時系列⑩のつづき

夫は泣かない。
どんなに感動する映画を見てても、いい話、感動する、とか口にしてても、感動する歌詞を見せても、絶対泣かない。本人曰く幼稚園の頃から泣いたことがないらしく、涙が出るという感覚がもはやわからないと言っていた。
そんな夫が、今私の目の前で、声を振るわせて、涙を一筋流している
申し訳ない。と
もう私の悲しむ顔は見たくないんだ、と

理解に苦しむ

私を悲しませてるのはあなたで、この悲しみはあなたでしか癒せない。
なぜ今悲しんでいる私から離れて、別の男(不在)に託そうとするのか、、
なんで、自分が幸せにできないからと、幸せになって欲しいからと別の男(今のところ不在)に託すのか、、

ひとしきり黙って考え、
でも、、、私、、、離婚したからって幸せになれないよこのままでも幸せになれない、どっちだって幸せになれないよ、もう遅いよ、
と言いながら抑えてた涙が溢れ出て、
うぇ〜〜ん
みたいな感じに泣いてしまった
ただただえんえん泣きながら、怒りをぶつける様に
私はもうあなたじゃないと無理になってる、他の人は無理、好きかどうかわかんないけど、あなた以外は無理なの!
一晩頭から離れなくて、どんどん怒りの感情が出てきて、このままこの怒りをぶつけないとだめだと思った!そんな物分かりよくできない!
今日もジムに本当は行ってほしくなかった
そばにいてほしかった!
しくしくしく

もう俺の顔も見たくないと思った、、(困惑)

私がサヤカを認めればいいってこと、、、?
いや、そうは言ってない!
でも、、別れないんでしょ?
いや、、まだ、、すぐにフラれると思うし
なんでこっちからフルって話にならないの?
もし話したときに、サヤカが周りに話したり、どんな行動をとるかわかんないのが怖いんだよね、俺今本当に足元すくわれるようなことがあったら致命的だから下手な問題起こしたくないんだ、だからサヤカは既婚者だからいいと思った節もある。だから俺からは言いたくない。そのうちに飽きられるから、そしたらフェードアウトできるかなって

ずいぶん身勝手な、、、自分が何言ってるのかわかってるのかな。

ともかくこの人は、今サヤカと別れる気がない。

絶望的な気持ちになったが、そこで私自身に何度自問自答しても、はい、じゃあ別れましょうという結論が一回も出ない
この人た一緒にいるには、許すしかないのか、、
あぁ、、、また私が受け入れるしかない
わかった。受け入れる。別れないから、このままでいいから。
夫の顔は、えっ?となった
それしかないんでしょ?頑張る、許せないけど、受け入れられるように
、、できるの?
わかんない。

(悲しい。本当に悲しい。わかってる?私、すごく今悲しいんだよ、無理してるの。平気じゃない。そんなに物分かりよくないよ。)
感情をぶつけたい、もう無理だ

ハグしていい?

私は夫を強くハグして、うぁ〜んと大泣きした
大粒の涙がボロボロこぼれる
大人になってからこんな風に泣き崩れるなんて

こんなに悲しいと思わなかった
もっと平気だと思ってたの
覚悟はできてると思ってた
本当に嫌だったの

そう言いながらボロボロ泣いた

夫は、うん、ごめん、うん、と言いながら強く抱きしめて背中をさすった

本当に俺の弱さだと思ってる。ギャンブルとか他に逃げ道はあったはずなのに、なんで女を選んだんだろうって思った。
サヤカと別れたらもう女はいい、、時間ちょうだい、1年。1年後には、はっきりさせるから、、

1年!?1年もサヤカとまだ付き合うの!?え、一年後に私かサヤカかでジャッジするってこと!?

ジャッジ、、っていうか、いや、そうじゃない。1年後にどちらとも別れてもう女とは一生つきあわない

えっ1年後に私とも別れるの!?1年後までこの状態で待てってこと!?

いや、そうじゃなくて、、だってお前、もう俺と一緒にいたくないでしょ?いれるの?

わかんないけど、、1年後にジャッジが降るなんて、どういう気持ちでいたらいいの?

