不当ニ高価ナル額”に該当するかどうかが争点になる
・適正価格=窓口売出価格なのか、適正価格をどれくらい超えていれば”不当ニ高価ナル額”なのか、近年の判例がなく明らかではない

<迷惑防止条例>
・公共の場所で入場券などを転売目的で買ったり売ったりすることが禁じられている
・が、都道府県によっては、電子チケットが入場券に該当しない、ネット上の売買が公共の場所に該当しない場合がある

<民法の解釈>
・転売が禁止されているチケットを転売する行為は、契約上の地位の移転または債権譲渡にあたる
 1. 契約上の地位の移転と考える場合、興行主が許諾しない限り効力は生じない=転売チケット購入者の入場を拒める
 2. 債権譲渡と考える場合、譲渡禁止特約について悪意または重過失である=転売チケットの購入者の入場を拒める
・チケット=無記名債権とする見解もある。その場合、チケットは譲渡性を有する

禁止対象

特定興行入場券の不正販売
興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主などの当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの

不正転売を目的とする特定興行入場券の譲受け行為

単独では適正な流通を直接に侵害する行為とは言えないが、不正転売に向けた「仕入れ行為」のため、適正流通が侵害される危険を惹起させる行為
(※不正転売に限らない転売目的の譲受け行為も悪質であるが、刑罰権の行使は謙抑的であるべきであるため、業として不正転売を目的とする譲受け行為に限定した)
(※botの使用によるチケット購入は転売目的の場合が多いが、直接的にbotの使用を規制しなくても、不正転売を禁止すれば自然に使用が減少すると予想される)

細かい定義

<特定興行入場券とは>
興行が行われる特定の日時及び場所ならびに入場資格者または座席が指定された興行入場券のうち、興行主等がその売買契約の締結に際し、
①興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、
②入場資格者または購入者の氏名及び連絡先を確認する措置を講じる
かつ、これらの内容をチケット券面に表示しているもの

・チケットを買うための整理券や予約券は規制対象ではない
・日時や場所が指定されていないチケットだと、購入者や入場資格者を特定し、転売チケット購入者の入場を拒むという運用が難しいため、規制対象は日時や場所が指定された興行のチケットに限る
民法の解釈に伴い、特定の入場資格者または座席を指定したものに限る
 ※指定される時期は限定されていないが、会場に入って座席が決まるパターンだと、チケット=入場引換券とみなされる場合があり、その際は興行入場券に該当しない=特定興行入場券にも該当しない

業として
反復継続の意思を持って一定の行為をすることをいう

<抱き合わせ転売>
仮にチケット分の内訳が定価を上回っていなくても、抱き合わせた商品の価格が相場より高ければ、特定興行入場券の不正転売に該当することもありうる。行為形式を整えて実態を偽ることによって規制を免れることはできない。

特定興行入場券の不正販売

興行主側の事情(転売禁止の旨の明示や、氏名・連絡先の確認措置を講じていること)を要件にしているのは、処罰範囲を限定するためであり、興行主側の利益保護が目的ではなく、また社会的法益に対する罪であることとは矛盾しない。

興行入場券の適正な流通の確保に関する措置

特定興行入場券の不正転売等の禁止措置との両輪で、適正な流通を確保する。(以下の措置では完全に防止しきれない不正転売等について、罰則をもって禁止としている。)

1. 興行主等による特定興行入場券の不正転売の防止等に関する措置
2. 相談体制の充実
3. 国民の関心及び理解の増進
4. 施策の実施に当たっての配慮

興行主等に対して
興行を主催しチケット販売を行う立場にある興行主等が対策するのが最も効果的であると考えられるため、必要な措置を講ずることを求めている。

・入場者の本人確認措置などを講ずる努力義務
・興行主等以外の者が興行主の同意を得てチケットを譲渡することができる機会の提供を講ずる努力義務

一方で、チケット転売のプラットフォームになる事業者に対しては、特に規定を設けていない。
不正転売等が違法行為とされる以上、プラットフォーマーの行為が共同正犯や幇助犯などの成立要件を満たすなら犯罪に当たりうる。したがって、不正転売に該当する出品が確認された場合は、速やかにこれを削除することが望まれる。


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