11/2〜3 猫八

また一つ歳をとった。誕生日の前はなんとなく京都タワーを見たくなる。今年の京都タワーはオレンジ色に光っていた。去年は転勤だったので、紛らわしに栄にあるテレビ塔が見える公園でぼーっとしていた。今の今までなんとなく時間を過ごしてきた。20代入りたての時に感じていた私の身体を蝕む劣等感はそんなに感じる機会も無くなってきて、共存しているふうに思える。己の劣等感故に出会えた人、またその劣等感によって別れてきた人達もいる。そんな人とインターネットで知り合って、京都タワー内で別れ、連絡はそれっきりになってしまった。友達で居たいと思う人ほど、同じものを抱えていて、同じものに傷付きやすい、そんな人ほどかける言葉がなくなってくる。結局その人の年齢も名前も知らないままだった。

年齢を重ねる毎にかけるべき言葉とか、伝えたかった言葉が募るばかりで、それは映画のエンドロールを見ている時間と似ていた。頑固親父が自分の事をなにも話さない気持ちも少しわかるような気がした。

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