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漫画プロファイリング40 ゆこ さま

どうも、漫画描きの中村環です。

月一回、漫画描きさんの作品を読んで
いいところや強みをお伝えする「漫画プロファイリング」というネット上のイベントをやっております者です。
さて、今月も漫画プロファイリングのお時間がやってまいりました。

今月のお客様:ゆこ さま

お子さんもいらっしゃってお忙しいなか、
ご自身の体調にも波があったり、
右手足のお身体の不自由さもあったり、
お医者さんから余命宣告などもされていたという過酷な境遇の中、
コルクラボマンガ専科の卒業制作も完走お疲れさまでした!

しかも定期的にジェスドロなどの練習絵をツイッターにアップされていて
いつもすごいなと思っておりました!
「私も頑張らなきゃ!」と、ひっそりと励ましていただいておりました…!

今回なかなか難しいお悩みでお答えできるかハラハラですが、
精いっぱい見させていただます!

プロファイリング結果

◆「夜を日に継いで」を読んで◆

「夜を日に継いで」▼


・まず、タイトルロゴが凝ってる!素敵!
「難病でも、生きてていいですか?」▼でもタイトルロゴ凝られていましたね!ロゴづくりにも関心があって関心の広さがうかがえます。

・全体については、情報に足りないところなどなく、状況、境遇などスッと入ってきて、すんなりと読めました!

・構成をすることに関しては苦手意識はなさそうに見えました。広げたふろしきをたたむのが上手そう。

・苦手意識があるとすれば、キャラの状況や主義を説明するエピソードの選定、キャラ立てに関してはあるのかなと思いました。

描きたいこともあり、説明不足などはなく、プロットとして破綻しないことはできるし、キャラクターのおかれた状況などの設定はイメージできている感じはしますが それを読者に説明する段階でややつまづきがちなのかなあと感じました。

・2018年という最近からマンガやイラストを始められたとのことで、

2021年の作品など▼と見比べると、

「夜を日に継いで」の読みやすさが急成長すぎて、めちゃめちゃすごいなと思いました。 おそらくなのですが、出来事、受動的感情、能動的感情のコマ分けがされていて、感情の流れが見えやすくなったために、格段に感情移入しやすくなり、ストーリーがするする頭に入ってくるんだろうなと感じました。

・表情やしぐさの表現がとても上手だと感じました。
p18、宵くんがぼんやりと心ここにあらずでいた後、 「なんでもないよ 気にしないで」という表情で違和感があるように描ける。

・p29で宵「俺…ここから出ていかなくてもいいの?」とのときのうれしさが抑えられない表情、 そして次の 春陽「宵くん…?」という驚きの表情で見上げるところ、ネームでザクザクと描きながらもとてもキュンとする顔が描けていてたいへんごちそうさまです。(合掌)ほんとうに表情がうまい。

・このお話の主人公である春陽のもつ考え「世の中の『恋愛をするのが普通、結婚をするのが普通』に対して違和感を持つ」というのは、おそらくゆこさん自身が普段から思っていることなのかなあ…と感じました。

そうだとすれば創作スタイル的には排出傾向が強めなのかなと、でも排出だけではなく、一部、萌えも持っているのかなあと。
(知らない男性といきなり同棲/行き倒れ系の男性を拾う/恋を自覚していなかった主人公が恋を自覚する/同棲のほうが先に始まってしまって、あとから自分の気持ちに気づく/関係性萌えなど)

・ただ、漫画の中で執着している部分があまり(突出しては)見えなかったので、ゆこさんが普段から思っていることを排出して描いたでしょ!って言いきれないかんじもします。
もしかしたら、物語の一部分だけ決まっていて(最後はハッピーエンドにする、など)それに合わせて主人公の悩みを用意した可能性もあるのかなと思いました。

・p13「おうちでごはん食べるとそのまま寝れるの しあわせ~」に関しては妙にリアリティがあったので、これはゆこさんが普段から思っていることなのかなとは思いました。

・後半はスピード重視で描かれているようなのでわかりませんが、冒頭のカメラワークなど非常に優れていると感じました。「どれもやりたい人がやればよくない?」で主人公の顔を見せずに足元とゴミ袋が映ってまずおしゃれなのと、カンカンという足音が響くところが、マンションではなくおそらくアパートに住んでいるということがわかり、とても映画的で大人な演出だと感じました。

