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オペ室のデータ革命: MOVER(Medical Informatics Operating Room Vitals and Events Repository) 完全解説


この記事はこんな人に読んでほしい

  • 周術期のデータベース研究に興味がある

  • CQをRQに昇華させるにあたって,どんなデータが使えるかを知りたい

  • ネットでいちいち英語を読むのがめんどくさい

  • これから,MOVER databaseを使った研究を計画している

  • MOVER databaseで注意をする必要がある箇所を事前に把握しておきたい

⚠️波形データに関する解説は本記事ではおこなっておりません.
近いうちにそちらの解説記事も出す予定です.

MOVER データベースを使ってできそうなこと

1.自己紹介

はじめまして!中島 誉也(なかしま たかや; X アカウント)と申します.
本記事をご覧いただきありがとうございます.

私は現在,長崎大学病院麻酔科大学院に博士課程2年目として通いながら医師をしております.
来年度からは,麻酔科専攻として勤務予定です.
医学生の頃から,統計学や疫学,AIに興味を持ち業務の合間合間にコツコツと研究をおこなっています.

大学院での研究テーマは,「周術期管理および,集中治療領域における経時的データの解析」ということで,データベースを用いた研究をおこなっております.

  • TXP Medical の共同研究者として

  • 研究内容(Reseacher map)
    現在,共著も含めて数本のデータベース研究を進行中です.

さて,この記事をご覧になっている方のほとんどは,医療従事者の方,特に周術期医療に携わっている方が多いのではないでしょうか.
研究をバンバンされている方もいらっしゃるでしょうし,周術期の研究やデータベースを使った研究に興味はあるけれども中々触れていない方もいらっしゃるかもしれません,

今回,紹介させていただくMOVER(Medical Informatics Operating Room Vitals and Events Repository) はそんな周術期医療に携わる皆様にとって,まさに革命的なデータベースとなっております.

しかし,どんなデータベースでも事前にどんなデータがあるのか,研究で見てみたいあの変数はどのくらい集められているのか?を知っておかなければ,せっかくのClinical Questionも検証することはできません.
そこで,少しでも皆様のお力になれるよう,Rによる解析経験4年以上の私が事前にこのデータベースを触り,どんなデータをどれくらい集められるのか?の情報を整理いたしました.

これから,このデータベースを触って研究をしていきたい方には,必ずためになる情報だと思います.

また,MOVER databaseを解析する上でつまづきそうな箇所についても記載しているのでぜひご参考にされてください.

このnoteを片手にすれば,データベース研究が捗ること間違いなしです.

それでは,早速見ていきましょう!


2.MOVER Databaseについて

さて皆様,データベースについてどのようなお考えをお持ちでしょうか.
近年のAIの発展をきっかけに,いわゆる「ビックデータ」を用いたデータ解析が頻繁におこなわれるようになりました.
この記事でのデータベースに関する詳細な説明は避けますが,エビデンスのレベルが「観察研究だから」質が低いというのは誤った考え方とされつつあり,「質のいいデータベース(観察)研究は質の悪いRCTに勝る」というのが最近の考え方となっています.

ここで,本記事で取り扱うMOVER(Medical Informatics Operating Room Vitals and Events Repository)について軽く紹介をさせていただきます.

このMOVER databaseは,カリフォルニア大学アーバインメディカルセンターで2015年から2022年までに行われた手術を受けた成人患者のデータから成ります.

カリフォルニア大学アーバインメディカルセンター

データベースには,生理的波形(心電図、パルスオキシメトリー、動脈ラインなど)と電子医療記録(年齢,性別,検査結果など)が含まれています.
具体的には,58,799人の患者と83,468件の手術データを含んでおり,このデータベースは,データ使用同意書(後述)に署名した研究者に無料で提供されています.

集中治療領域で無償で公開されているデータベースとしては,MIMIC4eICU databaseAmstherdam UMCXdbなどがありますが,これまで周術期治療における公開データベースというものは存在しませんでした.しかも,面倒な登録等も必要なく最短で即日から使うことができるデータベースというのは大変貴重であり,今後,世界的に麻酔臨床研究領域で頻繁に用いられるのは間違いないでしょう.

MIMICとMOVERの比較

この記事を読むことで,

  • どんな変数がデータベースに含まれているのか?

  • どのcsvファイルにどんな列が含まれているのか?

  • そして,主要な変数(採血結果,バイタル)の要約統計量や,欠測がどのくらいなのか

    を把握することができます.
    この記事を片手にすることで,MOVER データベースの概要を把握することが間違いなくできると思いますので,是非ご活用ください!!!

またnote記事も要望などに合わせて追記していく予定ですので一度ご購入いただくと大変お得かと思います.

「一緒にRを教えてもらいながらやりたい」,「解析を依頼したい」「〜というデータが欲しい」など,データ解析全般の依頼をお受けしております.もし,ご興味がある方がいらっしゃれば,私のメールアドレス(a82282008@gmail.com)もしくはX(旧 Twitter)のDirect messageを下されば,相談に乗らせていただきます.
解析費用等についても,依頼内容を踏まえて決めさせていただければと思っております.




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