セイギのミカタ 第一話「ジャスティス5」

ブラウン管のテレビの中から特撮ヒーローのオープニングが流れる。
テレビのNA「ヒーローにとって、必要なものはなんだ、それは!」
♪「正義のハートと悪をくじく強いパワー それさえあれば みんながヒーロー」

ごみが散乱した部屋でテレビを夢中で見てる少年の背中。

■とある4人家族のリビング。
早朝、リビングで朝ごはんを食べながらテレビで朝の情報番組を見ている家族。
テレビの中のキャスターがニュースを伝えている。
キャスター「政府は引き続き、大手企業へ副業を推進していく方針です」
スタッフから枚の紙がキャスターに渡されてそれを読む。
キャスター「ここで臨時ニュースです。東京都世田谷区の公園に怪人があらわれた模様です」
中継先の映像。公園の噴水前で暴れるお腹に口が描かれた怪人。

■都内公園噴水前。
お腹に口が描かれた怪人『ハラスメン』が暴れている。逃げていく人たち。
怪人ハラスメン「ソノカミガタニアウネー」。
転んで逃げ遅れた3歳くらいの女の子。
怪人ハラスメン「カレシイツカライナイノー」
そのお兄ちゃんらしき5歳くらいの男の子が妹を守ろうと怪人に立ちふさがる。
そこに5人組の戦隊ヒーロー「ジャスティス5」のジャスティスレッドが登場。
ジャスティスレッド「キミのその正義の心。俺のハートに火をつけるマッチになったぜ」

ジャスティス5がヒーロー活動を支援するスポンサーを紹介。
ゼリー飲料を手にしたジャスティスレッド。
ジャスティスレッド「悪と戦うその前に飲んで元気をチャージ。即攻エナジー」
日焼け止めを手にしたジャスティスイエロー。
ジャスティスイエロー「外での戦いもこれで安心。猫背堂の日焼け止め!」
スマホを手にしたジャスティスブラック。
ジャスティスブラック「映えるシーンは最新の高性能カメラ搭載。ニャイホン14!」
ペットボトルを手にしたジャスティスブルー。
ジャスティスブルー「悪との闘いの最中もポカエリアスで水分補給!」

公園にいた人たちがその様子を撮影している。

ジャスティスホワイトが怪人を切りつける。
ジャスティスホワイト「ジャスティスホワイトソード!」
怪人が切られて爆破する。

■ジャスティス5基地。
巨大モニターに先ほどの怪人が爆破するシーンが流れている。
ジャスティスホワイトが決めポーズ。
ジャスティスホワイト「俺のまえでは、悪さえ魅了される」

ジャスティスレッドこと赤名雷(あかならい)。〈20代の若い青年。短髪で180cmの身長。仮面だけを外して首から下はヒーロースーツ〉がジャスティスホワイトの白井奏斗(しらいかなと)〈20代中盤の男性。ヒーロースーツを脱いでハイブランドの私服に着替えている〉を注意している。
赤名(ジャスティスレッド)「何度言ったらわかるんですか!」
白井(ジャスティスホワイト)「みんなが一生懸命ポーズしてる時、怪人すんごいエネルギーためてたのよ。気づいてた?」

■回想シーン。
戦闘中の引き絵。ポーズを決めてる時に怪人がエネルギーで包まれて今にも必殺技を繰り出そうとしている。

■再び基地内。
赤名「もちろん。それでもスポンサーの支援あってのジャスティス5なんです。スポンサー紹介はヒーローにとって必要なことなんです!」
白井「そんなんしてる間に怪人にやられたらどうする?」
赤名「そんなこと絶対にありません!」
白井「すぐに絶対って言うやつの言葉ほど、軽いものはねえぞ」
赤名「俺の『絶対』は軽くありません」
白井「どんだけ重いって言うんだよ」
赤名「毎日、GPSで相手の居場所を管理する恋人くらい重い!」

ジャスティスブルーの青山羽佐間(あおやまはざま)<20代の中性的な人物。男か女か見た目ではわかりにくい〉が嫌な顔をする青山。
青山「重っ!」

ジャスティスイエローこと黄田七子(きだななこ)(女子高生。肩までのボブヘアー)が青山にたずねる。
黄田「それって、重いんですか?」
青山「おまえ、そのタイプ?」

白井が赤名をさらに問い詰める。
白井「じゃあ、そこまで言う根拠は?」
赤名「根拠はあります」

青山がボソッとつぶやく。
青山「STAP細胞かよ」

ジャスティスブラックこと黒崎治男(くろさきはるお)〈40代の中年男性。眼鏡をかけておりいかにも中間管理職的な姿〉が二人を仲裁する。
黒崎「二人とも落ち着いてください」

