自己啓発コラム #5

2020年現在、僕には、売れていない芸人が抱える限界の借金があります。
いえ、限界を遥か超えています。
お借りしてるのは、芸人の先輩、バイト先の上司、お仕事で知り合った方、人生の恩人、そして吉本興業です。
早急に返せる当てのない自分に貸して下さった皆様には本当に感謝していますし、一刻も早く返済出来る様に日々動いています。
なぜ多額の借金をしてしまったのか?今なら理由が解るのですが、平たく言うと
「カッコつけ」です。
僕は大阪でデビュー間もない頃から、お世話になっている先輩方に毎晩飲みに連れて行っていただき、トータルでとんでもない額を奢っていただきました。
僕は恩返しをしようと、お笑いで生計を立てられる様になってからは「芸人の常識」として、不特定多数の後輩達にありったけのお金で奢る様になったのです。
大阪で安定してる時期はそれでも良かったのですが、東京へ引っ越してからはそうは行きません。
金銭感覚と、ついでにお笑いの感覚も狂って仕事が無くなっていた僕は、東京で仲良くなった後輩達にありったけのお金で奢り続けました。
結果、9ヶ月で家賃が払えず引っ越す事になります。
それでも借金をし、後輩達に奢り続けました。
「R-1ぐらんぷりで優勝した芸人」として「面白い先輩方に奢っていただいた恩返し」のつもりで、毎晩、暴飲暴食を繰り返しました。
ある日僕は仲良くなった後輩に「カッコつけ」で、こんな事を言ってしまったのです。
功太「今日、肉か魚どっちがええ?」
後輩「この前、魚だったんで、今日は肉っすかね?」
功太「ほな焼肉で。誰か仲良い後輩呼んでええで?」
後輩「そうっすか?じゃあ誰か誘ってみます」
〜数時間後〜
後輩B「おはようございます」
後輩C「お疲れ様です」
後輩D「初めまして」
後輩E「こんばんわ」
後輩F「こんちはー」
後輩G「こんちは!」
後輩H「こんちはぁ」
と、この様に、落語の町内の若い衆の様に続々と後輩が集まります。
ドラクエで言うところの、くちぶえで呼んだマドハンドです。
後輩の後輩とも連絡先を交換し、また個人的に飲みに行く様になります。
後輩の後輩と飲みに行く時に、後輩の後輩の後輩を呼んでもらい、その後輩ともまた飲みに行く様になります。
こうして僕は気づかぬ内に
「何もしなくてもお金が出ていく」
逆ネズミ講システムに陥ったのです。
結果、いま僕は「荘」に住んでいます。
「トキワ荘」とかの「荘」です。
お金が無いくせにカッコつけて後輩に奢り続けた結果「タワーマンションから荘」です。
「借金して後輩に奢った」と言えば豪快で聞こえはいいですが、事実、僕は計画性も無くお金を使い、後輩の大切な時間を奪った愚者です。
奢っているのでは無く、驕り高ぶっていたのです。
程度の差はあれど、皆様も見栄を張って失敗した事はございませんか?
身の丈ギリギリのお金の使い方をすると、時として「ケチ」の烙印を押されます。
ですが
「人様にお金を借りて奢る太っ腹」

「人様に迷惑を掛けない身の丈を知ったケチ」
の、どちらが正しいかは言わずもがなです。
いま僕は借金を返す為、後輩に缶コーヒーすら奢らない、芸人一のケチになりました。
両極端を経験した僕からのお願いです。
後輩に奢る立場にある皆様、どうか間を取って
「使う時は使う豪快なケチ」
になって下さい。

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