時系列⑧急降下

案外スッと眠りについたのに、しばらくしてすぐに目を覚ましてしまった
頭痛のせいかもしれない
まだ若干首筋が痛かった。
夫がまだ帰ってきていないことに気づき、時計を見た。時間は1時をまわっていた
あれ、、???1時間半経ってる?
そんなに電話してるのかな?本当に外にいる??
夫のパソコンのある部屋を見てみると、煌々と電気がついたまま人の気配がしない
私は急激に不安になってきた
そんなに電話対応が必要なことってある?今までも緊急な電話をしてるところは見たことあるが、割とサクッと解決してしまうタイプで、情に任せて相手の話を長々と聞くタイプではない
そういえば前に、自殺願望がある部下がいて、その子の対応にはだいぶ参ってた様子だった
もしかしてまたそういう深刻な問題が起きているのだろうか?
大丈夫??と、LINEしてみたが既読がつかない
気になって、寝ようとしても眠れない
夫が帰ってくるかどうかも不安になってきた
今夜の穏やかすぎる夫にも違和感を感じる様になった
悟った様に穏やかで、突き放すように冷たかった気がしてきた
GPSが欲しい、、夫の居場所を今猛烈に知りたい、家のそばにいるのか、どこか遠くへ行ってしまったのか、、、
目的もなく起き上がって、子供部屋を覗いた
子どもたちの布団を直し、落ち着こうと胸を撫で下ろした。
ふと隣の部屋を見ると、夫のノートパソコンが開いている
夫がスマホで見ていた画面を思い出し、あっ!チャットかメールを見たら何かわかるかもしれないと思いついた
パソコンのマウスをタップしてみる
パッと明かりのついた画面にはLINEがトップにきていた
私がさっき送った大丈夫?のLINEが、未読のままいちばん上にある。
その下に目をやると部下の名前っぽい人、その下は
サヤカだった
サヤカのアイコンの横に、
"電話できるよ〜!"
というコメントがあった
電話???
反射的にクリックすると、サヤカが夫のことを
"〇〇くん"
と呼んでいるコメントが目に入った
はっとして、一気に鼓動が高鳴った
これは、、
さーっと会話の履歴を見る
"めっちゃ好き"
"俺もすき"
"時間なくなっちゃったね、しょうがない、LINEしよ!"
"あとで時間できたら教えてね!"
こんなやり取りのあとの、
"電話できる?"
"できるよ〜!"
だったのだ
履歴は前日の朝までしか残っていなかった
その前は綺麗に消されていた
私はそのLINEの画面を写真にとり、すぐに夫に送った
"めちゃめちゃ浮気してたんだね
本当に仕事で何かあったんだと思って超心配した
もう何も信用しません"
打ち終わる前に、夫から
"戻ります"
とLINEがきた
私から送ったLINEは既読がつかない
トイレから出た私に、
戻ってきた夫は何も気づいていない様子で、制汗剤の入ったシートみたいなのある?、体ふくやつ
と聞いてきた
ない。
一言言って寝室に戻った
しばらくしてスマホを見るとやっと既読がついている。
夫は静かな足音で私の枕元まで近づき、
ねぇ、話聞いてくれる?
と言ってきた
激昂しそうになるのを抑えながら、
あっち行って!話なんか聞きたくない!サヤカとのなれそめ話すつもりなの!?無理!聞かない!
と言って、布団をかぶった
体がぶわーっと暑く汗が吹き出し鼓動が激しく呼吸がはずむ。
まともに話せる状態ではなかった
夫は私の顔を覗き込む様に左右を行ったり来たりしながら何度も話しかけた
ねぇ、聞いて
私:そうやってまたサヤカとも私とも上手くいかせようと思ってんの!?
ちがうから、、お願いだから話そ
このまま寝るつもりなの??
私:いいけど、もう私の体には絶対触らないでね!!!
夫はしばらく黙って、また
ねぇ、話聞いてよ
と何度も言っていた