・ゆこさんが読んできたものについては、絵が少女漫画感があること、モノローグがやや多めなのと、モノローグが並ぶときのコマ割りの間の取り方がうまいことから、少女漫画、全体的に女性向けの漫画(少女漫画、女性向け、もしかしたらBL)を多めに読んできているのかなあと感じました。

※間の取り方がうまいと思ったのは冒頭、カンカン、と階段を降りた後に、手元が映って→夜空が映って→自分に戻るところです。 いったん空を挟むことで絵変わりもできるし、人間という情報量が多いものが目に入らなくなるので、モノローグがスッと入ってくる。うまいなあとうなりながら拝見しました。

・後半のp21~23あたりの宵と出会う前のことを回想するシーンは、春陽にとっての深部に関わるところで、たぶん盛り上がるべきところだと思うのですが、さらりと描かれているところを見るとおそらくスピードを優先したために練り途中だったのかな…?と思いました。
ここがさらに練られたときどんなカメラワークを見せてもらえるのか…冒頭のカメラワークがとてもよかったので楽しみだと思いました。

◆ほかの作品を読んで感じたこと◆

・少女漫画絵が本当にうまいなあ…!と感じました。こちらの絵など▼

・少女漫画寄りの絵で、漫画を読んできた人の絵だなあという感じがしました。
ただ、めっちゃオタク(大好きな漫画を追っかける)かというとそうでもなさそう、と思いました。 どちらかというと漫画を読むより漫画を「描く」のが好きなタイプかもしれないと思いました。

・ドキドキして手を繋げない女の子のお話▼を拝見して、


いじらしい女の子を描くのかが上手! と思いました。
主人公の女の子の好感度がめちゃ高くて応援したくなる!と思いました。これはよき強みだと思います。

・おそらく、排出傾向があることからも
自分の身を削って創作する(自分の経験を転用して創作する)タイプだと思います。

実際に体験していないことは描きにくいかもしれません。
(ファンタジーとか、世界観の設定などを想像するのはあまりやらないかと)
ご自身の経験の量がそのまま創作できる量になりそうな気がします。

それから、排出傾向にありがちな「制作ペースの遅さ」はあるかもしれません。自分の体験を分析して物語に落とし込むまでの作業に時間をとられてしまうというやつです。

・前述の「夜を日に継いで」でもご飯が出てくるし、
Twitterを見ていても食に関心がありそうなので
引き続きごはんに関連する漫画など描かれると名作が生まれそうな気がしますね!

・例えば少年漫画で多くあるような「起こる出来事の目新しさで読者をひきつける」というよりかは、
日常のあるあるの風景の中から その高い感受性によって新たな感情を見つけ、
それによって世界の見え方が変わる、というスタイルの漫画を
描かれる方な気がすると思いました。

心の奥深くの機微を描こうとする気概も見られるし、心理描写に関心がありそうなのでそこが強みだなあと思いました。

・もしかしたらゆこさんは恋愛恋愛した恋愛ものより、恋愛よりさらにピュアな友愛的なものとか好きなのかな…?と思いました。
1日1マンガ-第15話のここのシーン▼など、

叶わない片思いであっても、「むしろ彼女にだけ笑顔になるのを見る」ことに幸せを見出しているところなどから思いました。

◆お悩み・弱みについて◆

・自分の作品がどういうタイプ(雑誌とか)、
・読者さんはどういう方なのか、
というご質問で、私も不勉強でなかなかこれ!というのが
言えるかわかりませんが、私の知っている範囲で恐縮ですが、
書かせていただきます。

タイプに関しては、う~ん、作品数的にまだ数作しか拝見していないので、
これ!と言ってしまうのはちょっと気が引けるので、
話半分くらいで聞いてほしいのですが、
「プラトニック系」というのが一つあるのかなと…!

