Panasonic Stadium SUITA スタジアム視察

1.視察目的

 長崎市では三菱重工幸町工場跡地にて、V-ファーレン長崎を有するジャパネットホールディングスがスタジアムシティプロジェクトを進めています。

 スタジアムシティプロジェクト成功のため、Panasonic Stadium SUITAを視察しました。Panasonic Stadium SUITAは寄付金で建設されたもので、現在は吹田市営のスタジアムでです。国際試合を可能とするも、非常に低コストで建設されたスタジアムは、我が県においても十分に参考にすべき事例です。

2.視察報告

 (1)スタジアム建設手法、計画


 「国等に対する寄付金の確認」を利用し、スタジアム建設募金団体が寄付金にて建設しました。完成後は吹田市へ寄贈され、指定管理者制度を利用して現在は㈱ガンバ大阪が管理運営を行っています。

 法人・個人より約140億円もの寄付を募り、日本初の募金スタジアムを完成させました。収容人数が40,000人規模で日本代表Aマッチの実施も可能となっています。管理運営をガンバ大阪が担うことで、クラブやサポーターの希望を柔軟に反映できる体制となりました。

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 (2)建設概要

 スタジアムは万博公園内に建設され、日本最高峰のJFA Sクラスです。

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 (3)スタジアムの多様な活用

 全面開場された2016年以降は多様な活用を進め、稼働率も年々向上しています。サッカー専用のスタジアムですが、サッカーに限定しない活用で2019年度は85%と高水準の稼働率でした。

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 (4)選手と近いスタジアム

<コンパクトスタジアム>
 Panasonic Stadium SUITAの最大の特長は、「選手との近さ」です。最前列はサイドラインから7mであり、ベンチ選手より試合を近く見ることができます。選手の表情や汗は当然のこと、試合の中での会話や監督からの指示を直接聞くことができます。

 「コストダウン」と「選手との近さ」を意識し、「コンパクトスタジアム」というコンセプトで設計されました。陸上用トラックがないため、2階席最前列が一般スタジアムの1階席最前列の同距離(水平距離)となっています。

 どの位置からでも試合を観戦でき、2階ショップスペースからも十分に試合の様子を楽しむことができます。また観客席の勾配を大きくすることで、前列の観客に気にすることなく観戦できることも大きな特徴です。

<1階最前列からの様子>

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<VIP対応>
 また、VIP席を充実させることで、収入面での安定を図っています。VIP席の来場者数は全体の1/20ですが収入では1/6を占めるため、VIP席での戦略が重要です。VIP席用のラウンジでは約20,000円/人で、スタジアムで調理した料理などを楽しむことができます。

 また国際試合開催のためには、皇族などのV-VIP対応が必須条件となり、V-VIP専用の座席も備えられています。

<地域ともに>
 スタジアム建設で募金された法人名・個人名がスタジアム内に掲載されています。現在は市営スタジアムとなっていますが、地域にとってスタジアムは自分たちのものであるという認識が強く、スタジアム内に落書きもなく大切に使用されており、市民のもの、市民のためのもの、だから市民から愛されているんだなと思います。

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3.長崎県での展開と今後のアクション

 長崎県では現在、ジャパネットホールディングスが単独にてスタジアムシティ建設に向けて現在取り組んでおられます。ジャパネットホールディングスもこのPanasonic Stadium SUITAだけでなく、海外含めたサッカースタジアムを視察し調査を重ねているそうです。

 ジャパネットホールディングスのすごいところが、全資金をジャパネットホールディングスで負担するところです。

 しかしながらプロジェクト成功のため、長崎県議会・行政もジャパネットホールディングスに委ねるだけではならないとの考えです。以下に今後のアクションについて最後にまとめました。

① 採算性についての調査
 Panasonic Stadium SUITAでは140億円もの資金を募金にて収集したが、ジャパネットホールディングスは自社負担となり、スタジアム運営により回収していかなければなりません。スタジアムシティーにはサッカースタジアムだけでなく、他の機能を有する施設も建設され、総額700億円規模の工事となるようです。採算性については県の立場から助言すべく、今後も調査を進めます。

② コンパクトスタジアム
 V-ファーレン長崎のホームグラウンドである、諫早のトランスコスモススタジアムは陸上トラックを含んでおり、選手との距離が遠くなります。一方、Panasonic Stadium SUITAで感じた「コンパクトスタジアム」での選手との近さは、観客の満足度を上げるために今の時代はmustであると感じました。また、コストダウンのためにも効果的な手法であるため、ジャパネットホールディングスの計画も把握したい。

③ 弾力的な公共交通
 Panasonic Stadium SUITAでは、公共交通機関の輸送力に課題があり、観客がスタジアムからはけるまで2時間以上要するようです。この輸送力が更なる観客増を図る上で最大の課題となっているそうです。
 長崎市幸町は長崎駅からも徒歩圏で、スタジアムシティそばの国道206号線は長崎電気軌道やバスが走っており、公共交通機関には大変恵まれています。しかし、国道206号は時間帯によっては県内でも最も交通量が多いため、観客の動線や新駅・新停留所設置を検討する必要があると考えます。街づくりについては、政治行政のリーダーシップが必要となるため、積極的に関係者と協議していきます。

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