黄田がみんなに伝える。
黄田「白井さんが紹介するはずだった集芸社さんから、さっきスポンサーを降りるって連絡があったみたいですよ」

ジャスティス5を率いる正義の組織「株式会社ジャスティス」の秘密防衛基地司令長、伊久佐時之歩(いくさときのふ)<50代の男性。口ひげが特徴的>
伊久佐「ということで、レッド!一緒に集芸社さんのところに事情説明とスポンサー継続のお願いにきてくれ」

青山が爪の手入れをしながらつぶやく。
青山「そんなの白井さんに行かせればいいのに」

赤名が青山の肩をたたく。
赤名「まあ、これもリーダーのつとめだ」

青山が赤名の目をじっと見て。
青山「・・・これ、セクハラ」

■ハチ公前(世界観の説明)
待ち合わせしている女性。目をふさがれて、ワクワクして振り向くと怪人がいる。
NA「平和ボケと言われて久しかったこの国に突如あらわれた悪の組織『ジャマーン』。」

ジャマーンのアーク総統と怪人たち。
NA「ジャマーンを率いるアーク総統と怪人たちによって、この国の平和が脅かされていた」

国会の様子。全員起立して賛成をする。
NA「政府はジャマーン対策委員会を設立」

ジャスティス5が怪人の前に現れて決めポーズ。
NA「そこで誕生したのがジャスティス5である。その後の詳細はまた後日」

■集芸社のロビー。
伊久佐「すまんな、レッドにこんなことまで付き合わせて」
赤名「無事にスポンサー継続してもらえましたし、良しとしましょう」
伊久佐「ありがとう。そう言ってもらえると、気が楽になる」
赤名「正義のヒーローと言っても、いち民間企業ですから」
伊久佐「民営化されてもうすぐ5年。やりがい搾取にならないように、ちゃんと適正な報酬をもらえる体制にすることも私の役割だからな」
赤名「みんなそれぞれ生活がありますからね」

■カフェ。
女子高生二人組がスマホで動画を見ている。
そこには白井を含む5人組の動画配信者たちが部屋で語っている動画が流れている。
白井「てか、明日のことさえ古く感じてきたわ」
仲間1「いや、時の流れ早過ぎ」

女子高生A「やっぱ、かなとだよねー」
女子高生B「ほんと、それな」

動画内で決めセリフを言う白井。
白井「俺の前では時さえ魅了される」

■コンビニエンスストア「セーフマート」
レジに立つ黒崎と女性バイト。
バイト「てんちょー」
黒崎「どうしたの、佐藤さん」
バイト「明日なんですけど、休みもらっていいですか?」
黒崎「えー何かあったの?」
バイト「急に親が東京に来てるって連絡があって。だから明日は東京案内してあげたくてー」
黒崎「そうかー。わかった。シフトは私が代わりに入るから」
バイト「ざーす!」

黒崎がバックヤードに行くと更衣室から電話の声が聞こえる。
バイト「うん!明日大丈夫になった。ホントうちの店長すぐ信じるから、ヤバいっしょ」

■黄田の自宅。
自室で勉強をしている黄田。コルクボードには友達や家族などいろんな写真が貼られている。

■真っ暗な部屋。
何もない部屋で青山が目を閉じている。

■集芸社のロビー。
伊久佐「ヒーローも時代に合わせて変わっていかないと」
赤名「ヒーローも副業する時代ですからね」
伊久佐「違いない。レッドも何か考えてるのか?」
赤名「ボクはすべてをヒーローに捧げていますから」
伊久佐「さすがジャスティス5のリーダー・・・」
目の前にあらわれた怪人。
硬い金属でつくられた見た目の怪人〈コンプライアー〉
怪人コンプライアー「コンプラ―」
伊久佐「怪人!」

赤名がジャスティスレッドに変身する。
赤名「正義よ俺に宿れ!」

ャスティスレッドに変身した赤名。
ジャスティスレッド「ジャスティスレッド!」

伊久佐がスマホで連絡。
伊久佐「集芸社前に怪人が出現!ジャスティス5出動せよ!」

怪人コンプライアーが口からおでんを吐き出す。
怪人コンプライアー「アツアツー!」

ジャスティスレッドに命中。
ジャスティスレッド「熱っ!でも、こんなの」

再びおでんを吐き出す怪人コンプライアー。
怪人コンプライアー「アツアツー!」

ジャスティスレッドが華麗にかわす。
ジャスティスレッド「同じ技!くらうかよ」

怪人コンプライアーの金属が熱を帯びて赤くなり殴りかかる。
怪人コンプライアー「タベモノヲソマツニシテハイケマセン!」

怪人の攻撃に吹き飛ばされるジャスティスレッド。
ジャスティスレッド「うわっ・・・」

倒れたジャスティスレッドの前にジャスティスホワイトがあらわれる。
ジャスティスホワイト「スポンサー紹介するのもヒーローの仕事なんだろ」
ジャスティスレッド「ホワイト!」
ジャスティスホワイト「だったら、全員集合するまで待てよ」

