虚仮2

山本から名刺を渡される。
「俺名刺のマナーとか知らねえぞ、持ってないし」
「いいですよ、気にしないでください」
これが俺である。

「」
「」
これが俺だ。
正しいやり方を書こうとして、何も書けない。
何も知らない。やったことないから。

あ、なんか駄目だわの連続だ。
俺今ちょっと駄目だわ。

スマートな俺。なんか高級な俺。ホテルのラウンジが似合う俺。
その俺がかっこよかったんだけど、今はちょっと違う。
全然駄目な俺。田舎暮らしの俺。俺の部屋で引きこもってる俺。
この方が安心する。

山本をリードする俺がかっこよかったんだけど、今は無理。
何も出来ない。何も出来ない俺を認めてくれよ、って気分。
何も出来ないけど、得意なこともある俺を認めてよ。

鳥が泳ごうとして溺れてる。
魚が走ろうとして息が出来ない。
動物が飛ぼうとして崖から落ちた。

俺がやっているのはそういうこと。
協調性のない俺が、人と仲良くしようとして打ちのめされた。

鳥は泳がない。魚は走らない。動物は飛ばない。
鳥は飛ぶ。魚は泳ぐ。動物は走る。
これを、自己完結出来る自信が、今の俺にはない。
誰かにそう言われないと、そうだと思えない。
帰属欲求に落ちてる。自立出来てない。

俺は
俺の得意なことは 虚仮だと思えてくる。
そう作っちゃったんじゃないのかと、そう思う。
俺は本当に、本当にそうなのか。
こうやっていつも逃げる。得意が出来てない現実から目を背けたくなる。
出来てないんだから、俺は実はそうじゃない。
こうして俺自身から逃げる。これが俺の逃げだ。
こうやって勘違いする。俺は本当は弱くて、何も出来ない奴なんだと思う。

こうやって逃げるから本当に何も出来なくなるんだ。
俺が弱いわけねえだろクソ。逃げるな。責任取れ。
弱く見せることが俺の虚勢だ。強さが俺の弱点だからだ。
強者故に俺は雑魚になってる。意味のわからん状況だ。
俺が何も出来ないわけがねえだろ。俺だぞ。
自信戻ってきたわ。あぶねえ。

俺の得意なことはこういうことだよ。
今日はクソほど泣いたわ。
泣いた翌日は、何故か顔の仕上がりが最高になる。
こんなめちゃくちゃかっこいい俺が何も出来てねえわけねえだろ。
仕事して金もらって、豪快に家で遊ぶわ。
金だよ。金と気付きだ。それだけだ、仕事なんて。俺の職場なんて。

今までは現実=職場、だった。なんで現実=職場なんだ。
得意なこと、自然な俺、伸び伸びとした自分が現実なら、今この俺が現実だ。
職場は現実じゃねえよ。それこそ虚仮。
見せかけと中身が伴ってねえんだから。
弱そうに生きてんのに何一つ効いてねえんだから。
職場を現実にするように生きていくのが俺の仕事だ。
協調なんかするかクズども。したいならお前らから来いや。
スッキリしたわ。ぐっすり寝る。
明日も元気に職場に向かうぞ~。