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情報が足りないのに、悩んでも仕方がない

私は以前コンサルティング会社に所属していました。

お客様が抱えている課題を解決することがコンサルタントの仕事です。その答えを出すためにファクト(事実)を集める、ということが基本動作になります。
競合や市場、お客様の業務やシステム、などさまざまな観点でファクト(事実)を集め、情報を整理したうえで問題に対する解を導き出します。
最終的に「御社は〇〇をすべきです」という明確な意見をまとめ、ご提案をしなければいけません。

根拠をもって、自分の見解を持つこと。
このことは、コンサルティングファームでは「ポジションをとる」という表現をします。

新人コンサルタントのときに、私は先輩からよく注意をされました。

例えば、お客様企業の業務プロセスの見直しをするプロジェクトでは、コンサルタントとしてお客様に「御社の業務はこうあるべきです」というご提案を根拠をもって説明することが求められます。

このような姿勢が自分には足りず、ただ情報をまとめただけの資料を作成してしまうことがありました。
明らかになった情報を集めることはできたのですが、「すなわち、御社はこういう施策を選ぶべきです」というメッセージがなかったのです。

これは情報だけを示し、「結論は御社で出してください」と考察をお客様まかせにしているのといっしょ。
お客様も最適解を知っているわけでなく、だからこそ私たちコンサルタントに相談をします。その提案を怠けてしまっていたのです。

そんなときは、先輩からはよく「で、結論は何?ポジションをとりなさい」と注意されました。

自分の意見を明確にして、根拠を示しながらご提案をする。
不慣れなうちは大変でしたが、この思考訓練を実践で積むことができ、どんなときでも自分の意見を明確にする習慣がつきました。

コンサルタントの仕事をして学んだこと。
それは「答えは、必要な情報を集めて整理しないと出すことができない」ということです。

自分の意見を明確にするために、明確な答えを出すためには、以下の2つの工程が必要になります。

①今持っている情報やアイデアを整理する
②結論を出すための情報を集める

まずは、自分の頭の中をすべて書き出してみる

感情的な好き嫌いや、直感めいたアイデアも含めて、ぼんやりとした意見や考えはだれでも持っています。
少し難しいのは、このぼんやりとした考え方を形のあるメッセージにしていくことです。

最初に行うべき行動はシンプルです。

まずは自分の頭にあるぼんやりとした考えをひたすら「書く」ことです。
ノート、メモ帳、word、なんでもいいのでまずは書きまくってみます。
まとまった内容でなくてもよく、とにかく頭に浮かんだことを書いてみます。

文章でも、イラストでも、とにかく頭の中にあることを目に見える形にしていきます。これだけでも、頭はかなり整理されます。

そうすることで結論のぼんやりとした輪郭が見えてくるものです。
ある程度考えをアウトプットできたら、そこから意見をまとめていきます。

考えが整理されていないと、ずっと不安なまま悩み続けてしまうこともあります。

例えば、仕事がたまっていて漠然とした不安がずっとつきまとっているとき。なんだかぼんやりとした焦りと不安に襲われるとき。
そのときは、やるべきことをリスト化して、どのタスクをどのような順番でいつまでに行えばいいか、明確にしていくだけでかなり気持ちが楽になります。

悩みや不安が漠然としていたら、そもそも何に対して不安を感じているかを書き出してみるだけでも意味があります。

あいまいな頭の中を、目で見える形に変えていくこと
これが不安を解消していくための第一歩
と言えるでしょう。

いくら考えても答えがでないのは、必要な情報が足りていないから

一方で、どれだけ考えても考えがまとまらなかったり、良いアイデアが出てこないこともあります。
ここで思考がとまってしまっては前に進めなくなってしまいます。

考えがまとまらない、答えがわからないときはほとんどの場合が、必要な情報が不足している場合です。

例えば、友人に「今日は傘を持って出かけたほうがいいかな?」と聞かれたときのことを考えましょう。

これに対する返答は、2種類のはずです。

①今日は傘を持って行ったほうがいいよ
②今日は傘は持っていかなくていいよ

どちらの意見であっても、天気予報の情報を正しく知っていないと答えることはできません。
天気予報の降水確率を調べることができなくても、空を眺めて曇っているか、晴れているか、まずは情報を集めることから始めるはずです。
この問題に延々と悩み続ける人は少ないと思います。

「今日は傘を持っていくべきか否か」

このような簡単な検討であればすぐにわかるのですが、少し問いが複雑になると延々と悩んでしまう場合も多いです。

例えば、今後のキャリアを考えたときに、「転職をするべきか/今の会社に残るべきか」という問題でずっと悩んでいる人がいたとします。

この問題は、傘を持っていくべきかどうか、という検討に比べたらかなり複雑に見えます。

しかし原則は共通しています。やみくもに悩み続けるのではなく、まずは必要な情報を集めることから始めるべきです。

転職市場の自分の市場価値は?転職希望先の働き方は?転職をするときにどのような判断軸を持てばいいか?