まぁそうだよね、、

↑この件に関してはその後も何度も問い詰めたら、撤回した。どういうつもりで言ったのか、、夫の言ってることははやりいつも意味不明だ。とにかく本当に今は仕事が大変だから、そちら方面のことは考える余裕がないという意味なのだろうか。

寝室にオレンジの光が差し込んでいる。日が長くなってきて、18時なのにまだまだ明るい

どうする、、?この後、ご飯。
と私が言うと、
あ、食べる??
と言った

うん、、お酒飲めるかも。
あ、どっか飲みに行く!?
うん、たくさんは飲めないし食べれないけど、場所、変えたい
そうだよね。どこか行こっか

結局私たちは出かけることにした。

さっきまで大泣きしてたので、顔面は完全に泣き顔だ。目が腫れて、メイクも全落ちである。あんなに擦っても消えないアイライナーが無くなってる、、

メイクを直して、夫のくれたイヤリングをつけた。

大丈夫?お店で泣いたりしない?
大丈夫!もうたくさん泣いたから平気だと思う、でも長い時間はいられない。
そうだよね。サクッと飲んで、すぐ帰ろう、で、今日はちゃんと寝よう

タクシーの中では世間話ができた
さっきまでの出来事は嘘みたいだ。嘘じゃないとわかるのは、夫の声色が優しくてずっと私の方を見て気遣ってくれてるからだ。

お店について、カウンターに座り、夫の腕が当たる距離についてフラッシュバックのように思った
あぁ。サヤカとこうやって隣に並んで飲んだんだ
何飲む?
夫がいつものようにメニューを出して見せる。段取りよく決めて、つまみもお互いの好きなものをサクッと決める。私ともよく飲みには行くので今更であるが、本当に慣れている
いつもこうやって誰が相手でも振る舞うんだな、と思ったら、自分が妻なのか、サヤカなのか、はたまた全然関係のない取引先なだけの女なのか、フワッと椅子から体が浮いたように今自分が誰なのかわからなくなった
自分の特権のように思ってた私。うぬぼれてたなぁと
私のイヤリングを見て、わざとらしく
いいね、似合ってる、かわいい、これすごいね、どのパーツが手作りなの?
私は外して説明した。
ここだよ、いい感じでしょ、私こう言う感じが似合うよね、よくわかったね
そう、似合うと思った!
最近パーソナルカラーを意識してて、前まではあんまりアテにしてなかったんだけど、髪色を黒くしたら、パーソナルカラーのものがグッと似合うようになった
うん!いいよね、最近の感じ!黒髪似合ってる、ここ最近の感じが今まででいちばん良い!

あーだめだ。傷つく。全部そういうの、サヤカにも言ってるんでしょ?

フッと口角が下がり真顔になってしまう
だめだ、、割り切るんだった、今日はもう。 
こういうことか、ドラマとか漫画とかでよく聞くセリフ、プレゼントとか、もらっても、あの女には何色なん?みたいになってしまうやつ、これか。キッツ、、想像以上にキツい、、、

楽しい会話もしながらなんとか耐え、私たちはその店を出た。すぐ目の前にある行きつけのうどん屋のきしめんが食べたいと、夫が行きのタクシーで行っていたので、予定通り向かった
私は全く食べられないが、こう言う時でも食欲がちゃんとあるし食べることを楽しみにできる夫、まじでわからない、ほら、こういうとこよ、わからないのよあなたのこと。

うどん屋さんは混んでいて、2組並んでいた。並んでる間にトイレに行った。トイレのドアを閉めた途端、顔が歪むくらい泣けてきた。
はぁ〜、きっつ。これはキツい。どうしよう、、
なんとか涙を抑え外に出た。夫は私の顔に気づいたらしい
今まで家事に追われながら夫からの圧で泣き顔になっても、ちっとも気づいてくれなかったのに。顔なんて見ないから。気づかなかったくせに。今日は気づくんだ。

少し落ち着いて話をしたら席に案内されて、顔を正面に見ながら、
大丈夫??泣きそう??
と聞いてきた
ふふ、大丈夫。でもちょっと限界かも。
と伝えた。

酔い覚ましに歩いて帰るのが定番なので、二人で歩いて帰った。たわいもない話をしながら歩いた。
家に着いたらコーヒーあるよ、と言っていたのに、冷蔵庫を開けて見てみたら一杯分もなかった。
あれっ??
はっ、昨日私ご機嫌でいっぱい飲んだからだ!
え?昨日?ご機嫌だったの?
そう、みんなでスイーツ食べてる時。楽しくて、、
そっか、、
今作るね

そうか、あれは昨日のことか。ずいぶん前のことみたいだ。




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