「ともだちカレシ 1話」▼や

や、「薫風-夏-」▼などを拝見すると

すごく純粋でまっすぐ、気持ちのいい王道なお話を描かれる感じがしていて、
小学生や十代の女の子たちに向けた少女漫画に向いておられる感じがします。
少女漫画に関しては疎いので自信がないのですが、雑誌で言うならりぼんやなかよしなどかな…と。

それか、同じプラトニックでも、「夜を日に継いで」のような、
20代後半~30代の女性が共感できるものも描けるので、
大人女子向けだけど、ドロドロしていない、ウブでプラトニックな大人のラブストーリーを描かれるタイプ、というのも言えると思います。

大人の女性向けということで(こちらもまた詳しくないので恐縮ですが)Cookie、エレガンスイブ、オフィスユー、ココハナ、kiss、
あとは青年誌ならモーニング、コミックブリッジ、あたりになるのかなと思います。

雑誌の進路的なことに関しては、私はぜんぜん強くないので、
ぜひネームタンクの東西サキ先生の進路相談をまだ受けておられなかったら
ぜひ受けられることを強くおすすめします!
東西先生なら雑誌を全網羅しており、適切な進路へ導いてくださるはずです…!

タイプと言っていいのかわからないのですが、「夜を日に継いで」を読んで通じるものがあるなあと思い出したのはこちら▼の作品たちでした。

美波はるこ先生「 酒と恋には酒と恋には酔って然るべき」▼

ゆざきさかおみ先生「作りたい女と食べたい女」▼

よしながふみ先生「きのう何食べた?」▼

コナリミサト先生「凪のお暇」▼

・ごはんに執着がある
・排出傾向っぽい作家さん
・「ふたり」の関係性を描くのが好きな感じ(主人公の活躍!!ってかんじではない)
・内容のピュアさ(大人の女性向けの割にドロドロしてない、恋愛恋愛してない、どちらかといえば友愛や敬愛に近い、あるいは大人だけどピュアでウブな恋愛、爽やかな読後感)
・軽快にサクサク読める
・日常系
・主人公の中の葛藤が日常生活のふとしたことで露呈し、
それをまた日常の何気ないことで解決するor新解釈することで
カタルシスを得る
…という点において
だいたい同じカテゴリーになるんじゃないかなあと思いました。

読者さんはどういう方なのか、については、
私もはっきりとは言い切れないのですが、
作品ごとのいいね数など見ていると
「難病でも、生きてていいですか?」▼

に人気があるように見え、この漫画がきっかけでフォローされた方が多いのではないかと思いました。
私も「限度額認定証」というのも初めて聞きましたし、こういう入院Tipsなどが読めると、 いざというときの自分のためになりますし、知らなかったことも知れて、満足感が高いなあと思いました。

読者さんにとってこの作品の印象が強いと仮定すると、おそらく入院生活や、病気になったときの心情、家族との関係、治療の内容などに関心がある方が多いのではと思います。あとは年齢が近そうな方、お子さんをお持ちの方、女性の方など。

それからイラストなども多くアップされているので、
そのイラストが好きな方が集まっていらっしゃるのではないかなと
思いました。とくに男子のビジュと、色づかいがよい…!

◆強み・萌え・作家性・ほか◆

・努力家。練習をちゃんとできる。勉強熱心、探求家。

・絵の印象としては、ゆこさんの作品を初めてツイッターで拝見した時、まず「絵がうめえ…」「顔がいい…」という感想が出てきました。
そう、本当に絵がお上手なのです。魅力的な人(とくにヒーロー)がちゃんと魅力的に描ける画力をお持ちで、素晴らしいと思いました。
ちゃんとかっこいい人を描ける、これがどんなに強みなことか…!
髪の描き込みなども丁寧でリアリティがあり、そこに居そうな感覚があります。 こちらなど▼

・イラストなどの配色が美しく、色に関して執着がありそうと感じました。執着はそのまま強みになると思います。

こちらのマンガを描かれたという事実からも色に関して一家言ありそうと思いました▼

アナログで水彩などもやられていることや、Twitterにアップされている身の回りのものやネイルも印象的な色が使われているところを見ると、 自分の中の色に関する重要度が高いし、色に関する物差しのめもりが細かい(感受性が強い)のだろうなと思いました。

