ぼくのつぼ
手の届くいくつかのコンテンツには魅力を感じなくなり、また、手をつけていないものに対しては手を伸ばす気力も体力もなくして久しい。
いつも何かを失う僕は、それ自体がエネルギーになり得る何かを失っている。だから、せめて今ある少しのものを大事に抱えている。
中身はよく見えない。自分で入れたはずなのに、わからない。どうすれば、この壺の中を見れるのだろうか。誰かに手伝ってもらうのもいいかもしれない。
そう言って歩く。
何もない。何も見えない。
見えるが、これらではないと思う。
少しずつ遠のいていくのは、私自身のようだ。
壺から紙切れがはみ出している。
ううん、ここはどこだろう。
しかし、いやにここちいい。
足元に散らばった元には戻らないものも、
目の前に広がった取り返しのつかないものも、
なにも気にせず、
ここでまた生めばよいと教わり、
小ささは沈み、
安堵と水面が同期する、
うみは私で、
波が山に、
座標系は存在せず、
互いに揺れる、
揺らぎで満たされ、
輪郭を影で描けるように明かりをつけて、
眩しいのは苦手だけれど、
目をなくさないように、
不可視光色の絵の具を捨てて、
当たり前のような白を、
僕は初めて書いたんだ。
お気持頂戴