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「礎」立教184年2月号 巻頭言

健康は良くて病気は悪い、生きていることは良くて死ぬことは悪い、このように二者択一にあてはめて、どんなことにも白黒をつけたがる傾向が、世界に拡がっているように感じます。
これと同じように、私は子供をついつい「良し悪し」でジャッジしては反省する日々です。
本来、病気がなければ健康もありませんし、死ぬことがなければ生きることもないのです。

「よしあしの 中を流れて 清水かな」という句があります。この「よしあし」は「葦(よし)と葦(あし)」と「良し悪し」をかけています。人は、良いことにも悪いことにも出会い、そのなかを流れながら清められていくという意味です。

数年前、親族のなかで子供を亡くすという悲しい体験をしました。お母さんもお父さんも子供をたすけてもらいたい一心で頑張りました。そして、その子は自分の命を通して、私たちに命の大切さを伝えて出直していきました。

この世界には、良い悪いだけではない、目にはみえない世界があります。目には見えない心の世界に目を向けることで、「あれが悪かった」「これが悪かった」という責め裁く世界から、許しいたわる世界となるのです。

新しいものがどんどん生まれる時代、自分がどうするのかは、その時になってみないとわかりません。そんな時代にこそ「相手を責め裁く」世界から、目には見えない世界を大切にして「相手を許していたわる」優しい心を持たせてもらいたいものです。


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