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阿佐ヶ谷スパイダース「桜姫」

鶴屋南北原作をコクーン歌舞伎用に10年前に書いたものが当時お蔵になったが、2019年にようやく陽の目を見たのだという。かなり面白かった。

阿佐ヶ谷スパイダースは最近仕切り直しの劇団化をしたらしい。が、いわゆるプロデュース公演的なものや、企画公演と劇団の何が違うのか。私にはよくわからない。わからないけれど想像で言えば「余計な時間に余計な話をできる間柄なのかどうか」なような気がする。

興味のある題目やテーマより先に「一緒にやる」「一緒にいる」ことを決めた人々。みたいな。古臭い。古臭いけど、古臭いやり方がのべつまくなしダメだなんていうやつの方が信用できない。それを敢えてやる阿佐ヶ谷スパイダースは、ヘンテコだけど面白い。効率とか人気とか知名度とかフットワークの軽さを打ち捨てて、お互いもしかしたらダメかもしれないのに集うみたいな。手間を気にしてたら、劇団なんてやれんだろう。

「桜姫」は劇団の芝居という感じがした。なんというか、音楽や効果音や装置や照明のアナログなかんじも含めて、いい意味で「みんなで考えたかんじ」がする。実態は知らないけど。出ている人たちが「出してもらってる」「出てやってる」「誰かがやっている」感じがない。それがまた非常に良いのだ。

物語は理屈と感覚を、ずっと行ったり来たりする。愛憎と狂気とファンタジーが暴力とセックスを片手に右往左往する。

面白く、わかりやすくもあり、頭を掻き回される。戦後に翻案した手腕が光っている。面白かった。

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