話を聞くと、夫はやはり、北海道旅行での私の失態がだいぶダメージだったらしくそのことを最初に話してきた
それにもムカついたがなんとか話を聞くことにした
あの私を見て、怒りよりも呆れよりも、悲しみが強かったと。まだ愛を伝えれば続けることができると思っていたのに、あぁもう妻の中では終わっていたんだと気付かされたと
それまでは自分は妻のことを女性として見ていてずっと好きだったが、初めて冷めたという感覚になった。
もう、終わったんだと思ったと。
今まで我慢してきたのは何だったんだ、もういいのかな、我慢しなくて。と思った
そしたらサヤカがいた
サヤカとは最後までしたの?
した、1回
信じないけど?
サヤカ以外はいないの?
本当にしてない。サヤカだけ
信じないけど?
信じられないのわかってるけど、本当にそう。それまでは本当に全部断って我慢してた。だから、なんでよりによって、って思ってる
隠せると思ってた
でも聞いて、俺はサヤカとそうなって、一緒に飲んで好きとか言ってるうちに、あーなんで今までお前にこういう言葉を言ってこなかったんだろうと思った
こういうことを言っていれば、破綻せずに済んだかもしれないのに、お前があぁなったのは俺に責任があると思った。
だから、もう一度、言葉にしてみようと思った
そしたらまた好きになれるかもしれないと思った
実際に最近はお前のこと好きになりかけてた
やっぱり大事にしないといけないと思ったから、お前との関係をやり直すことを考えていた
私:でも、サヤカのこと好きよね??だからしたんじゃないの?
いや。それがわかんないんだよね、、好きって言うか、、、
私:あんなLINEしといて、それはないよ
まぁそうだよね、、
でもなんていうか、本当に仕事が厳しくて辛い時に話してて本当に笑えて楽しくて、リラックスできた
お前とあんなことがあって、仕事もきつくて辛かった
サヤカが息抜きになってたのは事実

なんか夫が可哀想になってきて、全部信じたわけではもちろんないが、葛藤があったことは伝わったし、本当に今まで我慢してきたなら一度の浮気でここまで激昂してる自分に冷めてきて、そんな浮気のことより、夫婦の亀裂についての話に移行した。

話しているうちに、自分にも非があったことを私は認め、謝った。あの時は本当にごめん。失望させて。

それを聞いて夫は何度も、
そうさせたのは俺だから、俺に責任あると思ってる。お前に暗い影を落としたのは事実で原因は俺 俺ではお前のことは幸せにできないんだと悟った
だから俺はお前が浮気したら笑えるわー!とか冗談で言ってたし、実際その男がお前を幸せにしてくれるならそれでいいとも思った
俺ができないことをそいつはできるんだと思った
お前の面倒は一生見るつもりだし、感謝は一生していく、マジで幸せになって欲しいと思ってる
だから、今じゃなかった
今バレたくなかった
このまま、気持ちを伝えていれば関係が修復して元通りになるんじゃないかと思ってた
私も今までの胸の内を話した。決して嫌いなのではなく、嫌われてるから嫌いだと思いこむことで平気なフリを続けていたこと。私にとって、あなたは好きなのか嫌いなのかもはやわからないが、大きな存在であることは間違いないこと。あなたと険悪になったり、叱責されたりすると死にたくなるほど落ち込む。実際に何度も心療内科に通おうか考えた時もあった。でも行かないけどね
最近みたいにあなたの機嫌がいい時は私の心も穏やかだった、私にとってあなたはそう言う存在。振り回されるのも嫌だから、毎晩の電話も嫌になったし、帰ってくるプレッシャーがすごくて怖かった。好きとか嫌いじゃない、ただ、私はあなたには、2.3年前からすでにずっと嫌われてて見放されてると思ってた。
夫は最後の私の発言にだいぶ驚き、
えっ!?そんな前!?と言った
この辺りで、お互いの解釈が全然違うことがわかった
俺は全然終わってると思ってなかった、、だから結婚記念日祝いも普通にした
そうか、本当にお前は終わってると思ってて、そう思わせたのは俺のせいなんだな、、
そんなお互いの今まで言えなかった気持ちを暴露し合ったら、心がすーっと軽くなっていくことを感じた。なんだか前向きな気分になってきた
私:サヤカは、、ホテルに連れ込んだの?それともラブホとかに行ったの?
あぁそれは、、実は、北海道社員旅行の前日に、5時まで飲んだって言ったあの日。
私:ホテルに行く雰囲気になったのをどうにか断ったって言ってたやつ?
そう、そのまま、俺のホテルで飲み直そうってなって、ベロベロになって、そのまま。だからあんまりよく覚えてない
私:おっぱい、、大きかった?
夫絶句。
いや、、、、
私:ははは、良かったね、セックスできて、、
夫:苦笑
どうする???明日の店、行くのやめる?やめても、自宅に二人だけど、、、
あと来週の千葉のホテル、部屋二人部屋だけど、どうする?俺、行かない方がいい、、?
私:あぁ、どうしよっか。
なんかでも行ける気がする。明日、お店も。
ねぇ、このまま続けてみない?
え?続けるって何を?
離婚とか、結論出さずに、とりあえず様子見ない?
え??大丈夫なの?
うんなんか、大丈夫な気がする。
お前がいいならいいけど、、、、サヤカと別れてほしい??
別れられるの??
そこなんだよね〜、、
?(どういう意味?)
もう遅いし、寝たい??ごめんないね、こんな時間まで、、、
うん。寝ようかな。おつかれ
うん、ほんとごめん。

そして私たちは会話をやめた
こっからが地獄の様にキツかった








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