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修士の効用:大学院進学って意味あるの?と思っている方へ

「大学院って何するの? 学部卒業後にもっと勉強するの? なんか意味あるの?」とよく聞かれます。大学院は、より高度な知識と能力を身につける場所です。受動的な勉強だけではなく、能動的な学術研究、つまり自ら問いを立てデータを集め知識を生み出すことをめざします。

で、その意味はいかに? 理系、とくに工学系なら、大学院の意味は明確で、就活に有利。エンジニアになるには修士号は不可欠で、博士号も効果的ですね。

じゃあ文系は? 社会科学系でも学者になるには学位が必要なので、大学教員になりたい人は、もれなくお越しやす。加えて、一般就職でも修士号には大きな意味があるんですよ。

修士課程で身につける社会科学的な知識と能力は、いわゆる高度人材になるためには必須だと思っています。ゴール地点の修士論文に到達するためには「リサーチクエスチョンの設定」「先行研究レビュー」「調査&データ分析」「執筆&プレゼンテーション」などをくぐり抜けねばなりません。だから修論を書くプロセスで、自ら格闘する課題を見つける力、膨大な既存情報を収集・整理・検討する力、論理とデータのみを武器に新しい知見を産出する力、他者にそれを伝えて納得と合意を引き出す力、課題解決に結びつけてプロジェクトを完結させる力が鍛えられます。

以上は形式の話なので、思い切って言うと、内容は関係なし! つまり、どんなテーマを研究しようがOKってこと。テーマの良し悪しは博論では厳しく問われますが、修論では学術の形式が大切です。だからぼくは修論生に「狭い専門性にこだわるよりも、学術の基本的な形式を身につけよう、アカデミズムの徹底こそが就活と人生に役立つ(はず)」と伝えています。

実際にゼミ生の声を聞いてみると、大量の文献を購読したり多様なトピックを扱うことで「圧倒的に世界観が広がった」とか、毎回のゼミでこれでもかというほど徹底的に討議すれば「就活のグループディスカッションなんて無双状態」とか。もちろん就活に限定せずとも「人生を有意義にさせることは間違いない」とうれしい言葉ももらいました。(個人の感想ですけどね)

もうひとつ、狭い専門性よりもアカデミズムそれ自体を大切にすることで、受験生にはメリットが生まれます。それは指導教員や研究室を選ぶときに、研究テーマや専門領域を気にしなくてよくなることです。おっと、言い過ぎ? でも、学者をめざす方はともかく、高度人材になるべく大学院の門を叩こうとする方は、指導教員選びや研究室選びの自由度をもっと高めて良いと思います。簡単にいえば、指導教員の人格や研究室の雰囲気、自分との相性で選べばいい。この先生ともっと話してみたい、2年間この場所で過ごしてみたい、という理由で選んで良いんです。

さて最後に、せっかくなんで中澤研究室の紹介をさせてください。(詳しくは早稲田大学スポーツ科学研究科websiteへ:https://www.waseda.jp/fsps/gsps/ )

Q.中澤研究室ってどんな研究室?

A.スポーツ社会学の研究室です。修士課程と博士後期課程があります。スポーツ・身体・人間に関連する社会現象を、社会学を中心とした社会科学的アプローチから探究する研究を指導します。

Q.具体的にどんな研究をするの?

A.ぼく自身が集中的に行なっている部活研究に限らず、テーマや対象は幅広く多様でOK。権力・ジェンダー・セクシャリティ・障害・逸脱・暴力・格差・差別・組織・ナショナリズム・民主主義・資本主義・近代化・グローバリゼーションetc。各自の問題関心を大切にした、オリジナリティあふれる研究を支援します。

Q.実際の修論生はどんなテーマを研究してる?

A.トップアスリートのドーピング問題とか、中国の青少年スポーツの歴史とか、民間スポーツの台頭と機会格差とか、ストリートダンスの発展過程とか、スポーツ人口動態の計量分析とか、ラグビー人気の隆盛/衰退の要因とか、eスポーツ部のフィールドワークとか。ね、いろいろでしょ。

Q.どんな風に指導してるの?

A.指導方針として重視するのは、①魅力的な「問い」が立てられるようになること、②方法論や分析枠組みを適切に設定できるようになること、③データや根拠を十分に集められるようになることです。フィールドワーク、史資料の蒐集、質問票調査および統計的分析などの調査方法についても指導します。

Q.授業やゼミはどんな感じ?

A.授業では、毎回のゼミにテキストを読んで参加し積極的にディスカッションすること、文献レジュメ発表/個人研究発表/レビュー発表/データ分析を行うこと、そして読書課題に取り組むことを求めます。自分の研究を深めるために最も良いトレーニングは、不思議なことに、他者の研究に効果的なアドバイスをすることです。それゆえ理想的なゼミとはゼミ生相互の白熱討議で満たされることであり、その実現のためにぼくは頑張ります。

Q.大変そうなんですけど...どんな準備をすればいい?

A.正直、負荷は大きいですが、その分の見返りとして充実した学習環境と濃密な2年間で大きく成長できることを保障します。スポーツ社会学の専門的文献を精緻に読むことはもちろん、それ以外に、人文社会科学の幅広い素養を身に付けてもらうため多くの文献講読を課しますので、日本語および英語のハイレベルな語学力が必須となります。

Q.大学院進学したら良いことあるんでしたっけ?

A.はい。上述した一般論を中澤研究室なりに言い直すと、データを集め処理する情報分析能力、自分の言葉で理解し相手に伝えるコミュニケーション能力、課題解決に向けて立案・計画・実施するプロジェクト能力が、ハイレベルな水準で身につきます。狭い専門性にとらわれず、高度な知識と能力を開花させるために有用です。

Q.学費が高いので、進学は無理かも...。

A.学内外にいろいろな奨学金が用意されています。研究室でのジョブとしても、ティーチングアシスタントや研究補助者としてアルバイトする環境があります。経済的にもサポートしつつ、生活バランスをとった学習を支援します。

Q.ちょっと興味が出てきたかも!

では、気軽にご連絡ください。お読みいただき、ありがとう。