見出し画像

虎ノ門ニュース、スパイ防止法特集。ちょっと言いたいこと

□ 2022年4月19日

軍事技術ではないがデュアルユース、軍事でも民生品でもコンシューマでも使える、特にIT分野に非常に多いが、その現場でいろいろ体験している身としては、少し付け加えさせていただきたい点が幾つかある。


■ 軍事技術は開発現場から盗まれる。
 
中小企業は企業としての防衛力が無いので、中国の解放軍などのフロントから狙われるターゲットになってしまう。

クラウド・ストライクという企業が、セキュリティ関連のレポートを出しているが、やはりDOD国防総省の発注したティアワン(一次サプライヤー)ではなく、そこに出入りしている中小企業コントラクター(請負業者)、外注先とか研究機関が、中国に狙われていると指摘されている。


なぜDOD国防総省や大企業ではなく、中小企業を狙うのかと言えば、中小企業には資金力が無いので狙われる。言いがかり訴訟をふっかけられてディスクロージャー(情報公開)というプロセスで訴訟され、そういう裁判のプロセスで、自分たちの情報が漏洩してしまったり、言いがかり裁判に負けて会社ごと乗っ取られてしまうとか、そういう形で情報が漏洩して行く。

中小企業はいつでもお金が足りず、売り上げが欲しいと思っているので取引を持ちかけるかのように装って、情報やなぜこれができるのか教えて下さいとか、そうやって徐々に情報を持っていこうとする。


「特定秘密保護法」で守れる範囲が非常に限られている。事前に指定した秘密だけという非常に限られたエリアだけだと、そこから外れてしまった人たちは守られない。
そして漏洩してしまったのがある程度認定を受けた公務員と特定の事業者ということなので、盗んだ者の罪をどれぐらいとれるのかという建付けが弱い。それで欺されて、ひっかけられて漏らしてしまうというのが商取引上で結構ある。
 
特に大企業に多いのだが、これはどうやって作っているか、どうして御社の製品のここのパフォーマンスがこんなに高いのかと聞かれて、企業秘密だからと口ごもると、そこを教えてくれないと買えないとやられる。
そのような悪い商慣習というのがIT業界の中、特にハードウェアの世界に結構あるので、そういったところを「下請法」などで是正し取り締っていく、いろんな穴を塞いでいく形にしないと、実は軍事関連の開発、製造している工場とかの開発機関、研究機関の現場から漏れている部分を、かなり取りこぼしてしまっている。


■ 保守がスパイ防止法は必要ないという根拠
 
「スパイ防止法」を推進していると右翼、保守派の一部から、「スパイ防止法」を推進して金儲けをしようとしているとか、「スパイ防止法」は必要無いという議論を振りかけられる。

スパイ防止法不要論を持ち出す人の中には、産業スパイは「不正競争防止法」で取り締まれる、軍事技術は外国に漏れる時は、国家安全保障局NSCの経済班で取り締まる、「外為法」で取り締まることができるとか、そういう枠組みのことだけを話して、実際にその運用能力があるのかまでは議論が出来ていないままに、「スパイ防止法」は必要無いと反対している人もいる。
 
「特定秘密保護法」で守ることができる範囲はとても狭い。ハッキングの被害に遭ったら「不正アクセス禁止法」で取り締まることができるというのもあるが、例えばアマゾンのサーバーに国家の機密を預けていたら、メンテナンス工が合法的にアクセスできる。
意外といろんなところで法律上の穴がある。そこの議論もして欲しかったと思う。
 
スパイ防止法不要論の保守派は「不正競争防止法」「経済班」「外為法特定秘密保護法」「不正アクセス禁止法」があるという。
スパイという活動を取り締まらずに、一つ一つの行為で埋めていこうというやり方でスパイを取り締まれば良いと言っている人が結構多くて、それは日本が 盗聴が合法であって、盗聴にまつわる行為は取り締まることができるけど、盗聴そのものを取り締まれないという建付けと同じなのである。
「スパイ防止法」が無いのはどういうことかと殺人罪で言えば、殺人は合法だが、人を殺せるナイフを持ち歩くとか、銃を持ち歩くとか、人の家に押し入るとかはそれぞれ犯罪だから殺人罪は要らないという議論に非常に似ている。

決してリベラルだけが「スパイ防止法」に反対をしているのではなく、なぜか保守派の中からも「スパイ防止法」に反対する声が上がっているのもきちんと見て欲しい。


■ 人権無視の本当にひどい司法制度
 
今の日本の司法制度を見ると、不当逮捕とかで何の理由もなく最長23日間拘留できる。
その間弁護士を付けられないとか、接見禁止をつけられれば1日15分しか弁護士と話をすることができない。
 
基本的に取り調べの時に弁護士が同席できないとか。起訴された後の裁判で警察と検察側が証拠を隠すとか、被疑者に対しての非常に不当な取扱が多い。
私自身もジャーナリズムの活動の一環として、国家の技術を盗んでいる人はスパイだと言ったら名誉毀損でやられて、東京地検にいきなり拘留寸前みたいになってしまった。

その時に相手の意見と私の意見を平等に聞くとか、私の弁護士を同席させるという人間としてあって当然のはずの権利が無いのである。私なんかは法律の専門家でも何でもないので、騙し討ちで罪を認めろということを警察や検察がやってくる。
自分たちの公権力を濫用する人たちが、中国の味方をして国民を攻撃してきた時に、実は「スパイ防止法」は成立したけれども、司法制度の改革が行われなかった場合には、スパイだという嫌疑だけで不当逮捕されたら23日間拘留されて、その間弁護士とほとんど連絡も取れないなど、自分を守る方法がない。
弁護士ときちんと相談する時間、そして尋問を受ける時に弁護士を同席させられないので、不当な誘導尋問とか誤導尋問を受けてそれに引っかかってしまうとか、それで自白した様にこじつけられてしまうことが本当に起こっている。
 
学校で虐めをしても、虐めをもみ消しているのが教師とか、教育委員会が学校内で起きた弱い者虐めをもみ消しているなど皆が知っている事実である。
そういうことがあるのに、日本は完全に良い国だから、司法改革は必要ないとか の議論にするのもおかしいと思う。

スパイ防止法慎重論がなぜ起こるのかという、そもそもの議論を振り返れば、やはり司法制度の不公正な部分がかなり大きい。
そういう正当な部分はきちんと汲んで「スパイ防止法」を成立させるという議論に持って行かないと、お互いにとって不幸な結果になると思う。
「スパイ防止法」を成立させても、今の司法制度のままだったら、不当逮捕されたら冤罪がいっぱいできるというリベラルの指摘が、今のままだと本当にそうなってしまう。
「スパイ防止法」を立ち上げる時は、必ず司法改革も同時にやってお互いの悪い部分、お互いの欠点を補っていくという形でやっていかないといけない。
 
私は「スパイ防止法」について徹底講義を行っている。「スパイ防止法」が必要なことは皆うっすらと分かっているが、現場で一体何が起こっていて、多く技術者やエンジニアは何に困っているのかが意外と知られていない。
そして軍事にまつわる技術のほとんどが商取引の過程で漏れて行く。その時に警察、検察が不勉強で、全然そこは取り締まりができていない。その大きな穴をどうやって埋めていくのかなどの議論が必要である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?