・pixiv▼も拝見しました。

カラーイラストが魅力的に描けるところを見ると、
漫画よりイラストの歴が長いような印象を受けました。


・そして画面の中の二人の関係性を1枚の絵で見せるのが非常にうまいなと思いました。
目線やしぐさなどから伝わる二人の空気感などがよく表現されていて感動です!こちらの扉絵など▼

◆こんなの向いてそう・見たい◆

・こちらのツイート▼を拝見して、大変言いづらくはあるのですが、

正直言うと最初に見てみたいなと思ったのは
ゆこさんのフルカラー縦スクマンガです。
色彩センスが高く、少女漫画的な感情の深部や間を描くのが上手なので、
縦スクの特技である「間の操作」と相まって、
きっと素敵な漫画になりそう!と思いました。

ただ、フルカラーで縦スクで創作を、となると時間と労力がすごくかかるので…そうですね…ショートショートのような、詩の一遍のような、すごく短い短編…とかどうでしょうか…?
もちろん縦スクでなくても見開きモノクロ漫画でも見てみたいです!
とにかく、内面の葛藤の描写や間などが生かされるものが見てみたいという気持ちです。

・ミニキャラのデザインがはちゃめちゃに可愛い! これで漫画見てみたいです…!!

・ゆこさんのミニキャラの作画でエッセイが見れたらいいのかなと思いました。
先のツイートの「最短で形にする」ということについて、ミニキャラの作画量はマッチしていると思うのと、
それから、創作マンガに対してややハードルを感じていらっしゃるとお察ししたのが主な理由です。

排出傾向で創作漫画を描こうとすると「主人公は何を求めていて、何があったら救われるのか」を漫画にしなくてはならず、しかしそれを実体験から分析しなければならないため整理する時間が必要で…とやっていると、
作品の完成までにかなり時間がかかるように思いまして。(私もそのタイプでなかなか本数が出せなく、歯がゆいです…)

それから、個人的には、自分の実体験を→創作漫画にする過程で
いったん実体験をエッセイにするという過程を挟むと、
すごく高い階段の一段が、低い階段2段分になる感じがして、
その後のエッセイ→創作漫画の工程の情報整理がやりやすくなる気がしており、「創作の前にいったんエッセイをはさむ」は、おすすめしたいところでございます。

それから、個人的にはこの漫画▼が好きで、

内容はなかなかヘビー…
しかし省略されたキャラのかわいさで読みやすいものとなっている感じがしていいなと思っていました。
(ちょうど武田一義「ペリリュー 楽園のゲルニカ」▼のように、戦争という重いお話でも可愛い絵で中和されて読める…というような感じです)

以下は漫画に限らず、イラストでもよいのですが、

・ゆこさんの描かれるメンズがいっぱいみたい!
・あるいはメンズの待ち受けイラストが欲しい!(画面の中の彼を養うためにがんばれそう…)
・あるいは1枚絵でカップルが1ラリーくらい会話していちゃついているような、ちょっとその前後のストーリーがイメージできるイラストを眺めてによによしたい と思いました!(なぜなら関係性を描くのがうまいので!)
・そう考えると、最近流行りの…ちょっと作品名がぱっと出ないのですが…ゲームのイベント画像みたいな一枚絵がメインで、その間をつないでいくような形の連載漫画とかもできそう…(妄想が飛躍していってすみません!ゆこさんの強みはいろいろな形式で出すことができそうだなと思いました!)

プロファイリングは以上でございます!
何かゆこさんの創作の一助になれば幸いと思っております!
ご依頼ありがとうございました!


お客様からのご感想

※ゆこさまへ もしTwitterなど外部サイトでご感想をいただける場合は、よろしければこちらにご感想のリンクを貼らせていただきたいです。
もちろん、この記事にコメントでも構いません~!※

そもそも漫画プロファイリングとはなんじゃらほい

ご存じない方はこちらをご覧くださいね↓

ということで
ここまでご覧くださり、ありがとございました。
ほいではまた。


どうも、中村環です。 サポートのご検討、ありがとうございます! いただきましたサポートは、 ・家族を支えるための中村家の家計費 ・貯金 ・漫画制作のための資料&環境 とで 一定の比率で分配し、大切に使わせていただきます。 これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします!