【RP】角野隼斗氏の不思議な低音 〜singsジブリ(東京公演)より〜

(別アカウントの過去記事をアーカイヴする為にリポストしています)

2022.4/23 東京TACHIKAWA STAGE GARDENで行われた「singsジブリ」のコンサートに行ってきました。
角野隼斗氏の生のコンサートは初参戦です!
ステージ上のお話では「ルパン3世カリオストロの城」「風の谷のナウシカ」はピアノの角野隼斗氏 菊池亮太氏が生まれるずっと前…という事でしたが、私はこの二つだけリアルタイムで観ることができた年齢なのです(以降はアニメ卒業)。
「ラピュタ」はテレビ放映回数が多く1度は観た事があったものの、他はレンタルDVDでチケット購入後に予習しました。
作品自体に配信がないため予約待ちが続き、二ヶ月で「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」「崖の上のポニョ」「ハウルの動く城」「魔女の宅急便」「隣のトトロ」を観たものの、「虹色の豚」間に合いませんでした。

この付け焼き刃状態ではジブリの世界観・久石譲氏の音楽世界を表現されている素晴らしいコンサートの感想を述べる事もはばかられますし、今後もツアーが続く事を考えるとネタバレになってしまうのも気になってしまい(ネタバレしないようにうまく書ける自信もなく)、当初は書かないつもりでいました。
そんな中、やりとりさせて頂いている角野氏のファンの方が今後の公演に行かれると伺い、であれば、私が感じたこの「不思議な低音」が他の公演でも聴こえるのか?ぜひともそれを確認したい〜〜!!!と、このnoteを書く事にしたのです。

「不思議な低音」について書く事は4/25の朝に決めたのですが、同日19:00からの「かてぃんラボ」の配信を見ていると、「左手(の音?)を出して弾くとカッコイイことに気づいた 最近」というお言葉があったので、これはやはり偶然ではなく意図的に「不思議な低音」を演奏されている可能性があるかも?と、自分の思い過ごしではない可能性が高まってちょっとワクワクでした。
ということで、まずはコンサートの状況説明です。
今回は歌と一緒のピアノ演奏だったので、クラシックのような生音ではなくPAを通したピアノの音が会場に聴こえてきます。
ピアノは2台ステージ上に置かれていますが、音的には向かって左(下手)が蓋もついている響きが柔らかいピアノで、低音が特に美しく感じられました。右は蓋が無くエッジが立った高音が鮮やかに感じられます。

私が好きなピアノトリオが時々ピアノとエレキベースのユニゾンを行うのですが、この二つの響きが重なったような音が、角野氏が演奏される下手のピアノだけから聴こえてくるのです。
それも、ここぞ!というものすごーーく盛り上がった所のみにスイッチが入ったように響いてきたので、まさかエフェクター?と思って足元を見てしまった程でした。
エレキベースのように最初から空気含むような減衰が弱い響き(共鳴音だから減衰が弱いのかも?)がふわーっと広がり、通常のピアノの響き(前述より減衰の強い)を包み込むように、それが一つの塊として感じられるのです。
シンクロ率が高いピアノとエレキベースのユニゾンというのが私のイメージではピッタリ。

ラボでは「三声」「立体的」などの単語を用いて説明されていたので(音楽的知識がないので私には具体的に何を指すのか理解できませんが)、左手の演奏を「カッコよく」するために何らかの方法(編曲も含めて)が施されていた事が推測されます。
また、ラボのコメントには「鳴ってる」と書かれているものも多く、それが小曽根真氏との「メゾン・ド・ミュージック」の対談に言われていた「クラシックの演奏法=鳴る」という事だと思われるのです。
一方、私がクラシックピアノの生演奏を聴いた経験が無いために会場で聴いた音が「鳴っている」音なのかどうかは判断ができません。
ただ、その「鳴っているだろう音」をPAに通したことで、特定の音域が機械的に増幅されている気がするのです。
ポップスやロックなどでは最も響かせたい低めの音域だと思われるので、特にクラシックを意識しないスタンダードな音響設定では自動的に強調されていたのではないか…と。
あくまで想像ですが、響きがやわらかく広がるピアノを用いたクラシックの「鳴る」奏法による音を、クラシック用の音響設定とは違うPAを通したため、特殊な共鳴・増幅効果が発生した=今までに聴いたことが無い音が聴こえてきた、というのが仮説です。