ジャスティスホワイトが漫画雑誌を手にスポンサー紹介。
ジャスティスホワイト「あの人気ヒーローマンガも集芸社のジャックで連載中!」

他の3人もかけつけてスポンサー紹介。
ジャスティスイエロー「外での戦いもこれで安心。猫背堂の日焼け止め!」
スマホを手にしたジャスティスブラック。
ジャスティスブラック「映えるシーンは最新の高性能カメラ搭載。ニャイホン14!」
ペットボトルを手にしたジャスティスブルー。
ジャスティスブルー「悪との闘いの最中もポカエリアスで水分補給!」

ジャスティスレッド「みんな・・・」
ジャスティスホワイト「お前の番だ」

ジャスティスレッドがゼリー飲料を手にしてスポンサー紹介。
ジャスティスレッド「悪と戦うその前に飲んで元気をチャージ。即攻エナジー」
5人で集合ポーズ。
ジャスティスレッド「以上、各社の提供でこの戦いはお送りします!」

再び怪人と立ち向かうジャスティス5。
怪人コンプライアー「タベモノヲソマツニシテハイケマセン」
ジャスティスレッド「どうすればいいんだ」
ジャスティスホワイト「俺に任せろ」

怪人が再びおでんを吐き出す。
怪人コンプライアー「アツアツ―!」

ジャスティスホワイトが伊久佐を羽交い絞めにして無理やりおでんを食べさせる。
伊久佐「アツい!」
ジャスティスホワイト「おでんはスタッフが美味しくいただきました」

怪人コンプライアーがダメージを受ける。
怪人コンプライアー「コンプラ・・・」

怪人に攻撃するジャスティスホワイト
ジャスティスホワイト「スタッフは特殊な訓練を受けています!」
怪人コンプライアー「グフゥー――」

唇が腫れ上がる伊久佐。
伊久佐「受けてねえよ・・・」

ジャスティスホワイト「いまどきの動画配信者にとって大事なのは企画力よりも、コンプラを守ることだ」

怪人コンプライアーの言葉にツッコむジャスティスブルー
怪人コンプライアー「ヒーローノクセニソンナコトシヤガッテ」
ジャスティスブルー「『ヒーローのくせに』って言うのも「男のくせにとか女のくせに」と一緒でコンプラ違反じゃない」

怪人コンプライアーが熱を帯びすぎてオーバーロードして自爆する。
怪人コンプライアー「フテキセツナハツゲンガアリマシター・・・」

ジャスティスイエロー「あっ・・・」
ジャスティスホワイト「なんだったんだコイツ」

ジャスティスレッドがジャスティスホワイトに握手を求める。
ジャスティスレッド「助かった!ありがとう!ホワイト!」
ジャスティスホワイト「これで貸し借りなしだからな」

■ジャスティス5基地
唇が晴れている伊久佐が白井、黄田、青山を労う。
伊久佐「みんな、よくやってくれた。戦っているシーンがニュースで流れたときに『集芸社の看板も沢山映っていた』ってスポンサーも大喜びしていたぞ・・・あれ、レッドとブラックは?」
黄田「黒崎さんは、実家のコンビニに戻りました」

■コンビニエンスストア「セーフマート」
レジ前に立つ黒崎。
黒崎「あれっ、佐藤さん」
バイトの女性の佐藤が自分の母親を連れてコンビニ訪れる。
バイト「あーこれがお世話になってるバイト先のてんちょー」
黒崎「えっ、あの話って・・・」
バイト「なんすかー?」
母親「いつも娘がお世話になってます」
黒崎「いや・・・」
バイト「なんか母がてんちょーに挨拶したっていうから来ましたー」
母親「明日も急に休みをいただいたみたいで、ホントすみません」
黒崎「あっ、別に大丈夫ですよ」
母親「すごく良い店長さんだって、いつも娘が話をしています」
バイト「ホント人が良すぎて、いつか騙されるんじゃないかって心配っすよー」
母親「これ、アンタ何言ってるの!」
黒崎「いやー、仰る通りです」

■ジャスティス5基地
黄田「赤名さんはどこ行ったんですかね」
白井「知らねえよ、あんなヒーローバカ」

■赤名の自宅。
家で鼻歌を歌いながらシャワーを浴びる赤名。
赤名「♪正義のハートと悪をくじく強いパワー」
自宅の部屋。撮影するためのカメラや機材が準備されている部屋で鼻歌を歌い続ける。
赤名「♪それさえあれば みんながヒーロー」
赤名が黒いスーツに着替えマントをつける。
赤名「いい歌だけど、歌詞が間違ってるんだよなー」
アーク総統の仮面が飾ってある。
赤名「ヒーローにとって本当に必要なものは、正義の心でも悪をくじく力でもなくて・・・」
アーク総統の仮面をつける赤名。
赤名(アーク総統)「悪の存在だけどね」

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