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vol.018 【レポート】エクスチェンジプログラムvol.5  大阪市立科学館×大阪市立東洋陶磁美術館「色と形をさぐる」-企画展「色と形のふしぎ」関連トークイベント-

開催日時:2022年2月10日(木)14:00〜15:30
会場:大阪市立科学館・多目的室
〈登壇者〉
小林 仁(大阪市立東洋陶磁美術館 学芸課長代理)
大倉 宏(大阪市立科学館 主任学芸員)

2月10日(木)、科学館で開催中の企画展「色と形のふしぎ」にちなみ、美術館と科学館の学芸員が語るトークイベント「色と形をさぐる」を開催しました。場所は大阪市立科学館。登壇者は共に大阪市博物館機構に所属する、大阪市立東洋陶磁美術館の小林仁氏と、大阪市立科学館の大倉宏氏のお二人です。

 この企画展は、身のまわりにある不思議だな、面白いなと感じる色や形の紹介を通じて、その背景にある科学を解説したもので、見て楽しく、またそのしくみを知っても楽しめるものです。

写真:企画展会場のようす

 イベントの前半は小林氏による「国宝の天目茶碗の美 ―構造色の神秘―」と題された講演で、国宝の天目茶碗についての紹介です。日本には、国宝の油滴天目1点(大阪市立東洋陶磁美術館所蔵)と曜変天目3点があり、いずれも古くから日本に伝わる名品です。これらには見る角度や光の当たり具合によって、さまざまに色が変化する光彩(虹彩)が見られ、これは構造色によるものです。
講演では、天目茶碗が生まれた歴史や背景に始まり、それぞれの国宝の天目茶碗に見られる模様の様子や違い、構造色によって放たれる美しい光彩の謎に迫る調査の様子などが紹介されました。特に、国宝を調査する際に、実際に触って感じた手触り、感触や重さなどの詳細な説明は、体験した人しか話すことができない迫力が感じられ、筆者も思わず引き込まれました。

写真:小林氏の講演

 後半は、大倉氏による企画展の見どころ紹介です。トークでは実際の展示品を例に挙げ、天目茶碗やモルフォチョウなどで美しい色を見せる「構造色」、雪の結晶や鉱物結晶の形を作りだす原子の配列などのしくみや、背景にある法則などが紹介されました。
また、大倉氏自身が体験している“科学的なモノの見方”として、さまざまなモノの中に見られる色や形に共通点はあるか、何か根本的な法則が見出されるのではないか、といった疑問を持ち、しくみをさぐることが、科学の楽しみにつながるというヒントも示されました。

写真:大倉氏のトーク

 今回のイベントは、美術と自然科学の専門家による、それぞれの視点での展示品紹介を聞くことにより、企画展のより深い楽しみ方を知る場となりました。同時に、中之島が持つ「視点の豊かさ」を感じる時間でした。

レポート執筆:嘉数次人(大阪市立科学館)


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