例えば、転職エージェントと会って面談をするだけで自分の市場価値や転職先の可能性についていろいろな情報を教えてくれるでしょう。

年収、仕事内容、勤務地、など転職では重要な観点がたくさんあります。
企業Aは「年収〇〇で勤務地は東京」、企業Bは「年収〇〇で勤務地は転勤もありそう。しかし自分のやりたい〇〇の仕事ができる」など、まずは片っ端から情報を集めます。
転職に関する書籍も、本屋にいけばたくさんあります。それらの本の中には、転職の判断軸について明確な提案が書いてあるものです。

とにかく漠然とした不安や、考えがまとまらないときは、情報を集めることが最初の第一歩です。

私も考えても考えてもにっちもさっちもいかなくなったときは、「そもそも、結論を出すために必要な情報は足りているか」を点検するようにしています。

以前、「「人生100年時代」の働き方に社会人の8割が「不安」 その理由は……?」という興味深い記事がありました。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1809/27/news129.html

社会人へのアンケートをとった結果、キャリアについては76.9%が「(寿命の延長によって)自身のキャリアがどうなるのか不安だ」と回答しているそうです。

仕事を引退後、生活費をまかなえるのだろうか
自分の能力や健康を維持できるだろうか
そもそも仕事を引退後何をしたらいいかわからない

たしかに将来のことを考えると漠然とした不安が様々押し寄せてきます。

しかし何十年も先の世界がどうなっているかなんて、そもそも考えてもわかりません。
大災害が起きているかもしれないし、戦争が起こっているかもしれません。今は健康でも病気になっているかもしれません。
新しい出会いがあって、今とは別のコミュニティに所属しているかもしれません。

私たちがある程度の精度をもって予測できる未来は、せいぜい1~3年先くらいでないでしょうか。
それ以上先の未来になるとそもそも考えるための情報が集まりません。世界は急激な速さで変わり、環境も変化しているからです。

今わかりうる直近の未来を、どのように全力で生きるかを考えることに意味があるのではないでしょうか。

少しぶっきらぼうな言い方になりますが、「情報が集められないことを考えても仕方ない」のです。
だから、何十年も先のことを考えて不安になってしまうのは、あまり生産的なことだとは思えません。

私は「考える」と「悩む」、は似ているようで違うものだと思っています。

「考える」は、判断をするための必要な情報を集め、結論を出していくこと

一方で「悩む」は情報が足りない状態で、不安をいだき、その問題にひたすら心がとらわれてしまうこと

先ほどの「傘を持っていくべきか」という問いはとてもシンプルで、このようなことでずっと悩み続けることはないと思います。天気予報を調べれば済みます。
しかし、少し問題が複雑になってしまったときは、そもそも必要な情報を集められないのに延々と悩み続けてしまうことも多いです。

どうしても答えがでない難問にぶち当たったときは、まずは情報を集めるところから始める。
集められない情報であれば、そもそも悩むのはやめる。

私たちの心はとても弱く、悩みや不安がつきません。
しかし、情報に関する考え方を見直すだけでも、ちょっとだけ前に進む力が出てくるのではないでしょうか。

情報を集めること。
この活動が、弱い自分の心に対するささやかな抵抗です。

あなたと似たような悩みに、誰かがすでに答えを出しているかもしれない

情報を集める方法はいろいろありますが、最も手軽な情報収集方法はGoogle検索でしょう。関連する言葉をGoogleで検索すれば、無限に情報が出てくるので出てきた情報を片っ端から読みまくってみるのです。

できれば、情報を拾い集め、ノートやWord、Excelなどにまとめていくとよいでしょう。
集まった情報に対して、自分の疑問や意見もいっしょにまとめるようにします。そうすることで必ず考えを前に進めるための糸口が見つかります。

世の中にはたくさんの人がいて、それぞれの人が悩んでいることも様々です。自分と似たような悩みを持っている人はとても多いものです。
その解決策をすでに見つけている人がどこかにいて、その情報がインターネット上に落ちていることも多いです。

どうしても検索だけで情報が集まらないときは、書籍を購入して読むのもいいでしょう。またその分野の情報を知っている人に会い話を聞くことも大切です。

①結論を出すために必要な情報は何か考える。
②その情報がそもそも取得できるものか見極める。
③取得するための方法を考えて情報を集める。

この手順を踏むしか、悩み事を前に進める方法はないと思います。

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