vol.025【レポート】中之島プロモーション クルーズ企画 「近世~近現代の中之島の経済と科学」
開催日時:2022年11月20日(日)
13:30~15:00
ルート:福島(ほたるまち)港町より中之島を一周
〈トーク登壇者〉
高槻泰郎(神戸大学経済経営研究所 准教授)
嘉数次人(大阪市立科学館 学芸課長)
本企画の登壇は、神戸大学の高槻泰郎准教授と筆者(嘉数)の予定でしたが、筆者は都合により急遽オンラインでの参加となりました。
船は、ほたるまち港を出港して堂島川を下り、中之島西端から土佐堀川をさかのぼって八軒屋浜で折り返し、再び堂島川を下るルートで進みます。
参加者には、約220年前に出版された大坂の地図(増修改正摂州大阪地図)を高槻先生がトレース・編集した特製の中之島周辺地図が配布され、当時の姿を思い浮かべながら景色を眺めました。
大阪中之島美術館の辺りには、かつて広島藩や久留米藩の蔵屋敷が並び、蛸の松が立っていました。肥後橋の南側にビルを構える大同生命は、近世大坂でも指折りの豪商・加島屋を経営した広岡家が創業した会社です。また淀屋橋の南東にある市立愛珠幼稚園の敷地には、江戸時代の重要な輸出品であった銅の取引を管理する幕府の役所「銅座」がありました。そして最後が堂島川の北側、大江橋と渡辺橋の中間付近にあった「堂島米市場」。スポット取引に加え先物取引も行われた、近世日本の米取引の中心地です。
古今の大阪経済を知り尽くした高槻先生のお話はとても面白く、米市場で日々行われる取引の様子や、旗信号で時々刻々と変化する米価格を全国に伝える人々の紹介などは詳細で、あたかも自分が米市場にいるかと錯覚するほどでした。
またトークは経済と科学の両方に通じた大阪町人・山片蟠桃にも及びました。米問屋・升屋の番頭であった蟠桃は、経済面では仙台藩の財政立て直しを成功させ、先物取引の利点を論じた凄腕商人でした。また科学分野では西洋天文学に通じ、広い宇宙空間には生命が住む星がたくさんあるという壮大な宇宙論を提唱するなど、まさに近世大坂人の自由な発想と行動が凝縮された人物と言えます。
経済と科学の視点から街を眺めることにより、様々な人が集まり活気あふれる中之島の今昔を再確認できたクルーズとなりました。
レポート執筆:嘉数次人(大阪市立科学館 学芸課長)