spiceの記事「ピアニスト・角野隼斗は何をなし得たか~単独ツアーの最終地・東京国際フォーラム公演を振り返る」では、ツアーファイナルの音響をクラシックピアノの特性を生かした最新音響技術として、またアップライトピアノの演奏もその技術による成果として書かれていますが、今回はクラシックピアノとしての音作りにそこまではこだわらなかったPAと2台のピアノのセッティングの違いという条件により、結果的に発生した音の様に思われます。
ただ、偶発的に生じた「不思議な低音」は、クラシックの奏法を他ジャンルに活かす表現の可能性としては大いに発展が見込める気がするのです。
というのも、フジロックなどロック系のPAを通すことが前提のステージでは、このエレキベースの響きが混ざったような低音は絶対カッコよく聴こえるはずだからです!
しかも、この「不思議な低音」がクラシックの演奏法によるものだとしたら、カウンターカルチャーへのクラシックからのカウンターになる訳で、曲としてロックっぽい曲を演奏する事以上にロック精神を体現する事になり、それだけでメッチャカッコイイ!笑(もちろん、音楽自体も絶対カッコイイはずですけど!)
今後の「singsジブリ」公演でもこの「不思議な低音」が会場に響くかどうか、行かれる皆様のご報告を楽しみにしています!!!
(よろしくお願いします)

<追記>
5/5に行われた愛知公演に行かれた方のお話によりますと、愛知県芸術劇場の音響が優れているせいもあり、PAを通した音でもクラシック同様の生音に近かった様です。
私の席は結構遠かったので、PAを通した音しか聴こえない等の条件もあったのかもしれません。

最後に、演者の皆様の演奏や歌の感想を簡単に。

<角野隼人氏 菊池亮太氏 2台のピアノによる演奏>
お一人ずつの演奏と歌の組み合わせもあったのですが、ネタバレや曲の感想になってしまう可能性が高いので、お二人によるピアノ演奏についての感想に絞ります。
お二人が丁々発止のバトルを繰り広げる時もあれば(メッチャカッコイイ!!)、互いにパスを渡し合うような時があったり(音の主体が右や左に移り変わるのがはっきり感じられる)、さらには二台のピアノが一つに感じられるような一体感に包まれたり…と、二台ピアノのそれぞれの味わいを尽くしたかのようなステージでした。
お一人で演奏される場合は下手のピアノが使われていましたが、「メインピアノ」という単純な割り当てではなく、響きが柔らかい方が歌を引き立たせるという音楽的理由を実感できますし、お二人で演奏される場合もどちらがどちらのピアノという決まりはなく、曲によって組み合わせが変わります。
ピアノと演者の組み合わせは、それぞれ曲・アレンジ・演奏毎の必然性が感じられるもので、その選択からは安易さが全く感じられません。
「ピアノの演奏」という行為以上に、2台のピアノ(+α)が曲や歌を最大限活かすという音楽全体への意識で奏でられているように感じました。
これから行かれる方は、ぜひそれぞれの組み合わせの違いを音楽としてご堪能ください。

<島本須美氏>
実際にジブリ作品に出演されていらっしゃる事も含めて、島本氏がいらっしゃってのこの企画です。
歌はプロフェッショナルとは言えないかもしれませんが、ある意味拙いことでリアルさや実感が増す場合もありますし、個人的にはライブで聴く場合音程は全然気になりません。
あと、ご自身で「これからツアーが進むにつれて歌はどんどん上手くなる!」っとおっしゃっていたので、乞うご期待です。
普通の「ジブリの音楽コンサート」とは違う特別さは島本氏の存在そのものにあるので、舞台でお声を聞かせて頂けるだけで周囲がキラキラ輝いてみえ、それだけで感激してしまいます。
「カリオストロの城」と「ナウシカ」だけは世代なので。。。笑
開演前に素敵なアナウンスもして下さるので、少し余裕を持って着席される事をお勧めします。

<麻衣氏 リトルキャロルの皆様>
今回の公演のみ、リトルキャロル(コーラス)の皆様がご参加との事です。本当に素晴らしいコーラスだったので、他の公演の方はお聴きになれずにちょっと残念。。。
麻衣氏が「ナウシカ・レクイエム」を当時4歳(3歳〜5歳の説あり)で歌われたとの事ですが、まさにそのまま大人になられた美しい透明な歌声でした。
その麻衣氏の歌声とリトルキャロルの皆様の声のコーラスは本当に素晴らしく、余りの美しさにゾワゾワと鳥肌が立ちました(私が音楽を聴いて鳥肌が立つのはなぜか人の声限定)。
舞台上のスクリーンに移された映像とともに、ジブリの世界に自然と引き込まれていくという表現がぴったりです。
4/20にリリースされたばかりのアルバム「BEAUTIFUL HARMONY」には、今回披露された曲も沢山収録されています。

※島本氏と麻衣氏の組み合わせ、島本氏とリトルキャロルという組み合わせもありました。


<オマケ>
後ろに座られていたお子様が「ママ、角野隼斗が出るんでしょ!」「(パンフレットを指して)これが角野隼斗?」「(ステージを見て)どれが角野隼斗?」と、延々フルネームで連呼されていて、お母様の素晴らしい英才教育が伺えました。笑