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匂いがする映画

ネタバレはやめてねって監督が言ってたので、観て感じたことだけ。映画『기생충-パラサイト-』についてです、内容は匂わせるので観てない人は読まずに楽しんでください…。

この映画は公開前からすごく楽しみにしてて、実際に観てみると質感や湿りっ気や匂いが伝わってくるような映画で終始最高だった。

光のあんまり届かないカビ臭そうな半地下に住んでる貧困層の家族が、高台にある公金住宅街に向かうところ、日差しが強くてギラついててすごく頭が痛くなるし

格差社会のなか貧困層と富裕層が接触する機会はそうなくて、あるとしたら雇用関係だったりパパ活だったりお花畑的展開で結ばれない恋仲とかになったりするのかな〜。と思う。

私も全く富裕層じゃなくて、多分中流階級的な場所出身の者だと自覚するけど、そんな中流階級のなか何不自由なく独り立ちするまでを過ごしてきて思うのはパラサイト本編中の貧困層・富裕層ともに一切生活の質感や物に対する価値観なんかはパッと手にとるようには共感できていない。

唯一理解できたのは、富裕層側の一家の父・パク社長の『超えて欲しくない一線がある』という感覚だけ。

パク社長はじぶんが雇う人間に対して最大限の能力とケアの提供を望んでいるけど、雑談の中やふるまいに"身の程知らず"であることを嫌悪していて、貧困層側の主人公からする地下で嗅ぐようなしみったれた匂いだけがこの一線をどうしても超えてくるんだよなぁとボヤいていた。

(自分の思う超えて欲しくない一線というのは、身分の違いというよりは…親しき仲にも礼儀あり的な一線のことを言うけれど、、、。)

何も情報を見ずに映画館に行って、見終わったまま興奮しながら考察や解説をひたすら読みあさって、どこがどの伏線だの表現だの暗喩だのを答え合わせしたりするのが楽しくて、こういう映画は本当に自分の体の一部になるなあと思う。

うまく脚本を書くための本的なものに
●期待感の積み上げ
●好奇心の煽り
●興味深い状況を作り上げる
ことが必要で

書き手は偶然に頼らずにどのキャラクターもを完全に把握くしていてどのタイミングで何を感じ、何を望んで何を恐れているのかを自分のことのように知っていて、

このタイミングで観る側の人間を恐怖に駆り立てよう、心が震える悲しみを与えよう、主人公と同化するように怒りの気持ちをはらませようと、全て計算して構築すべき。

芸術は燃え盛る炎と算数。
って書いてあったのがめちゃめちゃかっこよかった…。

パラサイトはほんとにそういう映画で、個人の能力や感情、家族としての集団のアイデンティティ・団結力、富裕層と貧困層の対になる構造といろんな角度からみても色んな内容が細かいパズルのピースみたいに綿密に作り込まれていて、思わずうわぁ…と言ってしまう。

序盤に出てくる象徴的な"石"は、何も喋らないし何にも変化しないのに、どっしりとずっとそこに居るだけで物々しい雰囲気を醸すし、

格差社会の構造をカット割りや構図でみせる演出も、なにもかも、すき…。

ありがとうございます。

それと同時に"住む世界が違う人っている"という現実をまざまざと見せつけられて、落ちこぼれたくないけど、本物の"金持ち"なんかにはなれないんだろうなみたいな悟り的感情がふつふつと沸いたのと、

金があって心に余裕があっても、満たされない何かもあり、金がなくて心に余裕もなくて満たされてないけど、何か強烈な絆が結びつきあっていたりするものだなあとふんわり思った。

あと個人的に監督の言葉の選び方とかがすごく好きで…

https://twitter.com/bibim_goayano/status/1218197765299163137?s=21

アカデミー賞、2/10だったかな。
アジア初…いっちゃって欲しいなと思ったのだった。

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