VWの排気ガス不正問題の賠償は続く

VWの排気ガス不正の賠償は控訴審まで進んでいる。そこでも賠償が削減されずに、高額な賠償となっている地域が残っているようである。

https://www.autonews.com/automakers-suppliers/us-court-refuses-shield-vw-diesel-scandal-lawsuits

控訴審で多大な賠償を命じる可能性が出てきたのは、フロリダとユタの2つの郡である。

2つの郡の控訴審裁判所の判断

2つの郡とは、ユタ州ソルトレイク郡とフロリダ州ヒルズバラ郡である。
この二つの郡の控訴審裁判所では、
・VWの排気ガス改ざんは故意である。
・賠償金額は数十億ドル以上に達する。
 5000ドル×日数×少なくとも6100台で計算する。
としている。

控訴審裁判所は、懲罰的損害賠償が成立すると判断している。

懲罰的損害賠償とは?

加害者の行為が強い非難に値すると判断された場合に認められる損害賠償である。
自動車で問われたケースは、
・意図的に不法行為を行った場合
・使用者に危害を与えることが判明後に故意に改修を遅らせた場合
などに適用されている。
タカタのエアバッグリコールの場合には、故意に改修を遅らせたとされている。

VWの主張

VWは故意でないと主張している。

論旨は、
・適合させなければならない地域は何千にも及ぶ
・その各地域に適合した排気ガス浄化システムを組み合わせる作業が必要
・その作業は困難を極める
・今回の問題は組み合わせを間違えた結果である
・意図的には行っていない
としている。
つまり、過失であって懲罰的損害賠償の対象でないとしている。

今までの他の控訴審では、この論理は通用している。

通常と異なる点

通常のリコールによる損害賠償は、陪審では高額な賠償となるが、控訴審では調停がなされて賠償金額が下げられるのが一般的である。

ところが、VWのリコールの被害者は米国国民全体であり、被害者と金額的に折り合わせるのが難しい状況である。
なので、環境に対して厳しい地域では、このような問題が起こる可能性がある。
環境に厳しいカリフォルニアに対しては、調整が済んでいるので、スムーズに進んでいるが、VWが対応できていない地域もまだ残っているのである。

いくら何でも、このままで進むとは思えないので、2つの郡に対してある程度の貢献を行って賠償金額を下げるものと思われる。
それでも、当初の想定よりも損害は増えるのであろう。

米国および英国での賠償請求対応の問題

懲罰的損害賠償が認められているのは、米国と英国である。
これらの国では、リコールをごまかすような行為を行うと懲罰的な賠償の可能性が出てくる。

例としては、タカタのエアバックリコールである。
当初は、リコールが遅れているとの問題のみであったが、タカタの役員が米国議会の公聴会で、論理的な説明無しで、北部州は問題が無いと主張したことにより潮目が変わっている。
この行為が、懲罰的損害賠償の適用を可能にしたのである。
つまり、「自社の利益を優先するために、安全であると証明されていない北部州の車両所有者を危険にさらそうとしている」ような会社であると判断されたのである。
多分、これがなければ身売りはなかったであろう。

よく、米国の賠償は法外であるといわれるが、消費者保護を一番に考えて、それを消費者に十分に説明することによって回避は可能である。
日本の企業はインフォームドコンセントが十分でないために、この適用を受けることが多いのである。
問題は、倫理的に運営できているかである。
「専門家が言っているんだから異論をはさむな!」というような対応は、米国や英国では懲罰的損害賠償の対象となる。

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